剣のガーディアン3

鉄平が最寄駅の改札を抜け、ホームに降り立つと同時に乗る電車が到着した。
時間の調整など全くしていなかったので、鉄平は
ラッキー！と誰にも聞かれないような声でつぶやいた

鉄平の通う高校は、星霜学院高等学校（せいそうがくいんこうとうがっこう）という私立の新設高校だ

幾星霜の年月を経て、立派な大人になりなさいという所から、その名がついたらしいが
学生や近しい関係者は頭文字から”ほしこう“と
呼ばれる事がやたら多い
偏差値もそれなりに高く、素行の悪い生徒も数える程しか居ないので、年々志望者数が増えている

電車が目的の駅に着く少し前に、鉄平は時間を
確認した。
8時20分

勝った！
鉄平は頭の中で遅刻をしない＝勝ち
遅刻をした＝負けという、よく分からない図式を
組み立てていた

駅を出て徒歩で6分弱
ここからなら牛歩でも遅刻はすまい
などと考えていた鉄平だが、視界の右前方に
あるコンビニエンスストアーの前で、なにやら
落とし物を探しているような男が目に入った

迷う

折角、ここまでスムーズに来て
遅刻をする？
俺が？

迷った
1分にも満たない時間だったが鉄平には数分ぐらいに
感じられた

仕方ないな‥
鉄平は男に声をかけた

鉄平　何か落とされました？

男　えーとですね‥定期券を落としました
改札を出る迄はあったのは確かなんですが

男はよく見ると星霜学院の制服を着ていた
 4月だというのにコートを着ていたので
遠目からでは分からなかったが

鉄平　気づいたのはコンビニで？

男　うん、支払いは電子マネーも兼ねてるから
大体それで払っているんだけど無くて、今に至るって感じです

鉄平　とりあえず駅に戻ってみませんか？
改札抜けた時にコートのポケットに入れたつもりが
落ちたのかもしれませんから

男　そうか‥そうかもしれませんね
ありがとう、君も星霜学院生だよね？僕は2年C組の
新井屋　友春（あらいや　ともはる）
遅刻仲間が増えて嬉しいよ
　
鉄平は、友春のジョークに反応して手のひらを
空に向けた
不思議と悪い気はしなかった
今まで話したことの無かった同級生だったが
面白い奴だなと鉄平は思った
ちなみに鉄平は2年B組で、自身の評価を
中途半端だとしており、B組という括りが
好きだった

直ぐに中途半端ではいられなくなるのだが

友春　声をかけてくれてありがとう
駅の方も探してみるよ

そう言って、友春は去って行った

鉄平　パフォーマンスは‥必要だな

鉄平は星霜学院まで間に合わない事は重々承知して
いたが、全速力で駆け出した

続く