イヤーモニターについて
気が付けば、ライブにイヤーモニターを取り入れてから約1年が経ったので、自分なりにまとめておく。
イヤーモニターには無線と有線があるが、ここでは主に無線について述べる。
仕組み
イヤーモニターと聞くと「何だか難しそう」と思うかもしれないが、ミキサー上は転がしモニターと何ら変わりはないし、難しいことは何一つしていない。
ミキサーの視点では、普通ならAUX出力から転がしモニターに接続するところをイヤーモニター送信機(の入力端子)に接続しているだけである。
演奏者も送信機から出力される信号を受信機で受け取ってモニターする、という至極簡単なことしかしていない。
ミキサーとの繋ぎ方だけなら普通に使われている転がしモニターと特に変わりはない。
簡単に書くと、以下の通りとなる。
転がしモニター
ミキサー→AUX→転がしモニター
イヤーモニター
ミキサー→AUX→送信機→受信機
ほら、何も難しくない。
それなのに何故か難しいという印象を持たれている気がする。
個人的に難しいと感じたのは、機材を用意することである。
価格がとても高いので……。
使用機材
無線イヤーモニターの場合、送信機と受信機が必要になるが、ここではとりあえず自分の使用機材を書いておく。
イヤーモニターはいかに遅延が少ないかという点が一番の評価基準だと思うので、他の基準(値段も含む……)は一旦外してとにかくそこで判断し、以下の機材に決定した。
送信機 SHURE P3T
受信機 SHURE P3R
この送信機は入出力が2chずつあるため、送信機1台で2ch分のモニタリングを実現する。
つまり、送信機1台と受信機2台があれば2人分のモニタリングが可能となる。
「意味が分からん」という方は案ずることなかれ、とりあえずは「こんな機材があるんだなぁ」というくらいの認識で構わない。
目的
新たに機材を取り入れるということは当然ながら目的がある。
コレクターでない限りは目的もないのに機材を買うなんてことはないはずだ。
自分たちの場合は以下のような目的があった。
中音をできる限り小さくし、外音を大きくする。
同期演奏のクリックを全員で聞く。
最初のカウントを鳴らさずに演奏を始める。
モニタリングをやりやすくする。
ハウリングが起きないようにする。
ステージを広く使う。
個人的には、転がしモニターで歌うことにずっとやりにくさを感じていたので、それを解消できれば良いという思いもあった。
やっぱり場所によって聞こえ方が変わるし、自分の声が聞こえ辛いと無理に張り上げてしまっていたので。
基本的に声というのは張り上げると実に聴き心地の悪い声になる。
詳しく書きたいところだが長くなるので割愛する。
使ってみた感想
感想なので主観も主観、とても個人的で独善的な内容である。
専門的で確実な情報ではないということを先に忠告しておく。
良かった点
圧倒的に歌いやすくなった。もはやチートと呼べるくらい。
外音が大きくなり、濁らなくなった。
ハウリングが一切起きなくなった。
カウントなしで曲を始められる(格好良い)。
転がしモニターをステージに置かなくても良いのでステージが広くなった。
悪かった点
転換時間が延びる。
トラブルが増える。
モニターが鮮明過ぎるので少しでも違和感があるとずっと気になってしまう。
初めてのライブハウスはとにかく不安になる。
総合的に考えると、取り入れて良かったと言えるが、おすすめできるかと言うと……少し考えてしまう。
しかし、バンド内に準備や管理が得意な人がいて、お金に余裕があるならすぐにでもおすすめしたい。
勿論、使用することでデメリットを上回るメリットが得られる場合に限る。
メリットばかりに目を向けてはいけない。
デメリットもそれ相応に大きい。
取り入れる際は是非とも慎重に検討して欲しい。
安価に取り入れる方法
「なるほどなるほど……いやしかし初期費用が高過ぎるのでは……?」
そう思う方がほとんどであろう。
しかしだ!
条件はあるものの、安価に取り入れる方法もある!
それすなわち、有線イヤーモニターである。
仕組みの章でお気付きの方もいたかもしれない。
モニターってミキサーのAUXと接続さえできれば何でも良いのでは?
そう、その通りである。
ということは、最終的にイヤフォン、またはヘッドフォンに出力できるような機器があればそれがそのままイヤーモニターの受信機になる。
そしてそんな機器は……実はめちゃくちゃある。
ヘッドフォンアンプとか、パワーアンプとかそんな名前で呼ばれている機器、それを使えば有線ではあるが、イヤーモニターとして使えるということである。
しかも1万円以下のものが多々売られている。
安価に取り入れられるとはそういうことだ。
ただし、派手に動き回るようなパフォーマンスをする場合は確実にやめておいた方が良い。
長いケーブルを引きずりながら動き回る姿を想像すると、その理由がすぐ分かるだろう。
よって、有線イヤーモニターを取り入れる場合は、ドラム、ギターボーカル、ベースボーカル、キーボードといった立ち位置が固定されているようなメンバーに限る。
ちなみに自分たちは有線イヤーモニターの場合、以下の機材を使用している。
POWERPLAY P1
最後に
バンド活動を続ける中、イヤーモニターに対する偏見が少なくないように感じるので、できるだけその偏見を取っ払って、選択肢の一つとして見てもらえるようになれば嬉しい。