がんサバイバーが感じる真のチームオンコロジーとは
10年前、若手オンコロジストが集まる研修会にオブザーバー参加した。きっかけはこの年の9月に開催された医療薬学会のシンポジウムでフロアから企業名を名乗り、がんサバイバーとしての考えを発言したことからシンポジウム終了後に声が掛かった。
初日は、一つのチームに帯同して見学していた。
しかし、その夜のパーティで状況が一変した。
各チームがテーマを決めることになった。テーマの中に「サバイバーシップ」があり、僕が帯同したチームがテーマに取り上げて欲しいと願っていたらがくじ引きで負けて、サバイバーシップを取り上げることになった。「サバイバーシップ???」とどよめくメンバーを見て、僕を誘った医師が近寄ってきて「明日10分間ほど話してもらえますか?」とお願いされた。
翌朝、冒頭に10分間私自身のサバイバーシップを話した。家族への想い、仕事や治療費、そして、生きがいの喪失など感情を込めて丁寧に伝え、通訳により英訳もされた。そのため短い文書で噛みしめるように話すことを心がけた。10分間に圧縮するため無我夢中だった。気が付くと会場内に涙をすする音が響いていた。MDアンダーソンがんセンターの方々まで泣いていた。
そして、この後、僕はこのチームのディスカッションに加わった。
最終日、チームのプレゼンテーションも終わり帰り支度をしていると、ひとりの医師が近寄って来た。
『久田さんのプレゼンは僕の医師人生に大きな影響を与えてくれました。医師としての原点に立ち戻ることができました。明日から患者さんの言葉にもっと耳を傾けます』。
がん患者と毎日接している専門医にわずか10分間の話で大きな影響を与えたことに衝撃を感じた。
がん治療のプロでもがん患者に対するプロではない。
この言葉から自分の使命を感じた。
『サバイバー仲間のために医療者にもっと伝えなければ』
この医師の言葉こそ、医療者に向けて講演活動する原点となっている。この言葉があるからこそ専門医に対しても迷いなく力強く語ることが出来ている。私こそ患者講演に対して大きな影響を受けた経験となった。
翌年からこの研修会にはがんサバイバーが招かれ、その声に全員が耳を傾けるようになったと聞いている。 これこそチームオンコロジーだと思う。
あのくじ引きは偶然ではなかった。
何か不思議な力が働いたと受け止めている。
僕の生き方に天が応援してくれた気がする。
今後も自分らしく自分の使命を感じながら生きていく。
あれから10年。研修会はどう発展していったのか?
あの時の医師やチームメンバーのその後はどうなったのか?
ふと思いにふけった。
しあわせです♥感謝
#JTOP #チームメンバー #サバイバーシップ #MDAnderson