がんサバイバーと単身赴任
がんサバイバーと単身赴任
2012年8月末、本社勤務の人事発令が出ました。
家族の事情で単身赴任となるため不安に襲われました。
それまでは内密な打診があり単身赴任になることを伝えると「この話はなかったことしてくれ」と言われ続けてきました。
単身赴任から頭に浮かんだのは食事の問題でした。
体調を維持するための食事が取れるのかどうか?
退職も考えましたが、妻も「やれるところまでやってみたら?」と励ましてくれました。しばらくは精神的に不安定になり夢に描いた書籍の執筆依頼もお断りしてしまいました。
そんな折、がんピアサポーター仲間の送別会でこんな発言がありました。「がん治療中の患者を単身赴任させるなんてあり得ない。ただそれでも単身赴任させるということはその人相当優秀で必要とされているんだね」とご主人が言っていたという言葉でした。
この言葉で180度考え方が変わり、そうであれば殉職覚悟で次の任務を全うしようと覚悟を決めました。
実際、単身赴任生活を始めて辛かったことは、度々何とも言えない不安に包まれることでした。
がんになってから家族の存在の大きさを知り共に過ごす時間を大切にしてきました。それだけに一人ぼっちになると自分は生き方について「これでいいのか?」と自問自答をしていました。
一度不安感じると、どんどんネガティブな状態に陥りました。
会社からの帰路の最中によく起き、途中で気が付いてはポジティブなことを考え頭を切り替えていました。
単なる内勤スタッフであったらこんな日ばかりを過ごし、もしかしたら潰れていたかもしれません。
幸いにも研修関係で出張したり、仲間から飲み会に誘われたり、セミナーやイベントに出かけたりすることが多く、一人になる時間が少なかったことで救われました。
その反面、飲み会も数も多くなり、自分自身で調整はしていましたが健康面で不安になることもありました。
自分の使命を感じたことがありました。
「がんと就労」に関するシンポジウムに参加したことから、がん告知後の就労経験を活かし、がん=死のイメージを払しょくし、がんになっても力強く生きられること、いきいきと働き続けられること、単身赴任も出来ることを伝える使命を感じました。
現在、日本人の2人に1人はがんになります。
定年制度も65歳になってきて、現役世代でがんサバイバーになることは増えるでしょう。
がんになってもすぐには死にません。死なないということは生きていくということです。生きていくということは、治療代、生活費が必要です。それを賄うためにがんになっても働くことが必要な時代です。
自分のことは自分しかわかりません。
そして、外からは見えないことが多いため自ら身体面、精神面を上司や会社に伝えていくことが必要です。単身赴任に耐えられるか、どんなサポートがあれば大丈夫か等も話し合ってみることです。
3年半に渡り支えていただいた仲間に心より感謝します。皆さんがいなければ耐えられなかったかもしれません。
仲間とは、同僚、セミナー仲間、がん支援仲間、医療関係者、そして、毎日、いいねやコメントくれたフェイスブック仲間。本当に心強かったです。
しあわせです♥感謝
①がんになってもすぐに会社を辞める判断をしないことです。
②自分がどこまで出来るのかを明確にすることです。
③自分が出来ないことや出来るけど辛いこと、サポートしてほしいことも明確にすることです。
④②③について上司や会社に理解してもらうことです。
⑤独りよがりにならないように産業医やキャリアコンサルタントに相談することも必要かもしれません。
⑥支えてくれる仲間を持つことです。友人でもピアサポーターでも患者会でもOKです。
⑦企業側にはサバイバーから聞き取る努力を願います。
⑧配慮は嬉しいですが行き過ぎた気遣いはサバイバーのセルフイメージを下げ、可能性を閉ざします。
(2016年3月単身赴任解除が公になった日に書いたものを毎年加筆修正しています)