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【一日一題 木曜更新】 しこりを残す言葉
山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字以内で書き、週に1度木曜日に更新します。ほらいつか岡山在住ライターとして一日一題から依頼が来るかもしれないし……し…?
つい食べさせてしまう。
子どもたちにはお腹がすいていないかと年中聞き、年若い人との会食には頼みなさい頼みなさいと太っ腹になり、元気がない友人にはまず温かいお茶を目の前に。お腹が空いていると、体は冷え、気持ちはささくれ、そこに悩みごとなんぞがあると思考はとんでもない方に向かってしまう。満腹は、悩みごとや心配ごとを一瞬でも遠ざけてくれるから、お茶でもかけそばでもおにぎりでも、さあどうぞと目の前に置く。
私の子どもが赤ちゃんだった頃、友人の母から唐突に「何かこだわりがあって飲ませていないの?」と尋ねられた。彼女の視線は私が抱く赤ちゃんに注がれていた。母子手帳の成長曲線内にあるものの、私の子どもは赤ちゃん特有のムチムチ感があまりなかった。彼女は言葉を選び過ぎて「こだわりがあって飲ませていないの?」と、何だかよくわからない、ともすればすごく失礼な言い方をしたのだろう。
いやちょっと待て。
帰路で私は怒り心頭だった。
「親が子どもに食糧を与えないこだわり」とは、一体。そんなひどいこだわり、あるかいな。「お子さん、小さいようだけどきちんと飲ませてるの?」と、言われた方がまだマシだったかもしれない。
ある日のラジオで「子どもの頃に言われ、いまだ心のしこりになっている言葉」が話題になっていた。子どもの頃ではないが、私の場合は産後に受けた他人からの「飲ませていないの?」が50才目前の今もしこりになっている。件の友人は男性で、どうやら結婚後に子はいないらしい。友人の母は、彼の妻に心ない言葉を投げていないだろうか。
産後の感謝は一生、産後の恨みも一生。
どうか誰も傷ついていませんようにとちらと考える。
「子どもに食べさせないこだわり」
そんなこだわりがあってたまもんかいと、私はごはんをつくる。きみたちの目の前に湯気の立つものを並べて、お腹いっぱいになる様子を眺め、ついでに笑顔をもらって、やっと私はホッとするのだ。
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