【#一日一題 木曜更新】 指をよこせ
山陽新聞の「一日一題」が大好きな岡山在住の人間が、勝手に自分の「一日一題」を新聞と同様800字程度で書き、週に1度木曜日に更新します。
「IDもしくはパスワードが違います」
ログイン画面で何度となく見てきたこの言葉。それにしても「もしくは」とは。もしくはと言うくらいなら、どちらが違うのか教えてもらえないものか。
インターネットを楽しみ始めた頃は、パスワードに使う「お気に入りの文字羅列」がありました。自分が絶対に忘れない英数字列を色々なサイトで使い回したものです。危険。でも黎明期はそんなもんでしたよね。
ほんの数年の間にサイト側もセキュリティ強化に乗り出し、パスワード作成に「英小文字のみは×」「英数混合必須」「英数記号必須」「英数大文字小文字記号8文字以上必須」なんてことを言ってくるように。
それに伴い第二第三のお気に入りパスワードを持つようになったものの、今度はセキュリティソフトやブラウザがかしこくなり、ログインの際に「ちょ、おま、そのパスワード使い回し?」と警告してくるようになりました。最近は端末がパスワードをどんどこ自動で作ってくれますが、これ、いつか自分が困ることになるのではなかろうか……と一抹の不安もよぎります。
そしてパスワードロックでやっかいなのはインターネットバンキング。ひと昔前はロック解除にカスタマーへの「電話連絡」が必須の銀行もありました。書類を取り寄せて必要事項を記入して返送、仮パスワードが記載されたハガキが届き、やっとロック解除。やれやれ。
私はその手続きのわずらわしさから、ロックされたインターネットバンキングの口座を10年ほど放置しました。放置したとて元の口座が死ぬわけではないので、いつか解除しようと思いつつ10年。でもいよいよその口座をwebで使う必要が出てきたため、数年ぶりにアクセスすると頻繁に出てくるポップアップに「アプリ移行へのお願い」という言葉が。
今どきはなんでもアプリだなあと、ダメもとでスマホへインストールしてみたところ、ブラウザではロックされていた口座がスマホの生体認証利用であっさりログイン。
えええええええ。
スマホの汎用性、そして個人への確固たる信用。この小さな箱の前では人間が指で叩く英数字パスワードなぞ、なんの意味もないのだと知ったのでした。 切り落とした指で生体認証を通過する映画のシーンを思い浮かべ、指紋ビジネス……なんてものを想像し、ちょっと身震いした夜なのでした。