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【アーカイブ】キョンシー・ホラー35年目の虚実

かつて日本でも人気を博した香港映画の1ジャンルである"キョンシー・ホラー"。昨2021年は『霊幻道士』が日本公開されて35年目、そしてその『霊幻道士』シリーズの第1作と第7作に主演した香港の人気俳優兼歌手のリッキー・ホイ(許冠英)が、心臓発作のため香港にて65歳で亡くなってから10年目の年でした。奇しくも同シリーズに主演していた道士様ことラム・チェンイン(林正英)の命日と同じだったのです。

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そして明けた今年の1月12日は、キョンシー映画のもうひとつの象徴的作品『幽幻道士』がTV初放送からちょうど35年目。この放送の成功(高視聴率)と『霊幻道士2』の劇場でのヒットを受け、TBSでは後続の未公開キョンシー映画3本を次々ゴールデンタイムで放送したりビデオ化したりしていきました。それが『幽霊道士』『再来!キョンシーズ/ドラゴンキョンシー』『キョンシー大魔王』の3本です。
いずれも、当時香港でも盛り上がっていたキョンシー・ホラーのブーム真っ只中に制作され、それぞれタイプは違うものの、内容も後発の作品群に比べはるかに充実したものに仕上がっています。

1970年代の頃は、未公開の香港映画といえば、それはもう粗製濫造の臭いが染み付いたC級以下のイメージが強かったのですが、80年代の"第2次カンフー映画ブーム"になると、海外のマニア筋でも評価の高い作品が全国ネットのゴールデンタイムでかかるようになりました。キョンシー映画ブームの際もTBSのゴールデンタイムで放送された未公開作のクオリティは、決して低いものではありませんでした。
実はそのなかの『再来!キョンシーズ/ドラゴンキョンシー』『キョンシー大魔王』について、とても興味深い画像が、台湾の個人ブログにおいてアップされたのです。

まずは、80年代成家班の主力メンバーだった太保(タイ・ポー)が主演し、台湾のアクションチームと組んで過激なスタントを披露。"オジキョン"なるカルトなキャラをも生んだ『再来!キョンシーズ/ドラゴンキョンシー』から。下の画像をご覧下さい。

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劇中と異なり現代のシチュエーションで、太保と共演の汪均康演じるお兄さんたちが幼い弟(チビキョンシー役の子役?)に、キョンシーの伝説について話すカットのようですが、TV放送版やビデオ版にもなかった場面です。

そして、ジャッキー映画で強烈なインパクトを残した悪役たちが一同に会し、一様にトボケた演技を見せる珍作『キョンシー大魔王』。下の画像2点をご覧下さい。

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皆様ご存知「幽幻道士(キョンシーズ)」シリーズのチビクロこと陳子強(チェン・ツーチャン)と、金おじいさんこと金塗(キン・トー)の共演映像の一部です。こんな場面、「幽幻道士(キョンシーズ)」シリーズにはなかったですよね?
実は、ご紹介した3点の画像、上記2作品が台湾で公開されるにあたり、急遽映画の冒頭とラストに追加撮影されたフッテージの一部なのです。

当時の台湾では『霊幻道士』に始まるキョンシー・ホラーが子供たちの間でも大評判を呼んでいましたが、作品の性質上、恐怖場面や残酷描写でショックや悪影響を及ぼさぬよう、"あくまで映画はフィクションであり、ファンタジーです"ということを提示するため、"年長者と子供"というシチュエーションで現代劇の寸劇を追加撮影し、映画の冒頭やラストに付け足したのです。『幽幻道士』第1作の「月曜ロードショー」放送版におけるOPとEDにあった金おじさんと子供たちの映像は、まさにそうした経緯で撮影された映像なのです。これもよく見ると、テンテンとスイカ頭が本編よりも明らかに成長しており、本編撮了後に追加撮影された映像であることがわかります。

ちなみに、『キョンシー大魔王』の本編自体は香港で制作された作品であり(屋外の撮影は香港郊外の島しょ部で行われたと思われます)、当然ですが台湾在住の陳子強や金塗は、本編には一切登場しません。おそらく台湾サイド独自の判断でこのふたりを起用し追加撮影したと思われますが、ではなぜ陳子強や金塗だったのか? という疑問が出てきます。現状『キョンシー大魔王』の台湾での公開日は特定できていませんが、ふたりの配役には日本での『幽幻道士』のブレイクが影響していたに違いありません。
とすれば、この映像自体は陳子強の容貌や服装から87年初夏、つまり台湾での『新桃太郎』公開が終わり、テンテンことシャドウ・リュウ(劉致妤)が初来日を果たす前後に撮影された可能性が大きいと思われます。

さらに付け加えるならば、台湾サイドとしては、陳子強と金塗の出演場面を加えた台湾公開版『キョンシー大魔王』を、上映または放映目的で日本へ売り込もうとしたのではないか、そんな思惑も浮かび上がってくるのです。

<参照文献>ブログ「[電影] 1986年次的殭屍跟風片們
※本稿は、2012年1月に寄稿した旧外部ブログの内容に加筆・修正を加えたものです。

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