【アーカイブ】「必殺」の亜流であって亜流でなし! 「影同心」①
去る4月13日に初ソフト化としてコレクターズDVDが発売された1975年制作の連続時代劇「影同心」。今月30日からはCS・東映チャンネルの放送も決定しています。
この「影同心」、同時期に放送されていた時代劇「必殺」シリーズの中でも傑作の声が高い第5弾「必殺必中仕事屋稼業」と非常に因縁の深いドラマだったりもします。
きっかけは、「必殺必中仕事屋稼業」を放送していた朝日放送と毎日放送のネット変換でした。これにより、「必殺必中仕事屋稼業」はTBS系列からNET(現・テレビ朝日)系の番組となり、放送時間も変更となったのです。そして空いた枠に人気のあった「必殺」シリーズと同系統の時代劇をと、東映が毎日放送に依頼されて制作したのが「影同心」だったという訳です。なぜ東映だったのか? 毎日放送と東映といえば…「仮面ライダー」というヒットシリーズで密接なつながりがあったからです。
という訳で、事ある毎に「必殺」シリーズのパクり、亜流と陰口や誹りを受けてきた「影同心」ですが、あらためて見ると、実は「必殺」とは似て非なるドラマだという事実に気付きます。
主人公3人は、「必殺シリーズ」の代名詞ともなった中村主水のキャラクターにインスパイアされてはいます。昼はぐうたら、夜は奇想天外な殺し技を披露する刺客…確かに「必殺」っぽくはありますが、実は「必殺」シリーズの根幹を成すある設定が、このドラマにはないんです。何だと思いますか?
実は「影同心」の刺客となる同心たち、所謂"仕事料"を受け取りません。ということは"頼み人"もいないんですね。それっぽい登場人物が出てくる回もあるのですが、基本彼らは上司である鳥居甲斐守を通すか、あくまで自分の意思で、悪を始末に向かうのです。これはもう「必殺」というより、「大江戸捜査網」を代表的とする"隠密物"の変形というべき流れです。
また、「必殺」シリーズにも登板している芥川隆行さんが、ナレーターを担当してるんですが、これがまた全然「必殺」っぽくない。次回予告の「さて、次回影同心の活躍は…」なんて、完全にどっかで聴いたことのあるフレーズです。
ここでスタッフを見ると、佐藤純彌や深作欣二といった東映の名立たる娯楽映画監督の名が並んでいます。このふたりの名で想い出されるのが、「キイハンター」(画像右)を始めとする当時のTBS土曜夜9時ドラマ枠(プロデュースを手掛けた東映の近藤照男ドラマシリーズとも俗称される)です。元ネタになった「必殺」シリーズは、当時から"チョンマゲをつけた現代劇"というコンセプトをプロデューサーが公言していました。「影同心」にもそうした演出は取り入れられたのですが、そこでモチーフとして参照されたのが、「土曜夜9時ドラマ」だったのです。「影同心」開始時この枠は、シリーズ第3作「バーディー大作戦」が終盤に入っており、その後あの「Gメン'75」がスタートするのです。(つづく)
※本稿は、SNS「mixi」コミュニティへ2014年7月寄稿した内容を加筆・修正したものです。