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【忍殺二次創作】ソウカイヤvsザイバツ【第十一話】

※※注意※※
これは『ニンジャスレイヤー』の二次創作小説です。
同じnote内に公式様の連載もあるので、
紛らわしいタグはつけないようにします。
検索の邪魔だボケェ!ってご意見ありましたら消します。 

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◇11◇


「ウウゥ……ウウウーッ!」
 オハギ禁断症状に苦しむインターラプター!
 彼は精神的に脆いところがあり、それを中毒性のあるアンコで誤魔化しているのだ。
「ハッハッハッハ!これが『シックスゲイツの六人』ってやつの最強かよ?棒立ちじゃねェか!」
 ブルーオーブはいたぶるように致命的な一撃ではなく、細かな連打でダメージを与えていく!
「グワーッ!グワーッ!」

「オーブ、テメェの悪いところだぜ!さっさとトドメオサセ!」
 ジャバウォックは鉄針を多数生成、眉間、心臓、股間に狙いを定める!
「なんだよ、ジャビー。こいつに俺が靡くことでも心配してるのかよ?」
 ブルーオーブは、ねちねちとした口調でジャバウォックに絡む。

「お前……今そんな場合じゃないだろ?」
 それを咎めるジャバウォックだが、ブルーオーブの目はどろりとした感情に支配されている。
「ハッキリしろよ、どうなんだ?嫉妬か?」
「お前なぁ……スローハンド=サンの前だぞ!」
 勝ちを確信し、二人が注意が散漫になったその時!
「イヤーッ!」突然のアンブッシュ!

「イヤーッ!」だがブルーオーブもジャバウォックもそれを何とか回避!
 急降下からのアンブッシュ!凧を羽ばたかせ地面すれすれから急浮上すると、両手両足をパッと開きブレーキ!そのまま空中でアイサツをする!
「ドーモ、ブルーオーブ=サン。ジャバウォック=サン。ヘルカイトです」

「ドーモ、ヘルカイト=サン。ブルーオーブです」「ジャバウォックです」
 アイサツは神聖な儀式。古事記にもそう書いてある。
「インターラプター=サン!これを受け取れ!」
 ヘルカイトはアイサツのゼロコンマニ秒後、何かを投擲!
 それは、パックに入れられたオハギ!しかも四つも!
 インターラプターは冷や汗を流し、震える身体をなんとか制御して連続側転しブルーオーブから離れる!

 インターラプターは受け取ったパックの蓋を開け、オハギを取り出し……それを、咀嚼するというのか?!
「アアアァーーー……あまーーーーい………」
 イクサ場に不釣合いな間抜けな声。
 だが、先ほどまで鬼気迫るほどのカラテを振るった大男が、命のやり取りのど真ん中で蕩けきった顔をしている。
 それは一種異様な光景と言えるだろう。

「アーイイ……遥かにいい……」
「ニューロンは冴えたか、インターラプター=サン」
 ヘルカイトは油断なく構えながら尋ねる。
「……ああ、済まないなヘルカイト=サン」
 インターラプター気まずそうに頭を掻く。「ガーゴイル=サンはどうした?」
「ガーゴイル=サンは敵から受けた毒の治療中だ」
 ヘルカイトはふんと鼻を鳴らす。不遜な男だ。

「ブルーオーブ=サン、ジャバウォック=サン。貴様ら、私の『時間』を使わせるなと言ったことを忘れたか?次はセプクだぞ、カラダニキヲツケテネ」
 スローハンドの声は氷のように冷たい。
「オーブ、二対二だ……やるぞ!」ジャバウォックはそれを聞き、恐怖に全身を強張らせる。
「ああ……!」

「アバーッ!」ジャバウォックが突然叫び声を上げると、背中からメキメキと音を立て、新たな骨格が生える。羽毛が早回しカメラの映像のごとく、全身から生えてくる。
「AAAAAARGH!」ブルーオーブも全身から粘液を分泌させると、その身体は溶けるように不定形となり、徐々に変化していく。
 そこに立っていたのは……ナムサン!鳥竜とエイ怪人!ブルーオーブとジャバウォックはヨロシサン製薬によって後天的に改造されたバイオニンジャなのだ!

「GRRRRRRR……この姿はバイオインゴットの消耗が激しい……一気に決めるぞ!」
 ザイバツはある理由で暗黒メガコーポのテック……特にヨロシサンのバイオサイバネを忌避する傾向がある。
 他の派閥のザイバツニンジャどもに見られたらムラハチの恐れもある。
「イヤーッ!」ジャバウォックが両腕を振り回すと、羽根が弾丸めいていくつも放たれる!

「フンハーッ!」それを両腕のブレーサーを回しすべて弾く!
「イヤーッ!」ヘルカイトは跳躍!そのまま上昇気流に乗り、高度まで飛翔!
 ヘルカイトは、先ほどまでは空爆用の装備であったが、今はカラテ用へ換装している。
 サスマタを持ち、強襲!

「ゲボォーッ!」エイ怪人と化したブルーオーブは、腹部にも新たな顔が生じている。なんたる冒涜的な外見か。
 その第二の口から先ほどとは比べ物にならない巨大なカラテ・バブル!
「グワーッ!」ヘルカイトの前で爆発!気流が乱れ、姿勢が崩れる!そこに破裂したシャボン玉の飛沫がかかる!
「グワーッ!酸グワーッ!」飛沫を浴びた場所が焦げるように溶ける。

「クケェー!」ジャバウォックは甲高い奇声を上げつつ、先ほどまでとは比べ物にならない弾幕を形成!羽根スリケンが濁流のごとく押し寄せる!
「ハ!ハ!ハ!殺してやる!殺してやる!」
 ジャバウォックは変化にともない過剰分泌されたニンジャアドレナリンにより、異常興奮状態!
「ヘヘヘヘ……さすがだぜジャビー」
 対するブルーオーブはとろんとした目。恍惚状態だ。

「フンハーッ!フンハーッ!」
 しかしインターラプターは羽根をすべて正面から叩き落す!ワザマエ!
「クラエーッ!」
 ヘルカイトは空中で姿勢を立て直すと、ジャバウォックに向け漢字サーチライト照射!
「チィーッ!」一瞬だけたじろぐジャバウォック。だがニンジャにとってはその一瞬で十分!

「ハイーッ!」インターラプターは連続側転!一気にジャバウォックにまで近づき、ワン・インチのカラテを繰り出す!
「危ねぇ!ジャビー!」「イヤーッ!」
 ブルーオーブはジャバウォックに駆け寄ろうとするが、後ろからヘルカイトの空中蹴り!
「グワーッ!」

 インターラプターは、ジャバウォックを逃すまいとするコンパクトなフック、アッパー、ローキックの嵐!
 ジャバウォックもそれに応戦せざるを得ない!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
 チョーチョー・ハッシ!カラテにより生み出される、小宇宙!
「チュン!」連打の間に巻き込まれたバイオスズメがネギトロとなる!

(いつだ!いつカラダチが来る!?)
 歯車めいて噛み合うカラテを繰り出しながら、ジャバウォックは致命的な奥義に意識を集中せざるを得ない!
 だが、奥義はその存在をちらつかせるだけで十分。
「しまっ……」「ハイーッ!」インターラプターは決してカラダチだけの男ではない!
「グワーッ!?」
 鳥竜となりカラテが増したジャバウォックを……単純なカラテ基礎力だけで、押し切る!

「アバーッ!?」
 ラッシュ!ラッシュ!吹き飛ばされるジャバウォック!「ムン」気絶!
「ジャビー!」ブルーオーブは取り乱し、ジャバウォックの元へ駆け寄ろうとする。
「グワーッ!?」だが、その足元にばら撒かれてるのは……非人道兵器、マキビシ!
「イヤーッ!」ヘルカイトは空中から強襲!
「グワーッ!」サスマタで打ちのめされるブルーオーブ!「ムン」気絶!

「役立たずどもが……イヤーッ!ヘイスト・ジツ!」
 スローハンドの姿が目の前から掻き消えるほどの恐るべき加速!
 これぞ自らの時間を猛加速させる「イダテン・ニンジャ」の恐るべきユニーク・ジツである!
 ヘルカイトまで猛烈な勢いで迫る!
「ようやくボスのお出ましか!」
 ヘルカイトは油断なくカラテを構えようとするが……ハヤイ!
 ニンジャ動体視力を以ってしても色付きの風にしか見えない疾駆!

「アブナイ!ヘルカイト=サン!」
 そこに、インターラプターが割って入る!
「グワーッ!?」インターラプターがカラダチによりスローハンドのカラテを阻止しようとして……間に合わない!
 スローハンドはインターラプターの背後に回りこむと、速過ぎて逆に遅くすら見える連撃を放つ!
「グワーッ!グワーッ!グワーッ!グワーッ!アバーッ!?」

 なんという連撃!インターラプターはあっという間に血だるまになる!
「イヤーッ!」それをヘルカイトが辛うじて救出!
 ヘルカイトはインターラプターを安全な場所に放り投げると、凧を羽ばたかせ上昇!
「イヤーッ!」急降下強襲!

「イヤーッ!」
 だが加速状態のスローハンドには、それすら遅すぎる!
 スローハンドは強襲を加速した感覚で見切り、身体をひねり難なくかわすと、そのまま回し蹴り!メイアルーアジコンパッソ!
「グワーッ!」ヘルカイトは背中を強打され、地面に叩きつけられる!
「イヤーッ!」追撃をしようと疾駆するスローハンドを、インターラプターが横から拳で道を塞ぐ!

「イヤーッ!」
 加速状態にあるスローハンドに対し、大振りは勿論のことカラダチも使うことは難しいと判断したインターラプターは、速度を重視した短打の連打で対応!
 なんという高速戦闘か!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
 チョーチョー・ハッシ!カラテにより生み出される、小宇宙!
「チュン!」連打の間に巻き込まれたバイオスズメがネギトロとなる!

「イヤーッ!」
 ヘルカイトはその背後からサスマタで渾身の一撃!
「私に時間を使わせるな!イヤーッ!」スローハンドはさらに加速!
 ヘイスト・ジツに加速限界はないのか!?
 スローハンドはもはや色つきの風ですらない!ニンジャ動体視力であっても反応できぬほどの速度で、ヘルカイトの腹部へポン・パンチ!
「アバーッ!?」口から吐血!

 そのまま続けざま、真後ろにいたインターラプターに回し蹴りを仕掛けようとし……彼のニンジャ第六感は警鐘を鳴らす!だがもう遅い!
 すでにインターラプターは、腰の前に手を当てた奇妙な中腰体勢……カラダチ!
 ヌンヌンヌンヌン!スローハンドの蹴りは吸いつけられるように数ミリ手前で停止する!
「ヌゥーッ!」不覚、完全に捕らえられた!

 スローハンドのスピードはインターラプターのニンジャ反射神経やニンジャ動体視力をもってしても見てから反応するのは不可能なほどの速度だ。
 カラダチを決めるには、ここへ来るという一点読みのバクチに出るしかない。
 失敗すれば死。その賭けに、インターラプターは臆することなく挑み、見事成功させたのだ!

 どうする。スローハンドは加速した感覚で状況判断する。
 これは我慢比べだ。いかなインターラプターとはいえ、相手を無限に捕らえていられるはずもない。いつかはタタミ・ケンに移行しなければならないはず。
 事実、『正しき歴史』では、カラダチからタタミ・ケンに移る瞬間をニンジャスレイヤーに狙われ、インターラプターは敗れ去ったのだ。

『正しき歴史』では、インターラプターはソウカイニンジャであることから逃げ、浮浪者に身をやつし、実戦から遠ざかっていた。そのため、カラダチからタタミ・ケンに移行する隙が大きくなってしまったのだ。
 だが、このインターラプターは違う。十分にカラテを積み、カラダチからタタミ・ケンへ移行する隙はごく一瞬だろう。
 ヘイスト・ジツの加速状態でなければ、その瞬間に逃げ出すことは不可能。
 このままヘイスト・ジツを維持。インターラプターが我慢を切らしカラダチを緩めた瞬間に首を刎ねる。

 ヘイスト・ジツを……維持?
 スローハンドの思考はそこまで至るが、恐怖が全身に走る。
 自分はもう何秒加速した?
 あとどれほど待てばいい?
 スローハンドのヘイスト・ジツには、加速状態では猛烈な勢いで身体が老いてくるという副作用があるのだ。

 視界に入る足や手は急速に老化しているのではないか?
 あと何秒だ?勝てたとして、このまま動くこともままならない老人と成り果てるのか?
 ニューロンの隅々にまで、恐怖が染み込んでいく。
 あと何秒?あと何分?あと───何時間かもしれない。
 スローハンドは、実際以上にヘイスト・ジツの副作用にトラウマを持っている。
(駄目だッ!これ以上は………耐えられん!)
 スローハンドはついに、加速状態を……解除する!

「ハイーーーーーーッ!!」
 その顔面に突き刺さるのは、渾身のタタミ・ケン!
「アバーッ!?」
 スローハンドは爆発四散!「サヨナラ!」
「かふっ……」だが、インターラプターも同時に吐血し、その場に崩れ落ちた。


◆◆◆


「サイゴン!」
 何者かが、バイオバンブーのヤリを自らに向けてジリジリと近づいて来る。
 どれほど時間がたっただろうか。インターラプターは意識を取り戻す。
「……どうやら、虫の息のようだな。米兵ではないようだ」
 それは、編み笠を被った奇妙な格好のニンジャだ。
 その傍らには、巨大なカエルに乗ったニンジャや、恐竜めいた姿のニンジャ、スライムめいたニンジャもいる。
 逆に、ヘルカイトの姿は無い。どこかに、逃げ延びたか。

「……何者だ」
 インターラプターは、薄れいく意識の中で、その奇妙なニンジャに尋ねた。
「我々はサバイヴァー・ドージョー!この近くに、バイオニンジャがいるとディスカバリー=サンが感知したのでな。我々の仲間にならないか勧誘に来たところだ」
 見ると、四本腕のニンジャがブルーオーブとジャバウォックを米俵めいて担いでいる。

「過酷なナムのジゴクでは、仲間の増援は重点せねばならん!モッチャム!」
 インターラプターには、彼の言っていることの半分も理解できなかったが、彼らがなにか深い絆で結ばれていることは理解した。

「……お前たちは……家族か?」
 どうしてそんなことを聞いたのか、インターラプターにも分からなかった。
 聞かれた編み笠の男は、その質問に目を丸くする。
「家族……そうだな。ドージョーの皆は実際、家族よ」

「そうか……家族は……家族は良い。家族がいるから、頑張れる」
 インターラプターは、ふふっと笑みを零した。
 倒れたまま、懐から中年の女性と少女の写った写真を取り出す。
「来月は、娘に会えるはずだったんだがなぁ……ごめんなぁ……」

 インターラプターは……ワタナベは、ニンジャとなる前はデッカーだった。
 だが、ニンジャソウルに憑依され、その闇に飲まれ……自らの後輩を、家族ごと惨殺した。
 アンコ中毒に曇ったニューロンは、自らが殺した後輩のその妻と娘を、自分の家族だと思いこませ、罪の意識から逃れていた。
 だが、ワタナベの顔は、今は苦しみから解放されたように穏やかだ。

「なんだかは分からんが……その通りだ。家族がいるから頑張れる」
 編み笠の男は同情めいた声を出した。
「ハイクを詠むが良い、お前は死ぬ。カイシャクは必要か?」
 ワタナベはがぶりを振る。
「……そうか。では、オタッシャデー」
 編み笠の男と、奇妙なニンジャたちの一団は、去っていった。
 あのブルーオーブとジャバウォックというニンジャは彼らと家族になれるだろうか?
 ワタナベは場違いな心配を少しだけし……写真を持つ手をがっくりと脱力した。

「サヨナラ!」
 インターラプターは爆発四散した。
『正しき歴史』では、己の罪と向き合い、苦しみぬいたその末にニンジャスレイヤーにカイシャクされた。
 償いにもならない、少しばかりの善行を残して。
 だが今の彼は、己の罪と向き合うことなく死んだ。
 どちらが幸せで、どちらが不幸だったのだろうか。それはブッタのみが知ることだ。


つづく

 

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