ディスクロニアEp.1の感想
MyDearest様よりディスクロニアEp.1が配信。
東京クロノス、アルトデウスを経てクロノスシリーズ三作目となる今作の、Ep.1現段階の感想を語りたく書きました。
■ 魅力的な面
○ノベルゲームからアドベンチャーゲームへの進化
ディスクロニアは既存の二作と比べて断然にAVGです。
東京クロノス、アルトデウスはテキスト主体で基本的に"読む"ゲームでした。プレイヤーは極一部を除いて自らの行動はできず、身体の借りて一人称で追体験をする形となります。VRならではの選択表現もあるものの、形式としてはノベルゲームと変わりありません。
とよく耳にしました。僕はそう思いませんけど。
2Dゲームより没入感を一段高める要素としてVRは必要不可欠だと私は体感しました。しかしそこを魅力と受け止められなかった場合、ノベルゲームだった、VRでなくても良かったと判断されてしまうのは仕方ないと理解できます。
ではディスクロニアはどうなのか
開幕と同時に要求される移動、ステルス要素、投擲動作……。
アドベンチャーゲームだこれ!!!!!
となること間違いなしの操作要求がなされます。この時点で既存のクロノスシリーズにあったノベルゲームといった感覚からは完璧に脱却しています。
加えて、
近づいて話しかけられる!!!!!!!
握れる!持てる!!操作できてる!!!!!!!
と、従来のクロノスシリーズでは有っても極一部でしかなかった要素が、遥かにプラスされて開幕から押し寄せてきます。もうノベルゲーと論じるに値できないほどの"体験"をさせられるのです。
VRという機器を持って自分で操作するという感覚を得たい人には、この上ない体験となり得るでしょう。
○序盤から押し寄せるVRだからこその類稀な圧巻の表現
VRと2Dゲームにおいて大きな差に視界と実感があります。
2Dは所詮モニター越しなので、画面の向こうという絶対的な壁が没入感を一段遠のかせます。VRではそこが取り払われ、画面の外は視界の外という判定に切り替わることになります。
その視界外から来る表現に関してVRは2Dと比較にならない程の没入感を生み出します。このシーンは動画でみてもなんら変哲の無い綺麗な一場面です。それがVRでは綺麗に加わり、錯覚とはいえ物理的に世界にのめり込ませる表現となり得るのです。この数秒は途轍もないほどの感動を与えてくれました。
綺麗な魚群のある拡張夢は以前から何度も何度も宣伝されており、この空間の魅力はゲーム前から伝わっていると共に約束されていました。そこに更に一歩インパクトのある演出を加えるという、開発者の意欲が伝わる素晴らしいワンシーンです。
続いて、オープニングの一場面。
遠くから一気に近寄られる距離感や、伸ばされた手のそこに確かに存在していると錯覚するような実感は、VRでしか得られない体験です。
クロノスシリーズはどれもオープニングムービーにおいてVRでしか得られない感動を与える表現を駆使します。今作もまた同様で、私は思わず息を吞みました。
本当に最序盤において、VRでしか得られないインパクトをぶつけてくることで、VRという"体験"を理解させられます。VRというメリットを最大限に生かしています。
○最高峰の軽量化技術
Quest2というハードは皆さんご存知の通り、現在のPC性能と比較した場合、極めて制限の強いハードです。PCVRと同等レベルの表現は絶対にできません。
その中で上記の魚群が演出されるのです。
なぜこんなにも素晴らしい空間がQuest2で実現しているの……?
正直、拡張夢内のこの魚群表現だけで価格以上の価値があります。
魚群は勿論なのですが、この空間内でfps低下を感じさせずに行動できるほどの余裕があるというのが素晴らしい。
○優れたキャラモーション
ありとあらゆるモーションが二作と比べて遥かに進化しています。
今までにもあったモーションからモーションへの切り替えにハーフトーンを用いたキャラチェンジで表現する手段も出ますが、
殆どのシーンで滑らかにモーションが切り替わるので以前よりも違和感がありません。というかそのまま普通に歩き去ったりもする。
同一シーン内で普通に歩き去る表現、一見簡単なようですがQuest2では全く当たり前ではありません。東京クロノスではシーンチェンジで移動、アルトデウスではハーフトーンのキャラチェンジで逐一移動といった手段で疑似的に表現していました。それが平然と行われていることにクロノスシリーズプレイヤーは感動します。平然と行われていて最初全く気づかなかったけど振り返ってみて進化っぷりにやべぇと思った。
キャラ自体のモーションもより滑らかになっています。アルトデウスでは動きはあるものの、どうしても始点と終点の硬さが拭えませんでした。それが薄くなりより自然体に表現されていることで、アルトデウスよりも底上げされた没入感を生み出しているのは間違いありません。
○AVGを生かすシナリオと技術
せっかくのAVGっぷりも、技術的に出来たところで生かされなければ意味がありません。
捜査パート。それぞれの物を近づいて調べて、操作して、シナリオを進めていく。
能動的な動作を必要とする、技術を完全に生かすシナリオです。持つ技術を駆使するに相応しいシナリオが用意されています。
パズルパートも優れています。パズルを適切に解くことでシナリオが進行します。
そのパズルを解いて次の展開、または次のパズルがシームレスに行われる箇所が多々あります。当たり前のようですが、Quest2では全くもって難しいことです。
それが明らかに減っている。勿論無いわけは無く何度も何度もありはしますが、可能な限り減らしているのが見て取れます。AVG部分の没入感を阻害しないように努力しているのがよく分かります。
○親切なオプション
移動がとても楽。長距離はワープで、短距離は移動で、と使い分けられます。時計塔広場等、移動が長くなるところではとても重宝します。細かな部分ですが、非常に助かる部分ではあります。
○Ep2以降のシナリオが面白いことが約束されている
根拠?クロノスシリーズやれ!俺は信頼しているし確信している。
■ 惜しい面
ここからEp1全体のネタバレを含みます。未プレイの方の閲覧はご遠慮ください。
◇キャラの会話の合間に不自然な間が存在する
滑らかなモーションの弊害なのか分かりませんが、会話の間が長く違和感を生んでいる箇所が多々あります。オートで流していても違和感を感じる間です。AVGとしては進化しているものの、キャラとの自然な会話という面では一歩退化してしまったように感じました。モーションが優れている分、対話の自然さでは優れています。
◇関係性を深めていかないいけないシナリオ
会話が少ない。
このゲーム、AVGであり、拡張夢内において大量に存在する都市の市民と会話ができます。可能な会話量は多いのです。
しかし主要人物との会話が殆どできません。シナリオの過程で会話するのが殆どであり、まるで雑談ができません。せっかくのAVGがここにおいては台無しといってもいいでしょう。
市民との会話内容もアーカイブに繋がる物を除いて特別有意義な物はありません。
Ep1を通して、全員のキャラが立ちません。強いて言うなら感情ぶつけてくるし行動理由もはっきりしているノエルくんと情緒が垣間見えるマイアぐらい……?
ミステリーなのもあり、他の人物の行動も行動理由もEp1時点で全くはっきりしません。更に誰も彼も感情をあまり見せてこない。不明瞭で関係性が深まらないので、そのまま皆弱いままで終わってしまったのは落胆しました。
キャラに魅力が薄いので、シナリオがどうなるのかは気になるのものの、キャラがどうするのかどうなるのかはあまり気にならないという、キャラ置いてけぼりの状態なのがEp1段階です。
AVGなのにあまりにも勿体ない。
当然、シナリオ重視であればこの惜しい点は批判されるべき点ではありません。
◇主人公ハルのキャラが弱い
Ep2以降で解消される可能性はあります。しかしEp1時点に限ると弱い。
主人公のハル。
箇条書きで見るとなんとも無いと思いますが、これが繋げられたシナリオで描かれるハルとハル視点での周りは非常に弱いキャラとなっています。
なにせヒロイン現状不在。
記憶を失っているからヒロインとの関係性は能力で過去を追体験するしかなく、小出し小出しで、内容に情報も情緒も足りない。
開幕で監察官になってしまい、ハルの行動モチベーションの初動が不明。
シナリオの都合とはいえ事件も都市からの要請を受けたことで行っているという受動的さ。
事故の詳細もEp1時点で不明。
と、スタートの時点で没個性主人公と化してしまっています。
衝動性や攻撃性を削られていることもあるんだと思いますが、プレイヤーが追体験するキャラとしては、感情移入するに足るには些か遠い人間性・行動性になり魅力の薄い人物になっているように感じました。
しかしアルトデウス主人公の個性・感情が強すぎて受け付けなかったという方の話も聞きます。どちらが良いかは個々の感性によるでしょう。私には合わないということです。
◇主人公ハルがふわっふわ
ふわふわしておりどうにもこうにも何がしたいのかが見えてこない。何がしたくて監察官になったかも分からない。エレインに言われただけで、本人の意志表示も目的表示も一切無いまま。
ハルの監察官におけるやりたいこと、現段階でやりたいことが見えてきません。ふわっとは有りますが、全てが受動的に抱く感情で、積極性が無く、行動力がまるで無い。
知りたい等の意志は何かを見て、何かあってからの場当たり的。
その意志もストイックさが無く行動に現れない。独白としても出ない。
感情も行動も能動的でないため、人物に対する思い入れが見えてきませんし、あるとも感じられません。思い出し切れてない以上実際のところ無いでしょうし。
それもあってEp1の衝撃のラストも、主人公のどことない淡々さが衝撃を和らげてしまっています。神視点だとお兄ちゃんが絶対救ってやるからなって
Ep1最終時点で目的が一つは生まれたと思います。現状何も見えてこなかったハルというキャラはEp1最終時点で漸く起承転結の起の手前なんだと感じました。Ep1時点ではキャラが全く始まっていません。ただ始まるだろうEp2以降ではキャラも面白くなると思います。
勿論、意志が弱い見せないことがEp2以降において伏線であればあえてふわふわでも問題ないのです。ハルがラスボスになるとかなってたとかノエルが主人公化するとか。本来のハルではないとかほぼ似ているだけの別人格とか実は真似ているだけだとか。意志をあえて表現しないという、そういうトリックであれば。
ただ、そうでない場合は魅力が足りないと言わざるを得ませんし、Ep1時点で魅力が見えないとEp2以降の購入意欲に影響するので、どちらとしても勿体無いとは思います。
◇リリィの立ち位置
進行お助けキャラ。
すごくかわいい……んですけどねぇ……。
ハルが薄くてもパートナーキャラが濃ければ……!という関係性オタク的な面があったのですが、全体的に主人公の行動に関わる部分に弱く、行動に影響せず、関わらないのです。相方というよりは愛されマスコットの立ち位置になっていますね。それはそれで本来であれば構いません。
しかし前作アルトデウスにおいて、主人公に対してノアが非常に真剣に心配や諫言、行動するのも相まって、比較対象として更に弱く映ります。不在ながらも強烈なヒロインのコーコに並ぶと言えるぐらいにはノアもヒロインの立ち位置をしてくれていました。
一方で今作ではマイア不在、主人公はふわふわ。リリィはマスコット。俺は一体何に対して関係性オタクを見出せば……?
プレイヤー視点で辛いものがありました。もうケイスしかない。
現状だと、ぶっちゃけた話かわいいけど別に居なくても問題無いなと思ってしまう程度の存在価値になっています。もっとハルやノエルが追いつめられた精神性になったりしたら居るだけで落ち着くような立ち位置になれる気がしますが、ハルがふわふわ鋼メンタルなせいでマスコットの存在価値を下げています。Ep2以降で評価は上がるかも。
◇ゲーム開始のUIがダサい
全力ストレート。
俺今15年前ぐらいのゲームかアプリ起動した?ってぐらいには古い。絵柄も世界観にも周りにも合いもしないギンギラギン。開始UIだけ統一感からかけ離れ浮きまくっている。
目も期待も疑いながらゲームを進めて、即杞憂であったと理解できたのは幸いでしたが、唯一本気でゲームを、会社を疑った場面です。
◇そもそもEp1をそこで終わらせるのが惜しい
Ep1の引きだと当然Ep2のシナリオは気になるんですよ。しかし主要人物とまるで会話できず、キャラも弱いまま。情報も情緒も足りない。唯一マイアがまぁってぐらい。
もっとEp1を引き延ばして、少しでもキャラが立つ状態に持っていくべきだったと思います。
■ Ep.1段階での纏め
最後までご清覧頂きありがとうございます。
おいハル!お前がお兄ちゃんだぞ!!絶対救え!!!!!!!!!!!!
Ep.2早くプレイさせろ!!!!!!!!!!!!!!!