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【1周目】憲法(01)|表現の自由

本日は「平成23年司法試験 憲法【改題1】」を解いてみましょう。

(問題文)
https://www.moj.go.jp/content/000073972.pdf#page=2


【改題1】

〔設問1〕
 X社は、国を被告として、A大臣がX社に対して行った特定地図検索システムの提供の中止命令(以下「本件中止命令」という。)について、処分の取消を求める訴訟(行政事件訴訟法3条2項、11条1項1号)を提起することとした。あなたがX社から依頼を受けた弁護士である場合、その訴訟において、どのような憲法上の主張を行うか。法8条3項の憲法適合性について、その主張内容を書きなさい。なお、法文の明確性について論じる必要はない。
〔設問2〕
 設問1における憲法上の主張に関するあなた自身の見解を、被告側の反論を想定しつつ、述べなさい。


(答案例)

第1 設問1について
1 憲法上の権利の制約
⑴ 本件中止命令の根拠法令である法8条3項は、X社の特定地図検索システムを提供する自由を制約するものである。
⑵ 特定地図検索システムを提供する自由は、営業の自由としての側面のみならず、事実の伝達の自由としての側面を有する。そして、思想の表明の自由とならんで、事実の報道、すなわち、事実の伝達の自由も、憲法21条1項により保障される(博多駅事件参照)。したがって、特定地図検索システムを提供する自由も、その一環として保障される。
⑶ よって、法8条3項は憲法上の権利を制約するものである。
2 法8条3項の憲法適合性
⑴ 特定地図検索システムを提供する自由は、ユーザーの利便性の向上のほか、詐欺被害を未然に防止できるなど、社会的意義も有しているから、権利の重要性が高い。また、法8条3項は、提供する情報の内容に着目した規制であるから、制約の程度が強い。したがって、法8条3項の憲法適合性の判定基準は、厳格な審査基準によらなければならない。
 具体的には、①立法目的が必要不可欠なものであること、②立法目的達成手段が是非とも必要な最小限度のものであることという基準によるべきである。
⑵ 法8条3項の立法目的は、国民のプライバシー権を保護することにある(法1条参照)。しかし、公道から見えている風景は、言わば誰もが見ることのできるものであるから、そのような風景を撮影した画像をインターネット上で公開したからといって、直ちにプライバシー権侵害を引き起こすとはいえない。したがって、法8条3項は、立法目的が必要不可欠なものであるとはいえない(①不充足)。
⑶ 法8条3項の立法目的達成手段は、「勧告に係る措置の実施」を命ずること、または、「インターネットによる特定地図検索システムの提供の中止」を命ずることである。しかし、公道から見えている風景を撮影した画像をインターネット上で公開したことにより、プライバシー権侵害を引き起こした場合には、問題となった当該画像について、「勧告に係る措置の実施」を命ずれば足り、「インターネットによる特定地図検索システムの提供の中止」まで命ずる必要はない。したがって、仮に立法目的が必要不可欠なものであるとしても、法8条3項は、立法目的達成手段が是非とも必要な最小限度のものであるとはいえない(②不充足)。
⑷ よって、法8条3項は、憲法21条1項に反する。

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05憲法

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