![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/171135080/rectangle_large_type_2_76c634dbf1b3cac3bc12edb1f212ffec.png?width=1200)
トランプ大統領による対中国への輸入関税案:半導体サプライチェーンへの影響は?
執筆者:マイケル・マリアーニ(Z2Date LLC)
![](https://assets.st-note.com/img/1737525124-iImTF1xW8vXPUGA9DV2jnrgw.png)
すでに数百万点の電子部品が米国の関税制度で対象となっています。トランプ大統領率いる新政権がこれらの貿易障壁をさらに強化する可能性を示唆する中、電子部品のサプライチェーンはさらなる深刻な影響に直面するのでしょうか?
1.現在わかっていること
2024年11月25日、ドナルド・トランプ次期大統領は、アメリカ第一主義(America-first)政策の一環として、就任初日に新たな関税を実施する計画を発表しました。トランプ氏の最初の政権での数多くの実績から、彼が米国の利益を優先するために保護主義的な政策を積極的に活用する姿勢を示していることは明らかです。また、最近の発言から、次期政権も同様のアプローチを継続して追求する可能性が高いことがうかがえます。本レポートでは、提案された新しい関税が現在の関税制度に及ぼす影響と、これらの変更が部品やメーカにどのような影響を与える可能性があるかを検討します。
2.現行の関税制度について
2025年1月時点で、多岐にわたる中国製品が既存の関税対象となっています。2018年から2019年にかけて、トランプ大統領は4度にわたり中国製品に対する関税措置を発表しました。2018年7月に最初の措置として、340億ドル相当の中国輸入品に対して25%の関税を課しました。翌月には、さらに160億ドル分の中国製品に対しても25%の関税を追加しました。その翌月の9月にも、さらに2000億ドル相当の中国製品に対して10%の関税を導入しました。そして2019年8月に、3000億ドル相当の中国製品に対して10%の関税を課す第2弾の措置を実施しました。
2024年5月、バイデン政権と米通商代表部(USTR)は、トランプ政権時代の301条に基づく関税措置を見直し、そのまま維持することを決定しました。さらに、バイデン政権は独自の関税引き上げを導入し、180億ドル相当の中国製品が新たに対象となりました。これにより、鉄鋼およびアルミニウムの関税率は25%、半導体の関税率は50%、電気自動車(EV)の関税率は100%、電池、電池部品、重要鉱物の関税率は25%にそれぞれ引き上げられました。これらの関税引き上げは、それぞれ2024年9月、2025年1月、2026年1月に順次発効する予定です。
これら現行の関税に関するリストは、米通商代表部の通商法301条(対中追加関税)から確認できます。USTRは4つの主要な関税リストに加え、バイデン政権が導入した追加の関税措置を含む「過去4年間にとられた措置の報告書」という5つ目の文書も公開しています。
現在、米国の関税対象となっている中国製品のリストは非常に多岐にわたり、ここで全てを網羅するのは難しいです。しかし、2024年9月から2025年1月の間に関税率が引き上げられた主な製品には、電気自動車、太陽電池、EV用バッテリー、半導体などが含まれます。
3.中国、メキシコ、カナダに対する新たな関税の可能性
今年(2025年)初め、トランプ次期大統領は自身が創設したSNS「トゥルース・ソーシャル(Truth Social)」に複数の投稿を行い、大統領令を用いて中国、カナダ、メキシコに関税を課す意向を明らかにしました。
感謝祭直前の月曜日に投稿された2つのメッセージでは、次のように述べられています。
1月20日、私の最初の大統領令のひとつとして、メキシコとカナダに25%の関税を課すために必要なすべての書類に署名する。
中国からの麻薬が主にメキシコを経由して、かつて経験したことのないレベルでわが国に流入している。このような事態が収まるまで、我々は中国に対し、追加関税を上回る10%の追加関税を課す。
これらの投稿から、トランプ次期大統領はカナダおよびメキシコからの全輸入品に25%の関税を課す計画であることが明確です。さらに、中国からの輸入品には「既存の追加関税に加えた」10%の新たな関税を課す意向も示しています。この新しい関税は、既存の中国製品に対する輸入税にさらに加算されると見られます。
トランプ氏は最初の大統領任期中に、太陽光パネル、洗濯機、鉄鋼、アルミニウムを含む数千億ドル相当の中国製品に対し、複数回にわたり関税を課しました。一方、バイデン政権は過去4年間、これらの懲罰的な貿易政策を維持しています。2024年には、バイデン大統領が半導体、電気自動車、バッテリー、さらには注射器に至るまで、中国製品に対する新たな関税を制定または引き上げました。また、2025年1月1日には新たな関税率が発効しています。
4.関税の仕組み
関税とは、連邦政府が自国に輸入される特定の外国製品に課す税金を指します。この仕組みは一見すると単純なように思えるかもしれませんが、実際には関税を誰が負担するのかについて多くの誤解や議論が存在してきました。関税を支払う責任は常に輸入業者にあり、輸入業者は自国政府に対してこれを納める義務を負っています。
輸入業者が特定の商品や部品に対し、10%、25%、あるいは50%もの追加費用を支払う場合、その影響で国内消費者に販売される完成品の価格が上昇することがよくあります。このことを指して、経済学者たちは「関税のコストが消費者に転嫁される」と説明しています。
5.関税の目的と戦略
関税には、いくつかの重要な役割があります。まず、関税は政府にとっての収入源の一つとして機能します。裕福な国、例えば米国においては関税が主要な収入源となることは少ないものの、発展途上国では政府を支えるために非常に重要な役割を果たしています。
また、関税は各国が自国産業を外国との競争から守るための重要な手段でもあります。これが、トランプ大統領が最初の政権時代に関税を積極的に導入し、バイデン大統領が多くの貿易障壁を維持するとともに、戦略的に重要な産業や資材に対する独自の規制を導入した主な理由です。
さらに、他国が違法行為に従事したり、輸出価格を人為的に引き下げることで外国市場を独占しようとする場合、それに対応し、是正するための手段として関税が用いられます。2024年5月、ホワイトハウスが新たな関税を発表した際、バイデン政権は次のようにその理由を説明しました。
中国の技術移転、知的財産、イノベーションに関する不公正な貿易慣行は、アメリカ企業と労働者を脅かしています。さらに、中国は人為的に低価格の輸出品を世界市場に供給し、市場を混乱させています。
6.影響を受ける部品の総数
Z2Dataのデータベースを基にした分析では、中国製品に対する関税引き上げ案により、660万点にのぼる電子部品が影響を受ける可能性があることが判明しました。この中には764種類以上の製品分類が含まれています。
660万点のアクティブな電子部品
合計764種類の製品分類
関税に関する詳しい情報や、トランプ大統領が提案する関税引き上げ案による電子部品のサプライチェーンへの影響について、詳細なレポートをご希望の場合は、以下のリンクから資料をダウンロードください。
7.Z2Dataで関税の影響を受けやすい部品を把握する
新政権への移行に伴い、貿易や制裁措置を取り巻く不確実性がかつてないほど高まっています。この不確実性の増大は、製造業者にとって重大なリスクをもたらします。そのため、サプライチェーンの脆弱性を的確に把握するには、可視性を最大化することが不可欠です。
Z2Dataは、「部品から製造拠点へのマッピング」などのツールを提供し、企業が部品の原産地を正確かつ効率的に追跡できるよう支援します。このツールを利用することで、部品表(BOM)を活用して、世界中の製造元や拠点と部品をシームレスに結び付けることが可能です。また、Supply Chain Watchの「調達ステータス」機能は、貿易コンプライアンスの管理に寄与し、製造拠点や各国の依存関係を可視化します。さらに、関税や貿易障壁の対象となる可能性のある部品を特定するための洞察も提供します。
以下リンクより、無料トライアルへのお申し込みも可能です。
ぜひお申込みください。
Z2Dataのソリューション
Z2Dataの統合プラットフォームは、データを活用した包括的なサプライチェーンリスク管理ソリューションです。このプラットフォームは、エンジニアリング、調達、サプライチェーン管理、コンプライアンス管理、ESG戦略、経営陣に必要なデータインテリジェンスを提供し、グローバルな市場の変動に対応しながら、迅速に戦略的な意思決定を行うことを可能にします。これにより、サプライチェーンのリスクを管理し、回復力と事業の持続性を企業の運営DNAに組み込むことができます。
Z2Dataたちの独自技術は、人間の知識とAI(人工知能)を組み合わせることで、重要なデータ、影響力のある分析、市場からのインサイトを提供します。この柔軟なプラットフォームは、コラボレーションツールも内蔵しており、企業のワークフローにシームレスに統合できるよう設計されています。
Z2Dataの半導体・電子部品データプラットフォームが、貴社のサプライチェーンリスク対策やEOLリスクの管理にどのように役立つかを確認したい場合は、無料トライアルやデモの予約をお試しください。
Z2Data 日本語紹介ページ
Z2Dataのソリューションついてさらに学びたい方は、Z2Data LLCの日本総代理店であるKUMU Worksにお問い合わせください。
株式会社KUMU Works | コーポレートサイト
*本記事はZ2Data LLCが作成した”Trump’s Proposed Tariffs on Imports from China”(https://www.z2data.com/insights/trumps-proposed-tariffs-on-imports-from-china-manufacturing)を、株式会社KUMU Worksが許可を得て翻訳したものである。 言語の違いによるニュアンスの違いがある場合があり、著者・翻訳者は翻訳の誤りについて責任を負わない。