バチボコ片想いガール
◎10年間、片想いしている人がいる。
10年も好きでいるのに、一回も一緒に生きたことがない。
いや、同じ時代に生きてはいるはずなんだけど、話したこともないし、触れたこともないし、相手がわたしの言動で心を動かしたことすらないはずである。わたしは相手にとって生きても居なくてもいいんだなと思うから、一緒に生きてはいないんだと思う。本当に存在してるのかどうかすら、確信が持てなくなる。どっちが?
10年間もそんなんだから、もはや何の期待もしていなくて、架空の人物だというならそれでいいから大好き。そんななのに、彼の声をイヤホンで聴くたびに、何度でも無料で「ああわたしの耳元で歌わないで///やばい、死ぬ」と思っちゃう。いい加減慣れなさいよ。それは本人ではなく、ただのイヤホンだ。
その人こそ、UNISON SQUARE GARDENのボーカル、斎藤宏介であるあーーーーー、好きなんですよ。本当に。あいしています。あいしています。
◎今日は、ユニゾンが初めて中野のスタジオに3人で入って楽器を鳴らしてから15周年をお祝いするライブです。
「優しくなくても正しくなくても 今日ぐらいは祝ってくれないかな」
優しくないし正しくもないけど、今日ぐらいは祝わせてくださいね。
今これを読んでくれていてユニゾンを聴いたことがない方もぜひ、「プログラムcontinued(15th style)」の歌詞とオフィシャルMVだけでも検索しても見ていただければなと思います。
「味方なんかにはなれないけど ねえ 挫けていいんだよ 秘密基地で会う約束をしよう」
ご覧の通りユニゾンの音楽は、全然ファンに寄り添わない(笑)。
ライブではようこそ!とラスト!以外MCがないことなんてザラ。
フロントマンである斎藤宏介は一切客を煽ったりしないし、マイクを客席に向けて歌わせるとかも絶対にしない。ベースの田淵くんの作った言葉数が異常でへんてこりんな曲を淡々と忠実にプレイするサイコパスサイボーグ。
そこがいいのです!
これからも一生、安心して片想いでいられるから。
わたしがどんなに愛そうと自由だし、こっちの愛とユニゾンの音楽は全く関係ないものとして、それぞれの関数のグラフの線を描いていくことができるのです。
◎思い出すのは、初めて行ったライブのアンコールで、田淵くんが頭を掻きながらワアワアわめいていた内容だ。
受験生の時からラジオをきっかけに曲だけ聴いていたのだが、初めてのライブは大学に入ってすぐの2010年6月18日金曜日。2枚目の遊園地のジャケットのアルバムツアーファイナル@今は亡きSHIBUYA AXだった。
今でこそ本当に特別な場合にしか斎藤宏介以外のメンバーはMCで喋らないのだが、当時のユニゾンは中MCでも3人で絶妙に仲悪く今月誕生日だねなどと喋っていたし、アンコールでは田淵くんが一人でワアワアとエモいことをわめく時間があった。
その時言っていたのが、
「自分の書いた歌詞を大量に印刷してスクランブル交差点にばら撒きたい」
みたいなことと、
「君の音楽は、君のもんだ。誰にも邪魔できない。その代わり自分で取りにいけ」
みたいなこと。
わたしはこの時の田淵くんのわめきを、今でも大切に守っている。
自分への信頼以上に、「自分の好きなもの」への信頼には過剰なほど揺るぎがないのはそのせいかもしれないのです。
◎それから、在学中はユニゾンのほとんど全てのイベントに行ったし、他のバンドにもたくさん夢を見た。
大学2年の時に3枚目の白鳥のジャケットのアルバムが出て野音の後にユニゾンクラスタでわちゃわちゃとしたし、就活していた頃に4枚目のハリネズミのジャケットのアルバムが出て円形ハゲとパンプスの靴擦れを作りながらこれを聴いて自分を鼓舞していた。今でも、緊張する頑張る日の朝に聴くと気が引き締まる。就職する前後で少しユニゾンが一番のバンドでなくなりかけて別のキラキラハッピーサウンドバンドが一番になりかけたのだけど、5枚目のフクロウのジャケットのアルバムが良すぎて、会社の研修で岐阜にいた時に特急で新潟のツアーにまで駆けつけ、ごめんなさいやっぱりわたしにはユニゾンが一番でしたと負けを認めることに。この年がまる10周年の記念ということでやっと武道館もやってくれた。武道館での伝説の斎藤宏介のMC「昨日引っ越したから、新居初めてのおでかけが武道館♡」の凄まじき可愛さに感化されまくったわたしは翌年のおんなじ日に強引に引っ越し、一人暮らしを開始。6枚目の牛のジャケットのアルバムはちょうどこの頃出たから、これを聴くといつまでも新居の匂いが蘇るんだよ。7枚目のキリンのジャケットのアルバムが出た頃にはもうすっかりわたしは音楽よりもお笑いのライブに通う人間になっていて、ユニゾン以外のバンドのライブにはほとんど行かなくなった。ユニゾン以外のバンド、いっつも同じセトリで演奏してる気がして。あと、MCで1つでも客への媚びを感じてしまうと途端に冷めるのだ。…って、ユニゾンのせいで遮二無二斜に構えた見方をしてしまうじゃないか。いや、遮二無二斜に構えたわたしを許してくれるのが唯一無二ユニゾンだったと言うべきか。
◎そして今年15周年ということで、かなり盛大にお祝いのライブをやってくれたり、今までを振り返るアルバムを出してくれたりしている。
どうりでそれを朝の電車で聴いたら一気にうわっと涙が止まらなくもなるわけで。
一番最初に出会った曲なんて、10年分のその日の感情・その日の感情・その日の感情を重ねて重ねて重ねて聴いてきたんだから。感情の多重露光撮影かよ。
ユニゾンさんへ。ユニゾンさんには関係ないこと言うね。
感情を表す言葉のストックは、たくさん持っているつもりだけど、これからももっともっと増やしていきたい。今は自分の感情ばっかりだから、人の感情にもっと得意にならなくちゃ。人の感情のタンスの隙間に入り込めるような何かを、創作していきたいです。
ユニゾンさんには関係なくていいからわたしは今そう思いながら大阪に向かっているよって話です。
「もしも僕が君の前まで来て 何かできることがあるとしても この手は差し出さない きっかけは与えたいけれど」
あはは、やっぱりちゃんと冷てえ〜。バチボコ片想い〜!
「Dizzy Tricksterに僕の声 届かなくていいけど あなたの世界で息をさせて」
「「何かが変わりそうな夜だ」」
◎でも、でもなんです。
昨日武道館のライブDVDを見返して、アンコールの最後の最後田淵くんとTKO(貴雄)が履けた後、ステージに一人残った宏介くんの一言MCにハッとした。
(まず、アンコールの最後に宏介くんが喋るなんてことが特別すぎる。いつも、たーのしかったー、バイバーイ!しか言わない。勝手に楽しんで勝手に帰っちゃうのだ)
特別な夜、特別な場所で斎藤宏介はこう言っていた。
「僕たちにとって大切な皆さんにとって、大切なバンドで在り続けたい」
ああ。
少しは、わたしのこの感情にも意味があるのかな。
少しは、斎藤宏介のいる世界にわたしも生きられているのかな。
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