「あらゐけいいち空想と妄想と想像と創造展」@名古屋会場ルポ【前編】
名古屋パルコ開催の「あらゐけいいち展」に足を運んできました。(2023/02/19-20)
あらゐ先生の作家生活20年を振り返るイラストパネル、過去の同人誌やアイデアノート実物の展示、オーディオコメンタリー、サンリオコラボグッズ販売など、ファンにはたまらない展示となっていました。
一部を除いて写真撮影が可能だったので、会場内の様子を振り返ってみようと思います。
※事前に開催していた東京会場にも足を運んでいたのですが、混雑のため会場全体の様子が撮影できなかったので、こちらで一括して紹介します。展示内容は、後述する一部を除いて同じでした。
記事の【後編】はこちら。
※4/24追記:大阪会場の様子もまとめました。
同時開催されていた「日常レストラン」に関する記事はこちら。
会場全体の様子
他の注意書きもそうなのですが、あらゐ先生の直筆イラストなのが嬉しいポイントです。
展示スペースは
①「あらゐけいいちと漫画」
②「あらゐけいいちとイラスト」
③「あらゐけいいちとアニメーション」
④「あらゐけいいちの部屋」
⑤「物販ブース」
の5つ。
会場は1フロアのみ。ただ展示物の情報量が多く(特に「アイデアノート」と「オーディオコメンタリー」)、密度はかなり濃いです。満遍なく見ようと思うと、流し見でも2時間は余裕でかかると思います。筆者は2日間、会場内で過ごしっぱなしでした。
東京会場はより小さなスペースに展示物がぎゅっと詰まっていましたが、名古屋会場はそれに比べるとゆったりした感じ。
「漫画」スペース
現在連載していない関係で、『CITY』関連の展示パネルはなし。
もっとも、2019年にまんだらけコンプレックスで開催された小展示会「あらゐけいいちの机の上にあった紙展」では、『CITY』の原画が飾られていました。その意味では、連載漫画三作がそれぞれ一回ずつ展示されたことになります。
同じ『日常』原稿でも、単行本1巻掲載分(「日常の1」)と10巻掲載分(「日常の174」)を比べると、後者は仕上げをデジタルで行うようになっていることが分かります。
また『日常』以外にも、
・プロトタイプ版『Helvetica Standard』(2004)
・同人誌「46Spring①」(2012)
の原稿が飾ってありました。
『CITY』連載中盤(2018年)以降はデジタル作画に完全に移行したため、『雨宮さん』および連載再開版『日常』の漫画原稿はない様子。代わりに、漫画の一ページが出来上がるまでの編集工程が説明されています。
『CITY』の1話、2話、6話のネームが手に取れる形で展示。2話・6話のネームは、完成版と展開が大きく異なっており、興味深かったです。
東京会場では、『日常』1巻「日常の15」のネームが展示されていました。東京・名古屋で展示内容が異なるポイントでした。
あらゐ先生がコミティアで発表した同人漫画も閲覧可能。展示品は、
・「こころ」(2004)
・「開けっ!」(2006)
・「幸せの角度」(2008)
・「46 Spring②」(2014)
の四作品。
アンソロジー『コミティア30thクロニクル』第1集に再録された「開けっ!」を除いて、公の場で広く公開されたのは初になります。
漫画アイデアノートの実物が、手に取って読める形で展示されています。
ただし、ノートの中身は撮影禁止でした。
内容に関しては他言しても良いと思われるので、後日別の場所でまとめようと思います。
アイデアノートは計四冊。古い順に、
・『日常』読み切り版に関するアイデア出し・初期設定ネーム(2006年)
・『日常』コンプティーク連載版に関するアイデア出し・ネーム(2007年)
・『CITY』連載開始に当たってのアイデア整理(2016年)
・『雨宮さん』連載開始に当たってのアイデア整理(2021年)
「イラスト」スペース
漫画家デビュー前(2003)からサンリオコラボ(2022)まで、二十年間の歴史を振り返っています。コラボ絵や提供絵の割合が多いのが、来場者にとって良いフックになっているようでした。
可愛らしいイラスト、ぐんま県民マラソン2014の集合絵、『ふたりサッカー探偵編』(2011-2013)掲載の欧州サッカー選手似顔絵まで、幅広い筆致を楽しめるのもポイント。
「眠り」と「平和」がテーマの、キャンバスアート連作。ディック・ブルーナ的な、可愛らしくも造形美に満ちたデフォルメイラストが並んでいます。その一方で、
虚無の表情を浮かべる「マイメロさん」が、異彩を放っていました。
イラストのアイデアノートも展示。サンリオコラボに際して、各キャラクターをどのように描くか、試行錯誤の形跡が刻まれています。
完成品ではサンリオの元デザインにかなり寄せてあるキティ・シナモン・ケロッピが、あらゐ色の強い筆致で描かれているのが貴重。マイメロさんはアイデア出しの時点では頭身が高く、ますます自由な印象に。
ノートの最後には、ヒエログリフで「𓄿𓂋𓇌𓎼𓄿𓏏𓍯𓅱」とあらゐ先生からのメッセージが書かれていました。こちらこそ、楽しい作品を「𓄿𓂋𓇌𓎼𓄿𓏏𓍯𓅱」とお伝えしたいです。
「アニメーション」スペース
このスペースのメイン展示は、あらゐ先生と『雨宮さん』の担当編集(外川氏)によるオーディオコメンタリー。2020年より制作を開始した各アニメーション作品の裏話を、30分ほどかけて振り返っています。
取り上げられている作品は五つ、
・あらゐけいいち短編02「捨鉢」
・あらゐけいいち短編「絵描きうた」
・【アニメ】新学期の雨宮さん
・「【ダヲコ】オノマトペラップ~なつあそび編~【あらゐけいいち】
・「喫茶 雲間鳥 1夜」
アニメーションに関するアイデアノート計4冊も展示。
各内容の概要は、
・ボツ(?)アニメ二作品「エンターテナー」「魔女のマーチ(たまご)」のアイデア出し
・「新学期の雨宮さん」制作過程
・「『よるはまわるよ』(サントリーコラボ)提供アニメ」「雨宮さんとドクロのうた」のアニメラフ
・漫画『雨宮さん』の単行本作業に当たってのエピソード整理
「アイデアノート」のネタバレは後日に回したいのですが一点だけ。
「新学期の雨宮さん」の制作過程を書いたノートでは、アニメと並行して、『メカトロウィーゴ』イラスト案や、『CITY』最終13巻の表紙イラストのラフスケッチを執筆していました。
週刊連載と並行してアニメを制作するあらゐけいいちという作家、作業量が化け物すぎる!
「部屋」スペース
・アナログの執筆道具
・『Helvetica Stadndard絵』(2014)収録原稿
・コミティア頒布のフリーペーパー「もぐらvol.0」(2004)
などが机に置かれています。
物販品の一つであるキャンバスアートマグネットの見本品。
「部屋」ブースを接写した写真を見返すと、まるであらゐ先生の部屋に本当に遊びに来ていたかのような錯覚が起こります。
キャンバスアート二種類。キュートな「静」の絵と、コミカルな「動」の絵、対照的な二作品が、あらゐ先生の作家性をよく表しています。
水彩イラストや原画の実物展示。アニメ『日常』映像ソフト特典、『なのエース』『少年エース』表紙絵など、2011~2015頃の作品群。