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メイクのルックの旬が過ぎた

50過ぎて今さらながらメイクにはまり、YouTube先生たちの動画を見ながらいろいろ塗っております。持ってなさすぎのコスメアイテムもプチプラのドラコスでちまちま揃えました。楽しい。

毎朝顔を洗い、スキンケアぺたぺた塗って、よし!といそいそ鏡に向かう。
楽しいメイクの時間よ。
しかしながらビギナーならではのクオリティの「ゆれ」がありましてね。

おや、今夜はどちらで舞踏会ですか? というド派手メイクになったり
あら、どこか具合でも? と心配されそうな血色不足メイクになったり
日々顔が違う。自分の顔が迷子。

原因としては不用意な手さばきによるものと思われる。
ほら、YouTube先生たちはアイシャドーとかチークとか、筆につけたら手の甲でトントンして調子見て塗るじゃない?なるほどね!

とはいえ筆はろくなのがないんですよ、YouTube先生監修のメイクブラシセットをポチったが届くのは数ヶ月先でしてね。
しかたなく以前からある洗った後の犬みたいなブラシでなんとなくそーっと取り去って塗ったりしてみる。

そしてプチプラで買ったアイテムに、色や質感の統一感がない。
かわいい!とかYouTube先生おすすめ!とかであれこれ買ってみたけど、なんかいろんな組み合わせをやればやるほど全体的に顔がちぐはぐな感じに。

そこでまずはひとパターンのメイクをマスターしようと思い立った。

「どのお茶淹れても美味しく淹れられないんですー」
という方におススメしたいのが、「毎日同じ茶を淹れ続けてみる」こと。
人は誰だってゆらぐ。気温や気圧や体調やホルモンバランス、美味しいと思う味も日々ゆらぐ。
だからこそ同じお茶を淹れることで、今の自分の飲みたい味にチューニングする感覚を養うことができる。

ということで
アイシャドーパレットはベーシックなヘーゼルナッツブラウンの4色パレットを使う。締め色もある。
同じメーカーのベージュ系のチークと、落ちにくいことで大人気だったリップ、売り切れの合間にやっと見つけて購入。これまたマットなベージュトーン。

上達には反復しかない。日々繰り返し同じアイテムでメイクした。

アイシャドーの発色の特性がわかり、塗りすぎることも、薄すぎることもなく、ちょうどよく彩ることができるようになった。
まつ毛もちゃんとあげて、マスカラでキープした。
まつげのきわ、ラッシュラインを埋めるようにインサイドラインを引くとお目ん玉がおはようございますした。
アイブローというのは眉毛のことなんだが、ないところを一本一本植毛する気持ちで描く技術を身につけた。
骨格の陰影を意識して、チーク、シェイディング、ハイライトは鼻根、
うん、できました。
とてもベーシックで上品なメイク。
日々完成度は上がっていき、完成までの時間も短縮されていった。

ああ。よかった。わたし、もうメイクマスター。
お顔の安定感、安心感。
ちょっと出かけた先で写真を撮ってもらったその自分の顔を見てやっと
ああ、いいかも、と思えた。

色のグラデーションが美しくて買ったパレット。
嬉しくて雪の日に撮ってみた。綺麗すぎて使えない

そうやってメイクにハマった年が暮れ、新年となった。

正月気分が去った頃、
「春のコスメベストバイ」
なるYouTube動画がアップされた。

「春の気分はフューシャピンク!」
「みてこのカラー!まるで春の空みたいでしょ!」
「お顔で桜が咲いたみたいじゃな〜い!?」

1月極寒ですが、気分は新春。
重くごついコートより、軽やかなスプリングコートを羽織りたくなる。
極寒だけど。メイクも同じだった。

せっかく覚えたメイクのルックが、
秋冬の温かみを感じさせるマットな雰囲気が、
急に、古臭く、やぼったく見えた。

キラキラの新製品コスメたちを動画で見ながらため息が出た。

なんか
この感じ
前にも
どこかで・・・・

仮面ライダーの変身ベルトだ。

息子がテレビにかじりついて夢中で見ていた戦隊モノ、そのヒーローたちの武器とか変身ベルトとか、そういう玩具がクリスマス前に一斉に新発売となる。
祖父祖母親どもはトイザらスなどに朝から並び、その玩具を必死で入手してはクリスマスの朝枕元に置く。
「わーーーー!!!!!!!サンタさんがーーーーーー!!!!!!!」
狂喜乱舞、すぐに身につけては
「サイクロン、ジョーカー、へんっっ しん!」などとヒーローになりきり
その様子を大人たちは目を細めて眺めるのだ。

だがしかし改変期とともにそのヒーローたちは去り、新番組がやってくる。
仮面ライダーはWでなくなり、ゴーオンジャーはシンケンジャーになった。
そうやって遊ばれなくなったいろんなヒーローたちの武器やベルトが死屍累々と転がっていく。

それと同じじゃーん。

トレンドは移り変わり、古いものの魅力は失せ、新しいものが欲しくなる。
まんまと市場経済のマーケティングの手のひらで転がされてるわけですよ。
ああバカみたい。

しかしそのキラキラの新ルックのアイテムたちが1月を皮切りににぞくぞく発売になるという。
なんて儚くて春めいていて美しいんだ。欲しい。新しいのほしい。
おいらもキラキラの新春顔になりてぇ

しかしね
メイクという世界の波打ち際でちゃぷちゃぷしてる初心者に

新 製 品 が 買 え る わ け が な か っ た。

ネットで予約販売、秒殺よ。暴力的な瞬殺完売。店頭にも並ばない。
なんだそれ。闇だよ。
メイクマニアたちの深淵を垣間見た気がして震えたね。

しかし数日後、買えなかった亡霊たちがネットでさまよっていると
「あの○○のフェイスカラー、⬜︎⬜︎で代用できます」
というまことしやかなジェネリック情報が飛び交うようになる。

似てるかもしれないけど、同じなわけないじゃん。
と重々承知でも買えないんじゃ仕方ないもんね。

そしてまたプチプラのドラコスで
春のルックよ♡とかいいながら
あれ、もう昼間っから一杯やってるんですか?みたいな
ピンクの加減やらに苦悩する日々がやってくるのであった。



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