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うちの庭 ~はっさく兄弟編~

10月中旬に再び因島を訪れ、釣りやら山登りやらやってきました。と言うことで、お久しぶりです。銀尾です。
2024年、今年に入ってから因島ばっかり行ってますね、ホント。
因島が島民500人くらいの離島だと思っている上司や同僚たちは
「一体何しに因島へ……??? ライブもないのに……???」
と こぞって訝しがってますが、山城やポルノきっかけで訪れた因島で知り合いも増え、のどかな気候が居心地よくてリピートしてしまうんですよね。
他地方から移住した方もたくさんいらっしゃるので、さもありなんって感じでしょうか。

さて。
今回は趣向を変えて園芸の話。主にゼラニウム中心のコレクターやっていた私ですが、ガーデニングと言うほど大がかりでも専門的でもないけれど、土いじりも趣味のひとつです。数ある鉢植えの中に、因島産の八朔がいます。今日は、そいつらのお話し。


【学名「Citrus hassaku」】

生物の分類は上から、界・門・網・目・科・属・種と区分けされ、これを見ると何の仲間か大体わかります。ラテン語でつけられた国際的な名前を学名と言い、属と種を記載して表します。
はっさくの学名は「Citrus hassaku」。
Citrus(シトラス)はミカン属のことで、代表種のミカンやオレンジ、レモンなど多くの柑橘類を含みます。種名は そのまま「hassaku」。
世界的にもハッサクなのね!
※ちなみに伊予柑は「iyo」。
見つけた人が名前をつけるのが一般的なので、日本の在来種は日本名を踏襲することが多いよ。

ハッサクは江戸時代後期、因島は田熊で偶然 発見されたと言われています。名前の由来は「八朔の日に食べられるから」。八朔は「八月朔日」=「8月1日」のこと。実際のハッサクの収穫時期は夏ではなく冬です あしからず。

さて。
同じく偶然発見された安政柑(アンセイカン)と共に因島を代表する柑橘となったハッサク。生食の他、今は様々なものに加工され、目にする機会も増えました。
果肉が硬めで少々の苦味、大人の味。昔からミカン類が好きなうちの家族、冬場はよく買って食べています。

そして幸か不幸かネオメロドラマティック、園芸好きなワイ。食べ終わったハッサクの皮とタネを前に。
「ちょっと蒔いてみようか、このタネ」
同じく園芸が好きでブルーベリーを始め、果樹を育てているオカン。
「やってみたら?」
そんなわけで、家族に邪険にされることもなく、ハッサク育成記が始まるのである。

ハッサクを食べたじゃろ?
採れたタネを蒔いてみる……ってワケ!

このときのタネは、2023年2月末に銀座の広島県アンテナショップで開催された「因島フェア」で買ってきたハッサクと紅ハッサクから採れたものです。世に出回るハッサクは和歌山県産が大半だけど、うちの子は正真正銘、広島生まれ。因島からやってきた奴らなのです。
日付を見ると、2023/4/14とある。食べるのがもったいなくて3月いっぱい追熟させておいたな、さては……。
ハッサクの種まきは寒さが去った3月後半頃がオススメです。果実を食べてすぐにタネを蒔かない場合は、濡らしたキッチンペーパーに包んで冷蔵庫で保存してください。瀬戸田レモンのタネはこれで生き延びました。

タネの蒔き方は簡単。濡らしたキッチンペーパーに置くだけ。このとき、タネについたヌルヌルを洗い落としておくと発芽率が良いです。果実の種子は乾くと死んでしまうので、毎日霧吹きで湿らせてあげてください。

大抵、植物は根から先に出てきます。10日くらいで白いモヤシみたいな根がチョンと出たところで、100均で買った「種まき用土」に引っ越し。タネの半分ほどを土に埋め、霧吹きでお世話続行。まだ日向には出しません。明るい日陰でゆっくり様子を見ます。

普通の園芸用土でもいいんですが、わざわざ「種まき用」って区別してある理由わかります? 植物って肥料をあげればいいってもんじゃなくて、ちょうどいい栄養バランスの土ってのが大事なんですよね。種まき用土は言わば赤ちゃん用の土って感じ?
ちなみに、私が愛してやまないゼラニウムは挿し木で殖やしますが、挿し木の場合は普通用土に挿すと腐りやすいです。バーミキュライトとか保水のみの土の方がつきやすいですね、経験上。

さて。

ハッサクの双葉(2023/5/13)

無事に根付いてくれました。本葉が2~3枚出て落ち着くまでは、このまま育てます。
ハッサクと紅ハッサクひとつずつで、タネが5~7個採れたはずですが、最終的にこのグループで芽吹いて根が張ったのは3株だけでした。黒くカビてしまったり、そもそも芽が出なかったり。タネを蒔けば必ず出るわけではないってのは、どの植物でもそうだけどシビアなもんですね…。

今年(2024)の春にも向島産レモンと熊本県産ハッサク、地元のアマナツのタネを新たに蒔いてみまして、発芽率は昨年より良かった気がします。
タネの表面がカビてしまってもティッシュで拭き取ったら芽吹いたり、根が出ないのでダメかなと思っても気長に世話していたら芽吹いたり。タネの個性やペースに合わせてあげたり、時には飼い主のいい加減さも必要なのかなって思います(作文)

【はっさく3兄弟】

左が長男、右が次男(2023/5/30)

と言うことで、初年度の因島産はっさく。紆余曲折を経て3株が生き残りました。
長男と次男は芽吹きに3日ほどしか差がなく、成長速度も小さい頃はほとんど変わりがなかったですかね。三男は2株に遅れること10日ほどで芽吹きました。

チビの三男(2023/5/30)

かつて10鉢以上保有していたゼラニウムにも、花の色や葉の特徴をもじって名前をつけていた私。管理しやすくなるし、この子らにも名前つけようかな。
え? 区別がつくのか? 全部同じ緑色だろ、って?
区別はつきますよ、飼い主だから(真顔)
で、私のnoteを読んでくださっている方なら、私がやりそうな奇行に予想がつくんじゃないかと思います。

因島産のハッサクで……3株あるから……
よし、お前らは芽吹いた順に
タマ、ハル、アキ
だ!!!
(期待を裏切らないキツネ)
お察しの通り誕生日順ですね。
誰の?とか聞いてはいけない(やめろ)

↑タマ、←ハル、→アキ(2023/6/30)

こうやって並べると個性が出るなぁ。
タマとハルはハッサクらしいツンと長い葉なんですけど、アキは丸っこい葉です。
品種の違いなのか、単なる個性なのかは不明。土生産と中庄産の違いだったりしてな ハハハ!!!(高笑い)って勝手に楽しんでます(お前)

柑橘に限らず果樹は挿し木や接ぎ木で殖やすことが多いですが、これは優れた親の形質をそのまま引き継ぐことが出来るから。美味しい果樹から採れたタネだからって、親と同じ美味しい実が成るとは限らないのです。
タネから育てたものは「実生(みしょう)」と呼ばれ、両親のどの形質を受け継いだかで当然ながら気質が変わってきます。

余談。
ハッサクなど単胚柑橘は雑種としてのタネが出来ますが、レモンなどの多胚柑橘は親と同一形質の芽が出ることがあります。

レモンの発芽(2024/5/3)
ひとつのタネから2つ芽が出ている

簡単に言うと「単胚」=ひとつのタネからひとつの芽、「多胚」=ひとつのタネから複数の芽が出る&複数の芽のうちひとつが雑種、残りは親と同じ形質……ってこと。超簡単に言うと、そういうこと。
レモンだと2つ芽が出ても一本が白化で枯れてしまったり、育ち方に差が出たりと、なかなか奥が深いです。

そもそもハッサクは自家受粉しにくくて、アマナツとかイヨカンがないと結実しないらしいですからね。アマナツの成樹はあるので、ゆくゆくは受粉させたりする必要があるかな。うん。

某ロックバンド的並び(2024/5/3)
心なしか身長まで似てきた……

私の場合は観葉がメインで、果実の方は気長に待つ気でいるので、とりあえず育ってくれれば御の字です。

【アゲハ蝶との戦い/羽根を休めないでください】

2023年の春に芽吹いた、はっさく3兄弟。一番上がタマ、真ん中挟まれハル、一番下がアキ。はっさく、はっさく、はっさく3兄弟(誰かとめてやれ)

2023年・2024年と2度の夏を乗り越えて、気付けば秋の気配。今年の夏は猛暑で、太陽が好きなハッサクもぐったりしていましたね。彼らとの夏の思い出と言えば、これ。
夏の夜の真ん中、ヒラリヒラリと舞い踊るように現れた柑橘の大敵。
そう! アゲハ蝶だ!!!
奴らの幼虫は柑橘の葉を食べる。そりゃもうムシャムシャと。

「ハッサクにアゲハ蝶なんて、ポルノグラフィティ要素バツグン☆」とか腑抜けたことほざいてる場合じゃない。そんなこと言ってる場合じゃない。
我等は戦士。戦わねばならぬ。
奴らの食欲は旺盛だ。幼虫を放っておいたら、樹が見る間に丸裸にされてしまう。毎朝毎晩、くもりなきまなこで見つめ、葉の裏まで確認し、タマゴや幼虫を除去する日々。
何故かスクスク育って巨大化しているハルはともかく(ともかく?)、神経質で細身のタマや、背が低くて小さいアキがやられたらひとたまりもない。
アゲハ蝶が可哀想でもあったが、箸で摘んでは放り投げていた。ごめんよ、でも私は私のハッサクが大事なんだ(真顔)

たまに取りこぼして大きく育っちゃった幼虫がいたりして、
「いつからそこにいるんだ貴様ァ!」
と怒号を浴びせつつ引っぺがしていたという(近所迷惑)

もうひとつ、柑橘たちを苦しめたのがエカキムシ
これは葉の裏にもぐりこんで食害する小さいイモムシで、見つけたら潰すのが一番早い。柑橘農家用の殺虫剤もあったけど、メンテナンスも兼ねて毎日見て潰して回っていましたよ。
このあたりは先輩園芸屋のアドバイスを聞いて、不織布を張ったり置き場所を変えてみたり、試行錯誤しております。

ゼラニウムは ほとんど虫がつかなかったし、いてもヨトウムシくらいだったので、こんなにも柑橘が狙われやすかったとは……。農家さんも大変だろうな。

今年4月の写真(2024/4/26)
左からタマ、アキ、ハル。
奥の鉢はレモン。
そして近況(2024/9/15)
左からアキ、タマ、ハル。
ハルちゃん……お前、何でそんな巨大化してるの……?

写真を見て判る通り、一番右の次男・ハルが巨大化しております(笑うところ)8号鉢でも小さいくらい。地植えでも良いレベル。
油断すると数ヶ月で根っこが鉢から逃げ出すほど強い樹勢なので、こまめに植え替えないといけないです。
枝ぶりも良くて、すごく丈夫。多少の食害もへっちゃらで、葉も硬く立派。奔放に育ったなぁ……。
似たんですかね?(誰に?とか聞いてはいけない)

一方のタマ(真ん中)は気難しい株で、気に入らないことがあると落葉するところがあり。一晩でボロボロ数枚落としたこともある。
なので、なかなか葉が茂らず樹勢が強くなりません。幹も細い。でも新芽は出すので根が傷んでいるわけではなさそう。そっと掘り返して状態を見ても、ちゃんと育ってる。常緑樹の落葉って結構な割合でヤバいことが多いんですけど……。土を変えたり置き場所を変えたり、御機嫌とりしてます(私が)
柑橘らしい、目を離せない株ですね。

アキ(一番左)はタマよりは樹勢が強いですがマイペース。唐突に落葉することもあるので冷や冷やします。
葉が柔らかいのかイモムシがつきがち。小振りながら鋭いトゲを生やしています。なかなか背が伸びず頼りなかったですが、ようやく下から脇枝を伸ばしてきているので、大事に育ててやりたいところですね。
※実生の柑橘はトゲがあることが多いですが、接ぎ木のハッサクはトゲが出ないんだそうです。我が家ではハルとアキにトゲがあります

気質が異なってくる実生とは言え、こんなにも個性が分かれるとは思ってなかった。基本的に同じ用土、同じ風向きと日当たりで育てているので、落葉の原因もイマイチわかんないんですよね。
タマの気難しさもそうだけど、ハルが神奈川の気候に順応して巨大化したのもすごいなって。どれがハッサクの標準木(と言うか標準的な気質)なのかわからんところは正直ある。
農家さんとかだと樹勢の弱い株は淘汰されてしまうんだろうけど、3株とも大事に育てる所存です。

さておき、初めて柑橘を育ててみて、根っこの強さに驚きました。地上部が低くても根は倍近くあったり、根が詰まると地上部の伸びが鈍化することを知りました。いやはや、ゼラニウムとか草本メインでやってたので勉強になることばかりです。樹木は違うんだなぁ。うん。

もうすぐ2度目の冬。寒さに弱い柑橘は室内に取り込んで、春までゆっくり過ごしてもらいます。
去年の秋から冬は、天気のいい日に「幼稚園」と称して1日中 日の当たる畑に鉢を運んで日光浴させていました。私の住んでいる関東南部は、北風にさえ当てなければ露地でも柑橘が越冬できるので、今年も日を見てやっていきたいですね。

日光浴の様子(2024/1)
↑ハル、↓タマ、→アキ
今夏で どれだけハルが巨大化したかよくわかる

3株ともまだ幼株なので、野外越冬は5年を過ぎた頃からかなーと思っております。

タマとアキは虫除けも兼ねて不織布でガード中(2024/10/27)

ギリギリまで日光に当ててあげたいので、今後の天気や気温と相談ですな。
とりあえず、ハルの置き場所を考えないと……(瞑目する絵文字)

と言うことで、我が家で育っている同期実生のハッサクの話でした。
今日も今日とて楽しく植物ライフ!
銀尾でした。

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