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甲殻夢譚
早良夢子は、毎日のように夢を見る。それはいつも不気味なもので、夢の中には幽霊や化け物などが現れては夢子を恐怖させて、彼女の睡眠を阻むのである。
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昨日見た夢は、気味の悪い甲殻類がたくさん現れる恐ろしい夢だった。夢子は甲殻類が嫌いだ。「食べれば美味しい」という一般的な意見には同調しない。あの甲殻に覆われた蜘蛛やゲジゲジのような姿の肉をほじくり出して「美味い美味い」と喜びの涙を流して貪り食らう姿は醜悪でしかないと考えている。
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夢子が夢の島のような海沿いに開けた広大な場所を歩いていると、突然、海老だか蟹だかわからない姿の巨大な化け物に襲われて、ついには食われてしまうという恐ろしい夢だった。
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それだけではない。彼女は甲殻類の胎内に引きずり込まれて遂には同化してしまったのだった。
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同化しても、「死なないんだったら、ま、いいか」てな感じで同化を受け入れて海老だか蟹だかになりきって生きようと思うのだった。その姿は恐ろしいが体長50メートルで、核爆弾でも平気なほどの甲殻に包まれているのだから、これまで生きてきた中で、「気に入らない奴とか嫌いな奴とかまとめて食っちまうぞ!」ってな感じで次々に襲ってはむさぼり食ってやった。そのときに感じたのは「人間って美味いなぁ」という実感であった。
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ああ、でも夢だから、その夢は覚めるのよ。夢が覚めたあとの虚無感ってのは「ああ、人間食いたいなぁ」っていう気持ちに満ちあふれちゃっていたのだった。