災害の多様性「失敗の科学2」
「オープン・ループとクローズド・ループ」
マシュー・サイド著(有枝 春訳)「失敗の科学」にはクローズド・ループとオープン・ループという言葉が出てきます。もともとは機械制御のことを言いますが、この手法を応用して政治経済だけに留まらずに、思想哲学として一般的に使われるようになりました。
クローズド・ループとは失敗から教訓を学ばず、さらに要因を追求分析・改善せずに同じ失敗を繰り返すことを言います。当然のことながら保身のために失敗は隠蔽されてしまいます。
その真逆がオープン・ループです。失敗をつまびらかにし、教訓とするだけでなく、失敗要因を分析・改善していく建設的な思考です。
2012年から2020年まで続いた「A内閣」が、まさにクローズド・ループ政権と言えるでしょう。政治経済の失敗だけでなく、自己責任という思考を一般国民に植え付けるという負の影響を与えた政権は、失敗を繰り返しているものの、自らの非を認めず、失敗を隠蔽してきました。隠蔽を繰り返していると、これが、さも真実のように思い込んでしまうのです。彼個人だけでなく、彼を取り巻く政党そのものにも強い影響を与えました。
結局、Aは、思いがけぬ凶弾によって命を失ってしまうのです。これが色々な意味で、彼と彼らが招いた失敗の積み重ねによるものであることは誰の目にも明らかでしょう。
失敗を認め、それを公して責任をとり、国民に同意を求めながら良い方向に改善していくことこそ、政治を行なう者として重要なのです。
クローズド・ループ思想は、災害への対応にも大きな影響を与えます。太平洋戦争終了前年の1944年12月7日に発生した「昭和東南海地震」は、死者・行方不明者1223名、負傷者2864名、住家全壊18008棟という大災害でしたが、当時は敗戦濃厚になった太平洋戦争中でしたから政府によって隠蔽されてしまいました。
「昭和東南海地震」の47日後には「三河地震」が発生しました。この地震では死者2306人、行方不明者1126人、負傷者3866人。家屋の全壊は7221戸に及びました。
しかし、昭和東南海地震同様に、国民の戦意を低下させないことや軍需工場の被害を伏せるため、政府によって報道管制が敷かれ、地震発生の報道はされたものの、被害規模やその後の状況などの多くが伏せられてしまいました。
私たちは、失敗を素直に認めて、失敗から多くを学びましょう。未来の地球のためにオープン・ループ思想で生きましょうね。
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