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カルチャースクール「文章スケッチ」
昨日のカルチャースクール「初心者文章教室」では、お馴染みの文章スケッチを行ないました。風景写真や人物写真を見て、イメージする文章を書いてもらうのが基本です。
例えば下の写真を見てイメージできる文章を書いてもらうのです。それは写真を見たまま「森のようなところ、草むらに木々の影」という簡単なものでもいいですし、「森の中を歩いていると、突然、目の前が開き、丈の揃った草の絨毯が現れた」でもいいのです。
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つまり、文章や写真でイメージできるものを表現してみるのです。これが「文章上達のコツになるか?」と問われたら「ひとつのポイントにはなる」と答えます。要は「情景描写力を高める」ことはできると思うのです。
文豪・芥川龍之介の羅生門の冒頭部分を以下に転載します。
ある日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗(にぬり)の剥げた、大きな円柱に、蟋蟀(きりぎりす)が一匹とまっている。
以上の文章から「ある日の暮れ方→時間」「一人の下人、ほかに誰もいない→人物・人数」「羅生門の下で→場所」「雨がやむのを待つ→状況」がわかります。さらに、丹塗(赤く塗られた)が剥げた柱にキリギリスがとまっているということで丹塗の赤とキリギリスの緑色という色彩が文章から浮き出てきます。
文章では情景描写が最も重要というのが僕の個人的な意見です。僕の好きな推理小説の巨匠(たとえば松本清張、西村京太郎のような)の作品は、巧みな情景描写によって旅情を醸し出していますね。推理部分の内容がイマヒトツで、旅情を感じさせているだけの作品であっても、確固たる多くのファンを要しているのですからね。
さて、カルチャースクールでは、「文章の情景描写」だけでなく、逆に「文章からイメージできる絵を描いてもらう」ということもやっています。これも文章からどれだけの情景をイメージできているかというのを確認するための試みです。
今回は、以下のような3つの短文を用意して、それぞれを生徒さんに選んでいただいて、絵を描いていただきました。
①街の中央に位置する丘の上には樹齢20年の桜の木が3本。今年も満開の花を咲かせている。そこにはひとつのベンチがあり、恋人同志と思われる男女が座って桜を見上げている。
②夜。田舎町の街道にはラーメン屋が1軒灯りを点けている。どうやら開店前のようだ。店の前には数人が行列を作っている。
③朝の公園。公園は森の中にあって大勢の高齢男女がラジオ体操をしている。そこをジョギングの男性が通りかかる。
それでは、どのような絵が描けているのかを見てみましょう。
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①を2人が選び、③を1人が選んでイメージするイラストを描いてくれました。残念ながら②を選ぶ生徒さんはいませんでした(笑)が、それぞれの個性で、面白いイメージイラストを表現してくれたと思います。
今後もこの試みを続けていきます。
◆知らなかったのですが「文章スケッチ」という名称は、一般的に使用されているようです。てっきり僕のオリジナルかと思っていたら(笑)、文章を書くプロの方々が一般的に使っている名称のようです。ということは、情景描写力の向上のためには文章スケッチは有効だということですね。
しかし、今回のように文章からイメージする絵を描くというのも既にあるのでしょうか?
改めて思ったのは、僕が考えることなんて誰もが思いつくことだということですね。