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船橋 星影神社の女怪


「うちの大家さん」

昨日、アパートの大家さんがうちの部屋のベランダにある大きなプラスチックボックス8個を処分してあげると言うのです。以前から大家さんは「消防点検があるから処分してあげるよ」と言っていたのですが、消防点検などなく、ベランダにあるボックスを処分してほしかったらしいのです。

そもそも、そのプラスチックボックスは、この狭い2Kアパートに引っ越す前に住んでいた3LDKマンションの荷物が入りきらなかったのでベランダに本やガラクタを詰め込んで保管していたものです。今住んでいるアパートは古くてボロッチィのですが、デザインは洒落た洋風のもので、ベランダは6畳ほどの一部屋分もある広いのです。

だから広いベランダには10箱ほどのボックスが並んでいたのです。ボックスは左右1メートル弱、奥行き50センチほど、深さ50センチほどのプラスチックボックスを3段積み重ねて倉庫代わりにしていたのです。

しかし、ベランダは、遮蔽なしの太陽光が直射で当たるので、プラスチック故にボックスは数年後には強烈な太陽光で亀裂が入り、雨水が入って、ボックスの中の大切な本やガラクタの3分の1がおシャカになってしまったので、無事だった本やガラクタを狭い部屋の中に押し込んで暮らしていたのです。そのために居住空間は超狭小なのです。

ああ、要するに被害拡大しないように中身を抜き出してからボックスには何も入っていなかったのですね。空箱です。このボックスを大家さんは処分してやるというので「お願いします」って返事して大家さんの家まで運んだのです。プラスチックボックスといっても意外に重いのですけどね。しかも温暖化熱波・・・でしょ?全身、汗でビショビショになりながら運んでから大家さんと一緒に電気ノコギリでボックスを“通常ゴミとして捨てられる”ようにバラバラにして、紐でしばったのです。もう汗ビショで軽度熱中症でフラリンコになっまいましたのよ。

んで、大家さんが「さ、これからこのプラゴミを市のクリーンセンター(ゴミ処理場っす)に持っていこう」と言うのです。「えええええ!聞いてないよ!」心の中ではそう叫んでも、口から出た返事は「はい、そうしましょう」でした。んで「大家さん、金持ってくっからちょいと待ってください」と言って部屋に帰って財布持って戻りました。大家さんは軽ワゴンに乗って「ワタナベさん、こっちこっち!」って手招きしています。

それでクリーンセンターまで車の中で色々と話をしました。このアパートに都合7年も住んでいますが、大家さんとは腹を割って話をしたことがないのです。

前置きが長くなりましたが、今回は、大家さんとの話の中に興味深い話があったので、それをお伝えしたかったのです。

「星影神社の怪」

二和はうちの近所・・・といっても、歩いたら超遠いのですが(それでも歩いて行ったことはありますのよ)、船橋市には二和(ふたわ)という地域があります。この周辺(松戸方面からですから広大です)は、江戸時代には小金牧と呼ばれた野生馬の放牧地でした。それが戊辰戦争を経て明治になると、小金牧は、農地として有効活用できるように開拓されました。二和というのは2番目に開拓されたので二和なんです。ちなみにこの隣町(同じ船橋市です)は3番目に開拓されたから三崎、4番目は柏市の四季(しき)、5番目は松戸市の五香(ごこう)という具合です。ちなみに僕が住んでいる街には最初に開拓された土地の初富という地域があります。

さて、二和には「星影神社」という明治3年に創建された神社があります。周辺は農地に囲まれた田舎の感じです。船橋と言っても広うござんす。この星影神社の周りは寂しい田舎道でござんす。

この星影神社の周辺には関東大震災時に自警団によって虐殺された朝鮮人の慰霊碑がある馬込霊園という霊園があります。さらに、応永30年(1423)に創建された御瀧不動というお寺もあります。そういった環境のほぼ中央に「星影神社」があります。

星影神社は明治になってできた神社ですから比較的新しい神社ですね。この神社には奇妙な噂がたくさんあります。所謂「心霊スポット」というやつですね。心霊のスポットっていう言葉も変ですね。心霊って幽霊のことじゃなきですからね。新時代造語ってやつでしょうね。

地図上に文字はないですが、左の大きな緑色部分が馬込霊園です

あ、申し訳ない、すぐに脱線しちゃいます。星影神社にまつわる奇妙な噂ってのは白装束の女性が走り抜けるというものです。ネットを見ると、バイクで神社の付近を走っていると白い服を着た女性が追い抜いていくというのですが・・・。

あ、その前に大家さんの話をしますね。話がアチコチに飛んで申し訳ないですね。大家さんは副業(アパート経営を主業とするとです)で「個人タクシー」を営んでいるのですが、今回、初めて個人的な話を話をしたのです。それで個人タクシーでの話を聞いたんです。

「景気のいいときなんかさ、航空会社と仲良くて、成田とか羽田とかよく行ったんだよ。1回2万ぐらいで日に4回以上乗ってくれっからさ、いい稼ぎになったんだよ」

いきなり景気のいい話をし始めた大家さん、しかし、僕の興味は「怖い経験をしたことがないか?」です。実は以前から大家さんにその話を聞きたかったんですよ。お客に乱暴されたとか恐喝されたとか、それから・・・幽霊話とか・・・。

「怖い思いをしたことはないですか?」
「ああ、昔はチンピラが良く乗ってきたよ。まぁそんなんでもやっちゃうけどね」
「大家さんは強面ですからね(笑)」
「へへへへ」
「いや、そんなじゃなくて幽霊とか・・・」
「ああ、ああいうのは臆病な人間が勘違いして見ちゃうもんだよ」
「そうなんですか・・・」
「でもさ、2回だけ見たことはあるよ」
やった!タクシー怪談話を聞けるぜって喜んだ。
「津田沼方面に客を乗せて、帰りに滝不動の方から裏を走っていたら、いきなり道の真ん中に白いブラウスの女がもの凄い早さで走ってきて、道路を横断するとフッと消えちゃったんだよ、それからももう一回見たよ」
「へぇ、2回も見たんですか?」
「うん」
「怖かったでしょ?」
「いや、別に、ただ不思議だなぁって思っただけでね、怖くはないんだけど、女が消えた方向を見ても、姿は見えなかった、もういなかったな」
「ふーん・・・」
「うん、運転手仲間も見たって言ってたなぁ」
「それって星影神社の前でしょ?」
「そうだよ、なんでわかったの?」
「ネットでは心霊スポットとして有名なんですよ」
「ふぅーん・・・」
「他にはないですか?」
「ないよ、その星影神社の女だけだね」

ネット情報を信じたことはないのです。特に怪談話はね。幽霊やお化け(妖怪のこと)は本当に怖いけれども、凄く興味のある僕は、大家さんの話に感動したのです。感動というのは大げさですが「ネット情報にも真実があるんだ」ってことに心から感動したのでした。

あ、今度、星影神社に確認に行って・・・みまぜん。あたしゃ幽霊やお化けが怖いんですから。

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