東京万景「新宿 成子天神社の富士塚」
僕は富士塚が好きで、外出先で富士塚があると聞けば足を運んで登山してみる。高いところでは品川神社、市原若宮八幡神社、流山浅間神社、松戸金山神社などに登った。登山と言っても富士塚というのは人工的に作ったミニチュア富士山のことだからたいしたことはない。
妹が入院した病院の斜め前に、このあたりの氏神である「成子天神社」がある。昔、この地域は柏木村鳴子と呼ばれていて、鳴子が成子に変わったのだ。僕は若い頃にこの近くの成子坂下にあった美術雑誌の営業として半年ほど働いていた事があるので、このあたりのことはよく知っている。この神社の存在も知っていたが、参拝したことはなかった。
今回、妹の完全治癒と、かみさんの手術の成功を願って、かみさんと一緒に初参拝すると、境内に富士塚があることを知って早速登ってしまったのだった。
「年なんだからやめなさい」と引きとめるかみさんを麓に残して登ってみると以外にも急峻で、頂上までの道はもの凄く狭く、積み上がった溶岩の凹凸は危険だった。転んだら落下して溶岩で大けがをするだろう。山頂付近に設置してあるチェーンを掴んで必死で登った。
ようやく頂上に到着。達成感はあるが、眺望はどうだろう？ ビルばかりで面白くはない。山から降りる際には登る時以上に注意しないと転げ落ちてしまう。かみさんが五合目まで登ってきて「危ないじゃない！」と怒っている。
充分に注意しながら山を降りて「こりゃ危ない、老人は登っちゃいけない富士塚だわ」と言うと、かみさんが、「病院にお見舞いに来て、怪我したり、ヘタしたら死んじゃうとか絶対にないからね！」と本気で怒っている。
「大丈夫、今回で懲りたから･･･」と、嘘をついた。富士塚を発見したら、僕はまた登るだろうからね。