「貧困と富裕 備忘録」4
「今日、スクラッチくじを買ったんだ」
「へぇ…当たった?」
「うん、200円だけ」
「何枚買ったの?」
「5枚だよ。1枚200円だから1000円。当たったのは1枚で200円だった」
「ふうん…それじゃあ残りの4枚は外れで、要するにマイナス800円ってことか?」
「そうだよ」
「損しても平気なの?」
「でも当たれば300万円だからね」
「でもさ、くじを買わずに1000円を貯金すれば…」
「また貯金かよ。スクラッチくじを買う事なんて1ヶ月にⅠ度だけだぜ」
「ひと月に1000円ずつ貯金すれば1年で1万2000円だぜ」
「ぷっ、1年で1万円ちょっとじゃしょうもない…それに当たれば300万円…」
「当たらないよ。当たっても低い金額だって。あ、でも僕は10万円当たったことがあるけどね」
「えっ!」
「本当だよ。何気なくスクラッチくじを買ってみたら当たったよ。5枚買って1000円だったから、9万9000円の黒字だった」
「凄いね」
「この一件だけなら大黒字だけれど、こんなのは珍しい。10万円が当たる前にスクラッチくじに使った金額を考えれば超マイナスだよ」
「なんだ、スクラッチくじファンなのか?」
「ファンじゃないけれど、自分の運を試すために買っているんだよ。たまに1万円とか1000円とか当たることがあるんだ。そういうときは運がいいってわかるじゃん。スクラッチくじを買うのは君と同じで1ヶ月に1回ぐらいかな?」
「同じじゃんか」
「20年間買っているから、合わせて24万円くらいになるな。たいてい1枚当たるから800円として、年間9600円で…20年で19万2000円か…。当たった10万円、1万円2回、1000円5回を合わせた12万5000円も引くと6万7000円のマイナスだ」
「もう、いいよ」
「うふふふ。ジャンボ宝くじなんて1枚300円もするじゃん。スクラッチくじより当たる確率は低い。それにああいう番号抽選ってのはインチキだと思ってるからね」
「仕掛けを使って任意の番号に当てるとかって、よく言われるよね。僕も買わないよ」
「その点、ロトくじなんかは自分で番号を選べるからまだマシだ。それでも番号抽選だからね。売る側が買われたくじ番号をデータとしていて、それからいずれにも当たらぬ番号を当選番号とするとかね。怪しいモノさ」
「あ、くじ売り場のおばさんが、スクラッチくじは10枚買えば3枚は当たるんですよって言ってたな」
「ふふふ、嘘だよね。10枚買えば、たいてい1枚は当たるってのならまだマシだけどね。あ、そうそう。僕は、同じ宝くじ売り場で毎日1枚ずつスクラッチくじを買い続けたことがあってね」
「1枚ずつじゃ当たらないだろう?」
「どうして?」
「確率が低くなる」
「売り場ではたいてい10枚セットで売っているけれど、そのうち1枚買うなら確かに全体の確率は少なくなるけれど、運が良ければその中の当たりくじを買うことができるだろう? 僕は運試しで買っているから、10回のうち3回は200円と1000円が当たったよ」
「ふーん…僕もやってみようかな?」
「うん、売る方の言いなりになってはダメなのさ。それに宝くじの売上金が何に使われているのかわからないだろう? 宝くじ公式サイトを見ると、“販売総額のうち、賞金や経費などを除いた約40%が収益金として、発売元の全国都道府県及び20指定都市へ納められ、高齢化少子化対策、防災対策、公園整備、教育及び社会福祉施設の建設改修などに使われています” とあるけれど、見えない金の流れを信じることはできないよね。だから、何をするにも自分の意思で決めることだよ」