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夢の風景「九龍地獄横丁」2
僕は九龍地獄横丁から山頂の塔
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「やっとヘル・ナースの群れから抜け出せた。それにしても、もの凄い数のヘル・ナースだったな。ヘル・ナース除けスプレーを持っていたから助かった・・・」
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地獄横丁にはこれまで見たことのない新しい建物ができていたりする。目の前にあるのは何だろう? バラック小屋のようなバランスの悪い建物に白衣の女性達が屯している。白衣といってもヘル・ナースたちではないようだ。何かの選挙運動だろうか?それとも宗教関係なのか?いずれにしても危険な感じがしたので早足で歩を進めた。
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彼女たちの側を通る際に「I'm the one who killed him」「Different. It was you who killed me」などの声が聞こえた。
しばらく進むと、やっと地獄横丁らしい飲食店通りに出た。ほっと胸をなで下ろした。
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目の前から大きな顔の女が歩いて来た。その大きさから「骨食らう女」のようだが、陽気なイメージが違う。
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その女が近づいてきて「あんた、塔に行きたいんだろう? まずは町外れの映画館に行ってみるといいよ」と呟いた。
「地獄横丁に映画館?」
「この通りをまっすぐ行くと横丁から出られるよ。ふふふふふ」と言うと、去って行った。
女が言うとおりにしてみようと思って、通りを歩いた。
すると目の前が開けて突き当たりの広場に出た。そこには廃屋のような状態の映画館があった。
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「これだな」
中に入ってみると、誰もいない。モギリの担当者もいないのだ。
「すみませんが、どなたかいらっしゃいますか?」声をかけてみるが、返事はない。
そのまま映画館の中に入ってみると、何かの映画を上映しているようなの音声が聞こえた。
館内の防音のための分厚いドアを押して中に入ると、モノクロの怪奇映画が上映されていた。
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「塔に行くなら、地獄横丁の黄泉がえりの坂をのぼるんです」
驚いて振り返るとヨレヨレの燕尾服を着た男が立って笑っていた。逆光で顔は見えない。
「え?」
「黄泉がえりの坂をのぼるんだ」そう言うと姿が消えてしまった。
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「言われたとおりにしてみよう」映画館を出て、地獄横丁に入った。すると、ヘル・ナースたちのたまり場に出てしまった。
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彼女たちは僕に気がつくと立ち上がるや全員揃ってこちらを向く。
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仕方がない。僕はカバンからヘル・ナース除けスプレーを取り出して彼女たちに吹きかけた。
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ヘル・ナースはゴキブリのようなもので、低音に弱い。ヘル・ナース除けスプレーは、ただの低温スプレーなのだ。彼女たちは正体を現してから逃げ出した。
僕は走って黄泉がえりの坂を目指して走った。坂がある場所の見当がつかないので、書店の婆さんのところに行った。
「知らんと言った、あの口ぶり・・・婆さんは何かを知っているはずだ」
書店の前に着くと驚いた。婆さんの代わりに若い女性達が並んで座って本を読んでいる。噂に聞いたことがある。彼女たちこそ「リーディング・ガールズ」だ。
「あの・・・婆さんは?」手前のリーディング・ガールズに聞いてみる。
「婆さんは薬屋で店番してるわよ」素っ気ない返事だ。
「そうですか・・・」
「あんた、黄泉がえり坂の事を聞きたいんでしょ?」
「そうだけど・・・」
「黄泉がえりの坂なら、ほら、目の前にあるじゃない」
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「あ」
振り返って見ると、いつの間にか坂道が現れていた。
「これが、黄泉がえりの坂か?」
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「そうよ、その坂をのぼれば塔に行けるはずよ」
「私たちは行ったことがないけれどね」
そう言うと、リーディング・ガールズたちは、また読書を始めた。
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つづく