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災害の多様性「ドイツ・ナチスの政策①禁煙運動、アスベスト対策の先駆け」

「健康被害」

僕は20代から40代の初めまで喫煙者でした。メンソールタバコを日に1箱は吸っていました。といっても、僕はタバコをふかして煙をモクモクさせるのが好きなだけで、煙をスーーーッと吸うのは苦手でした。友人たちには「お前、タバコふかしているだけだろう?」と、よくバカにされました。それでも無意識で吸引はしていたのです。歯も汚い色に着色していました。タバコ専用歯磨き粉で磨いても白くはなりませんでした。

それが40歳を越えると突然「禁煙する」と決めて、パッとやめちゃったんです。理由は覚えていませんが、当時働いていた出版社の喫煙率は高くて、編集室の中に煙草の煙が充満して壁面や天井などにも色がついていました。その中で1日中働いていると衣服にも匂いがつくのです。僕はこれでも「オシャレさん」だったので(笑)、まあ、そういうのが嫌になってやめたのだと思います。すぐにやめられない方も多いと思いますが、僕はタバコをふかしているだけだったからか、すぐにやめることができました。

タバコが健康を害するのは誰もが理解されていることだと思いますが、強いストレスを感じる仕事をする方などは禁煙できないと思います。仕方がないのです。僕の母は70歳まで喫煙していました(ショートホープ1日2箱ほど)が、遂に息苦しくなってきたのか、徐々に喫煙量を少なくして半年後には禁煙できました。しかし、その後、定期検診で肺の奥の手術できない場所が癌に侵されていることがわかって、それから数ヶ月後に死んでしまいました。医師に「喫煙のせいでしょうか?」と聞くと「違います。あくまでも高齢によるものだと思いますよ」と言っていました。

母のように喫煙=肺がんに結びつくものではないと思いますが、ただ、出版社時代の僕の上司は、ヘヴィスモーカーで、肺がんで亡くなりました。医師によれば、喫煙による因果関係は明らかでした。

「ナチスの政策」

ヒトラーに率いられたドイツ・ナチスは、ホロコーストに他国侵略といった悪いイメージがあります。現在のロシア同様です。確かに人間として非道なことを行ないました。

ここで少し脱線します。では、敗戦確実な日本に原爆を落とし、首都空襲によって一般市民を虐殺したアメリカはどうなのでしょう? ホロコーストよりも非道だと思います。戦後、吉田茂らの親米政治家や戦争を先導していた右翼らによって米国隷属政策をとって現在に至るわけですから、米軍基地および事実上の制空権を許し、隷属している日本人もどうかと思われます。

さて、ナチスです。以下は武田知弘さんの本「ヒトラーの経済政策 世界恐慌からの奇跡的 復興」(祥伝社新書)を参照しました。

1939年に医師フリッツ・リキントが中心となってナチスの中毒性薬物対策委員会から「タバコと人体」という本が出版されました。1100ページという大著で「喫煙者がいかに健康を害しやすいか」ということが書かれています。

この本では、喫煙による肺がんだけでなく、「動脈硬化、乳児死亡、潰瘍、口臭などの原因になる事が述べられ、喫煙者だけでなく副流煙によって周囲の人々の健康を害しやすい」ことを指摘しています。この本は現在でも禁煙運動のバイブルとされているようです。

ナチスは、得意のパンフレットやポスターでタバコの害を繰り返し喧伝しました。ナチス党内の全機関で禁煙、親衛隊の将校にも禁煙を強制されました。

この本が出版される前年1938年には、公的機関での規制が始まっており、役所、病院、郵便局、空軍基地内が禁煙となっています。面白いのは国内の全ての列車で禁煙車両が設けられていたことです。1941年にはドイツの60都市の路面電車が禁煙になり、同じ年にはナチスの広告評議委員長の名前で「タバコの広告に関する規制」が出されます。内容は以下の通りです。

・タバコが健康に良い、もしくは無害であるという表現をしてはならない。

・女性向けのタバコの広告を出してはならない。

・スポーツ選手やパイロットなどを用いてタバコを吸うことがカッコイイと思われるような広告を作ってはならない。

禁煙補助製品も作られました。タバコが不味くなるうがい薬、タバコが不味くなる注射、禁煙ガム、禁煙薬・・・などです。

「ナチスのアスベスト政策」

ナチス・ドイツはアスベストの危険性にいち早く気づき完璧に近い対策を講じていたそうです。

現在では断熱材として長く使われていたアスベストの健康被害は常識になっています。アスベストの繊維が空気中に飛び散り、それを長期にわたって吸引すると肺がんなど、健康被害を及ぼすというものです。

1930年代にアメリカでアスベストと肺がんの関連について盛んに言われるようになりました。ドイツでも1938年にアスベストを扱う労働者の肺がん罹患率が高いことを公表します。ナチスは、アスベスト対策委員会を立ち上げてアスベスト工場で換気装置の設置を義務化したり、労働者に補償制度を設けたりしました。

ナチスは「国家社会主義ドイツ労働者党」です。もともと労働者の権利、国民の福祉のためにできた政党だったのです。社会主義と言ってもマルクス共産主義ではないですが、労働者のための政党だったのです。他の国ではナチスよりも20年も遅れていたのです。アメリカでは1973年に建設会社マンビルが健康被害に関して訴訟を起されます。この訴訟の際に「ナチス・ドイツではすでにアスベスト対策を講じており、マンビルはアスベストの危険性を察知できていたはず」という文言が入っていました。

◆付録「火災の原因はタバコ」

喫煙は嗜好品ですから、やめられない人にやめろと言っても仕方がないのです。喫煙=健康被害ということを知っていても吸うのですから、身体の異常よりも精神の安定を求めているのでしょうね。仕方がないのです。

タバコの一番の害は健康被害よりも火災です。

令和2年の総務省消防庁の消防白書によると、火災の要因は「タバコの不始末」と「放火」が上位となっています。“放火”と“放火の疑い”を合わせると全火災要因の12.1%となっています。昔から放火が出火要因の上位を占めています。

ストレスを抱えた一部の人間が放火事件を起す精神状態について、僕には理解できません。この間書いた、「凶悪犯罪者の再犯率」において凶悪殺人事件の犯人が犯行のあとに放火するのは証拠隠滅の意味があるのでしょうが、こちらも僕には、まったく理解できません。

「タバコの火の不始末」は、当たり前ですが、タバコは火を使いますから、火の始末を怠ると火災を引き起こしてしまうのです。

令和元年中の出火件数3万7,683件中、タバコによる火災は3,581件で、全火災の9.5%を占めています。ただ、吸っているだけでは火災は起こりません。タバコの火の不始末によってこそ火災が引き起こされるのです。経過別出火状況をみると、不適当な場所への放置によるものが2,194件と半数以上を占めています。

タバコを吸われる方は充分にご注意下さいね。

つづく


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