夢の風景「九龍地獄横丁」4
「あれ?」
黄泉がえり坂をのぼろうとしていたら目的の塔とは違う塔が目の前に見えた。目的の塔はどこなんだ?
「横丁の中から見上げているのでは皆目見当がつかない。ヘル・ナースの坂にのぼって上から見てみよう」
ぼんやりしていたら・・・。
「どけっ!」棺桶男に怒られた。
「バカだね、あんた・・・」声がする方を見るとオカッパの色白女性が立って笑っている。
「塔の主があんたをからかっていただけだと思うよ」
「どういうことですか?」
「あんたはこの地獄横丁から絶対にでられないということだよ。人間は皆、生まれ落ちたときから、既に決められている自分の運命からは逃れられないんだ。その運命や人生って奴は、この地獄横丁みたいなもので、運命に囚われたまま死ぬまで逃れられないのよ」
「でも、黄泉がえりの坂の先に・・・」
「塔には行き着かないよ。アタシはとっくに諦めてこうやって雑貨屋をやっているんだからね」
「ところで、あなたは・・・?」
「ここの店主だよ」見れば「郷土土産」といいう文字が見えた。
「これを食ってみな。元気が出るよ」
「え、あなた、ど、どなたですか?」
「アタシは和菓子屋“地獄門”の天地真理(てんちしんり)。このお菓子“地獄もん”を食べれば元気が出るよ」
天地真理はハート型の容器の蓋を開けて中身を見せた。
「うちの銘菓はこれよ」
銘菓「地獄もん」は人間の心臓だった。
「うひゃあああっ!」僕は気を失ってしまった。
「いひひひひひひひひ」
つづく
次号予告
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