風穴~初めてピアスを開けた話
中学3年生のとき、初めてピアスを開けた。
思春期の衝動そのものだった。
ピアスを開けると運命が変わる、なんていう。
私が思うに、開けたから変わるというより何か変えたいと思って開けるからだろう。
当時、私は勉強こそできるが絵ばかり描いていたイケてない女子だった。
マンガはとにかく好きだったがアニオタというよりは、何より自分の創作「うちの子」が大好きだった。
美術部の活動も真面目にやっていた。
あまりオシャレに興味はなかった。
ただオシャレな絵を描くためにはオシャレにならなければならないと思っていた。イケてる女子になりたいと思っていた。しかしそれは中学在学中に実行することはなかった。生意気だと思われたくないからだ。
高校生になり環境が変わったら徐々にやろうと思っていた、はずだった。
私はイケてる自分になりたいと思うあまり、周囲が好きな流行りの音楽を聴きたくなくて、自分だけが好きな音楽が欲しかった。
まあまあアニメも好きだったのでアニソンやイメージアルバムも聴いたものの、音楽が好みではないとすぐ聴かなくなる。
本気で好きになれるアーティストを探していた。
近所の電気屋さんで1階~3階が書店、地下がCDショップという店によく行っていた。
邦楽アーティストのあ行からわ行まで一通り見るということをよくしていた。
ある日、何かを購入して販促ブックレットをもらった。
ビクター所属アーティスト名鑑だったと思う。
CDサイズ、派手なピンクの表紙、オールカラーでかなりのボリューム。
この時代ならではの豪華さだ。
それを頭から読んで、気になったアーティストをピックアップ。
●BUCK-TICK(好きな友達はいたので名前は知っていたが、ダークで何か怖いイメージ)
●SOFT BALLET(ちょっと難しそう)
●brain drive(水田さんカッコ良かった)
そして、M-AGE
みんなinvitationレーベルですね。
このM-AGEこそが、運命の出会いだった!
まずはビジュアル!(女子中学生なので(-_-;))
メンバー全員イケメン!
目を引くカラフルでオシャレなファッション!
能書きを読んでみると、どうやら既存のロックバンドにはない革新的な音作りをしているようだ。彼らを語るに欠かせないワード、和製ジーザスジョーンズというのはもちろん何のことやら。
とにかく私には「新しい」というだけで十分だった。
とりあえずこのバンドを聴いてみようと思いCDシングルを買った。
「WALK ON THE MOON」
カッコいい!
クール!
ポップでキャッチー!
聴きやすい!
私はこのバンドを聴くと決めた。
順不同で少しずつアイテムを集めていった。
「someday close your eyes」
VHSで動く彼らを観て、間違いないと思い、ますますハマっていった。
ちなみに推しメンはギターのミヨケンさんだった。
私は徐々に色気づいていった。
イケてるお兄ちゃんバンドへの強烈な憧れ。
このバンドにふさわしい自分になりたいと。
そして期末試験の終わった夏休み前のある日、ピアスを開けた。
ピアスはロフトやロビンソン等々で購入していた。
当時、髪の長さは今と同じセミロングで、学校ではおさげだった。
おさげだと耳が見える。ピアスを隠さなければならない。
翌日の放課後、美容院に行き髪を肩上までバッサリ切ってボブカットにした。
あくる日、髪を切った私に同クラの女子2人から言われたこと。
「テラクミ(当時のあだ名)失恋したな?」
「ち、違うって」
「絶対失恋だー」
といじられた。
本当に違うのだ。むしろ逆である。
彼女たちは、このテラクミが、ピアスを開けた耳を隠したいがためにカットしたとは夢にも思わないのだろう。
さらに、私がM-AGEのようなイケてるバンドを好きであることも。
私がM-AGEというバンドのファンであることは周囲に言わなかった。
誰も知らないだろうというのが一番。
知らないとしてどういうバンドか知られてお前には似合わないと思われるのも嫌だったから。
背伸びしてたのは分かってたから。
同じグループの子1人にだけ、明かしたことがある。
「最近M-AGEっていうバンドが好きなんだ。私はギターの人(ミヨケンさん)が好きなんだけど、ボーカルの人(KOICHIROさん)可愛いんだ」
「ヒット曲ある?」
「わかんない…」
会話終了。
曲も聴かせてないし、写真もVも見せていない。
余談だが、今では彼女たち皆とクラスのグループLINEに入っている。男女半々の11名。
上記の子が招待してくれた。
招待された頃、グループは出来上がっていた。
メンバー入りして初の挨拶時、歓迎してくれたものの、
私は未だに当時の引け目から会話できず、時節の挨拶程度しか絡めない。
ただ時が経ち大人になると、当時のグループとは違う構成で仲良くなれるんだ。高校以降の付き合い方かな。
話は戻って。
2021年の今年、M-AGEが30年の時を経て復活した。
今の私は、音楽が必要不可欠だ。
過去~現在の音楽遍歴を振り返る度に、原点だったと思う。
今、彼らの音楽を聴いて強く確信した。同時に余りに大きな存在だったことに気付いた。
30年前、中学時代の初恋バンドに再び恋をした。
すべての始まり、私を変えてくれた彼ら。
文字通り、風穴を開けてくれた。
ちなみに最初のピアスホールは未完成に終わった。
ホールが完成するまでピアスをし続けるというのは不可能だった。
高校が規則の厳しい私立だったため、1年の時はいったん忘れた。
規則をすり抜ける術を覚えた2年の頃、また開けた。
頭髪は厳しかったがピアス検査がなかったのでバレずにやり過ごした。
3年間、同じ髪型で通した。
ホールは無事完成し、現在に至る。