無意識に”ぬるり”と入り込む「戦略PR」って最強なんじゃね? と思った回。
社内の経営戦略勉強会「Tribal Professional Academy」、通称「TPA」。今回のお題は「パブリックリレーションズと戦略PR」。「広告」「ブランディング」「マーケティング」とPRの違いは、以下の比較図でよく示されています。(恥ずかしながら、私はTMHに入るまできちんと認識してなかった…!)
(出典:https://blog.btrax.com/jp/marketingvsbranding/)
広告とPRの圧倒的絶対的な違いは、広告が商取引であるのに対し、PRが情報取引である点。ゆえに広告はコントロール可能な一方、PRはアンコントローラブルということ。
そんな超基本をおさらいしつつの今回の課題図書は4冊。PRとはなんぞやをなぞり、緻密とボーダーレスを必要とする現代のPR戦略論、さらには心理学まで!
いやもうこれ、近年読んだ本のなかでも猛烈に面白い! ただ、4冊の中で最後に読んだせいか「影響力の武器」と「PR」をどうマージさせたらいいのだろう?と途中で不安になった。が、PRという枠組みのなかで本書から汲み取るべきは以下に集約されているように思う。
私たちの社会では認知の過剰負荷傾向が強まっているので、それに比例して手取り早い意思決定を行う機会が増えている。そのため、相手への要請の中に、影響力の起爆剤をいくつか忍ばせるタイプの承諾誘導の専門家はますます成功しやすくなっている。
良い方向に使えれば、それぞれの“影響力の武器”は最強のPR戦略のひとつになり得るということだ。
ずっとずっと気になっていた「戦略PR」。どうやら、自分の知らないところで世論を作る人たちがいるらしい、自分のものだと思っていた意思や志向は、どうやら多くは導かれているらしい…! OMG!
前回の「広告論」で読んだ『明日の広告』では、
・情報大爆発時代の現在、「好きです!」を連呼する広告=ラブレターを消費者は受け取らないどころか、運よく受け取っても信じてくれない。
・急にやってきた”モテない状況”の対処法は、相手に自分を徹底的に合わせること(消費者本位)とコミュニケーション全体をデザインすることが重要
とされていた。今回の戦略PR部分は、まさにその続き。というかまるで上下巻。
戦略PRとはラブレターを渡したい人の周りで、あなたがステキな異性だという情報がそこはかとなく流れるということ
戦略PRが担うのは、ラブレターを渡す前のモテる「空気作り」。その人のステキさを伝えるのではなく、その人と「付き合う理由」、つまり好きになる理由自体を”つくる”ことなのだという。
本書の中ではそのような、空気作りによって醸成された”ニーズへの気づき”を「カジュアル世論」と呼んでいる。そして、疑ぐり深くなり情報の量と質に追われる現代消費者の心理バリケードにぬるりと入り込めるものこそが、「作り出された空気」。なんてったって、空気。
戦略PRの中で披露されるプロセスや手法を読み進めるにつけ、もはや広告とPRは完全に不可分であると強く思う。『明日の広告』も『戦略PR』も、最終的に「全体を設計」する必要性を着地点としているのはもはや必然なのだろう。徹底的である、きっとそれだけが本質なのだ。
どこまで徹底的であればいいのだろう?
プロダクトやサービスに0→1フェーズで携わる自分にとって、戦略PRは魅力しかない。けれども。プロジェクト戦略からプロダクト企画、マーケの全てのフェーズから戦略PRは始まっていて、どのステップもセグメントも掛け違えてはいけない緊張感が常にある。プロダクトの1アクションでさえ、プライスにおける見えないはずの哲学ですら、徹底的じゃなければいけないという、連続した緊張感。
一方で、この「全体を徹底的に考えて設計し、徹底的に遂行する」ということが、どんなプロジェクトにおいても唯一の差別化なんじゃない? ということを、ちょっと前から考えている。
当たり前のことを、当たり前にやろう。もはや”当たり前”となった戦略PRを、いま学べて本当によかった。ギリセーフ。たぶん。