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SDLがいつの間にか当たり前の世界になっているよ、さて、どうしよう!? の回

社内の経営戦略勉強会「Tribal Professional Academy」、通称「TPA」。今回のお題は「サービス・ドミナント・ロジック」。サービスが主体のロジック...何の?どうやらビジネス全ての。SDL・・・初めて聞くけれど、学んでみたら身近というか、我々の超ど真ん中の話。

GDLとSDLの整理

Service Dominant Logic(SDL)に対し、これ以前のフェーズ(というより世界観)をGoods Dominant Logic(GDL)という。いわゆるモノ作りの世界。製造業がメインに羽振りを利かせられていた時代。

【GDL】:モノかサービスか。企業が価値を生産(過去)
【SDL】:モノもサービスも。企業と顧客が共創(現在)

なぜ、GDLからSDLへと世界は移ったのだろう?
背景には、グローバルに人口における中間層がメジャーになる日がすぐそこまで来ているという生産と人口の現実がある。コモディティ化は超加速度的に進み続け、世界レベルでサービス化が進む必然として産業の垣根が曖昧になっている。つまり、モノだけでは差別化できない時代になった、ということ。

さて、両者を詳しく比べてみる。

サービス観の違い

【GDL】モノ>サービス
世の中には「モノ」と「モノ以外の何か(=サービス)」があると捉える。サービスはモノに付随する

【SDL】モノ=サービス
世の中で行われる経済活動はすべてサービスとして捉える。違うのは「モノを伴うサービス」と「モ ノを伴わないサービス」か。

面白いのは、論文のなかでSDLが目指すところが「モノにもサービスにも共通する経営論理の構築」と唱えられていたところで、いかに今までがメーカー主体で経済が回っていたのかがわかるし、同時にいかにそれらの企業がビジネスの転換に苦労しているのかも垣間見える。

価値創出の違い

【GDL】企業:価値生産/顧客:価値消費
モノであれサービスであれ、「価値を生み出すのは企業」という企業から顧客への一方向的・分業的な「価値生産」と「価値消費」 を前提とする

【SDL】企業:価値生産=顧客:価値生産
価値を生み出すの は企業と顧客の双方であり,相互作用を通じて価値を創 造するという双方向的・協業的な「価値共創」を前提とする

SDLが歌う「価値共創」とは、製品やサービスが使われている過程でずっと価値が作られる状態(Value in Use)ということ。これはつまり、バリューチェーンでこれらのビジネスを考えるにはもはや限界がある。売って終わり、ではないのだから。

価値の創出の違い

【GDL】交換価値:モノやサービスが市場で対価と交換される

【SDL】使用価値:企業と顧客の双方が製品やサービスの購買時だけでなく、 その前後にもさまざまなやり取りをする文脈のなかで実現する「使用価値」を重視する

GDLの価値交換を「所有」と言い換えると、SDLの「使用価値」との対比が明確になる気がする。
エアビーなどのシェアリングサービスもこれだし、ネスレのネスプレッソもそうだ。よく事例に出てくるコマツの車両管理システムもこれだ。ついでにサブスクとかSaasとか言われる様々なサービスも。

GDLとSDLの課金モデル


ここで気になるのが課金モデル。GDLでは製品販売時点の交換価値の最大化をめぐって各社間の競争の次元が展開されていた。マーケティングのファネルは購入に向かって収斂すれば正解だったのだ。

一方、SDLになると製品販売後の使用価値をいかに最大化するかをめぐる競争に移行する、というのがモデル的な論説。けれど、SDLの課金モデルにもいくつかパターンがあって、①売価+継続使用料 ②売価オンリー ③使用料オンリー、これに初期費用つけたり、など様々。
自身のサービス開発でもどハマりした、どの課金スタイルで行くかもまた、フィロソフィーを体現するものとして、顧客との価値共創のネタになっていくのだろう。

ゼロックスのコピー機のビジネスモデルの転換例はSDLの成功事例(上記③)としてよく語られるが、意外なことにコマツの課金モデルは成功したとは見なされていない。というのも、コマツの価値モデルは車両管理システム(KOMTRAX)を通じた、製品販売後の顧客による使用を通じて創り出される「使用価値」にあるものの、KOMTRAX自体には課金できていないらしい...!びっくり。
確かに、価値モデルは使用価値、つまりSDLで成立しているビジネスというのに、課金モデルは従来型の交換価値をベースにしていたなんて! 顧客の価値理解、顧客との価値共創とはいかに難しいことかが垣間見られる例だと思う。

ちなみに、SDLの次の世界は「マルチサイド・プラットフォーム」というらしい。Uberなんかがこのステージにいるのかな。価値共創の顧客が複数いて、価値獲得の選択も複数になる。壮大な経済圏。うらやましい。

さて、GDLとSDLの比較に戻ろう。

顧客との関係性の違い

【GDL】顧客=消費者
企業活動の対象としての「客体」としてとらえられる。一方通行の情報のみで成立しうる世界

【SDL】顧客=消費者&価値生産者
顧客は企業 活動の客体にとどまらず企業と協働して価値を共創する「主体」

ここがSDLの1番の特徴でありモンダイ、なんじゃないかな。なぜか。手っ取り早く売り上がらないからだ。先ほどのKOMTRAXでも見たように、顧客との価値共創は「使用価値」への「対価」として転嫁できない限り、課金ポイントは従来型GDLと同様なのだ。けれど、事業活動は時代とともに進化を求められる。「文脈価値」には顧客主体の物語が紡がれる時間と不確実な投資と、切ないほどの期待が必要になる。難しい。

価値を「共創する」というと、顧客が参加することにより、新たな価値が生み出されるケースを想像するけれど、多くのサービスや商品において期待できることではない。

「S-Dロジックの世界観に立って事業活動をとらえ直すということは,すなわちモノとサービスを分けずに, 購買時だけでなく,購買前にも購買後にも,広く顧客接 点を設け,顧客と常につながりをもつ中で,さまざま接 点を通じてどのような顧客価値を創り出すか,を考えることになる」
(引用:製造業のサービス化:「サービス・ ドミナント・ロジック」による考察 一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 准教授 藤川 佳則 Panasonic Technical Journal Vol. 58 No. 3 Oct. 2012より)

考えるのはいいけれど。SDLこそ、マルチに適用される世界観では「ない」んじゃないかな、という気がするのは私だけだろうか?

なんてモヤモヤしながら今回はおしまい。講義が楽しみ。

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