ワークショップで習得する、官民共創のはじめの一歩 〜官民共創による社会課題の解決〜
社会課題の多様化・複雑化と、少子高齢化による自治体の財源、人材不足や、DXによって新たにビジネスによって解決できる課題の幅が広がったことなどから、社会課題をビジネスで解決しようとする動きが高まっています。
一方で、多くの自治体から、「官民共創による行政課題の解決を始めたいが、どこから手を付けて良いかわからない」というお悩みも多く寄せられるようになりました。
自治体と企業が目線を合わせ、官民共創にて社会課題を解決していくためには、まずどこから始めれば良いのでしょうか。
1.官民共創における起点のつくり方 〜企業サイド〜
官民共創にて社会課題を解決していくには、まず最初にどちらかが解像度高く自分たちの求めていることを提示していくことが必要です。それを企業側から進めていく手法のひとつが、「逆プロポ」です。
従来の公募プロポーザルとは異なり、予算と社会課題の提示を企業が行い、その課題に関心ある自治体を募ります。そして、その提示された社会課題に関心ある自治体が、A4一枚の簡単なエントリーシートを提出して「一緒にやりたい」と手を上げ、手の上がった自治体の中から、企業が自治体を選ぶ仕組みです。自治体は、費用の負担はありませんが、様々な協力をしていただくことになります。
2.官民共創における起点のつくり方 〜自治体サイド①〜
官民共創を始めるには、いくつか手法がありますが、一番ライトなもののひとつが、前述した「逆プロポ」へのエントリーです。自治体はA4一枚の簡単な企画シートを出すだけでエントリーが可能となります。もし関心ある募集があり、企業から選ばれれば、自治体の予算を使わずに初期の仮説検証をすることが出来ます。また、事業開発にご協力いただく自治体には、企業から、議会議決を伴わない形での寄付金が支払われます。
様々な自治体の方にご利用いただいていますが、これまで特に多くの逆プロポにエントリーいただいている大阪の枚方市からは、もともと「公民連携を推進していきたいが、どう進めてよいかわからない」というご相談があったのです。
それが、最初にエントリー頂いたワイヤレスゲートとの「こども食堂DX」のプロジェクトが、マニフェスト大賞 最優秀グッドアイデア賞を受賞されたことをきっかけに、「自分たちの部署でもエントリーできる逆プロポはないか」と庁内から声が上がるようになり、次々とエントリーいただく中で、企業とともに官民共創でプロジェクトを進めていくことが、庁内で当たり前の温度感になってきたのだそうです。
官民共創を進めていくにあたって、必要な要素の大部分が調整された状態で自治体の募集が行われる逆プロポは、官民共創のはじめの一歩として、ハードルが低く、利用しやすい仕組みとなっています。
3.官民共創における起点のつくり方 〜自治体サイド②〜
次のステップとして弊社がご提案しているのが、自治体からの社会課題の提示です。こちらも、必要があれば弊社がサポートして企業向けに課題を磨き上げ、翻訳して、弊社のリレーションある大企業やスタートアップ、中小企業などの企業群に伝えています。
とはいえ、多くの自治体からは「庁内から課題が集まらない」という次のお悩み事が出てきます。そこで、自治体の行政課題・社会課題の中から、どういった課題を企業が求めているか、官民共創で解決すべき課題はどういったものか、抽出していくワークショップを開発し、官民共創人材育成を目的に、多くの自治体や省庁向けに実施しています。
こちらは、私がこれまで前職の人事組織コンサルティング会社にて、大企業の経営理念の策定や浸透、PMIを支援していた経験や、プライベートで実施してきた子育て支援活動、まちづくり活動におけるコミュニティ運営の経験などから、自治体向けに新たに開発したプログラムとなっており、実はその開発には愛知県豊田市情報戦略課にもご協力頂きました。
4.官民共創人材育成ワークショップ
ワークショップは、様々な方を対象に行われます。これまでに、このような形で実施してきました。
・係長クラスに庁内横断で実施
・管理職クラスに庁内横断で実施
・県や地方経産局、省庁からの声掛けで、複数の自治体から希望者を募って実施 など
いずれもとてもご好評いただき、特に開発にご協力いただいた豊田市では、官民共創を進めるにあたり、まずは人材の育成が必要だというご認識となり、本年度は1日インターンとして約20名の職員や幹部の方々に、東京にお越しいただき、弊社の仕事を体験いただく機会を得ました。
「企業が社会課題に関心あるとは聞いていたが正直ピンとこなかった。しかし、今日ソーシャル・エックスと企業の面談を見学することで、企業が本気で行政課題に関心があるのだと腹落ちした。」という若手の声も頂きました。
5.ワークショップ参加者の声
ワークショップが終了した際、係長クラスに実施した自治体からは「今度は管理職に受講させられないか」、また、管理職クラスに実施した自治体からは「今度は若い職員たちに実施させたい」とのお声をいただき、庁内全体に官民共創の理解を広める需要があることを確認できました。もともと、「官民共創を“新しい当たり前”に、“文化”として庁内に広めていきたい」という思いで開発したプログラムだったので、自治体側からも同じようなニーズがあることがわかり、この活動を更に広げていきたいと意欲を新たにしました。次年度は、各所主催にて、全国各地でこのワークショップを開催予定ですので、ご関心ある自治体の方は、募集を見かけられましたらぜひご参加ください。自治体の方による見学も、一部受け入れ可能となっています。
6.おわりに
「官民共創」という言葉への社会の認識も、ここ数年で大きく変わりました。先日、自治体の職員の方向けに「逆プロポ」の説明会を実施した時は、簡単なメールでの呼びかけで80名もの様々な自治体の職員の方がご参加くださり、大変驚きました。現在、官民共創を更に一歩進めるための新たな研修プログラムも開発中です。
「官民共創を新しい当たり前に」。これを合言葉として、自治体だけでなく、社会全体に、官民共創による社会課題の解決を広げて行きたいと思います。