Rubyistに送る信州山歩きのススメ
2023年5月11日〜13日開催されるプログラミング言語 Ruby の国際カンファレンス "Ruby Kaigi 2023" に参加するため、長野県松本市にやってきてトレッキングや登山に興味を持たれる方も多いと思います。駅やホテルに置いてある観光パンフレットを見て、折角だから行ってみたい思う方もあると思います。
超偏見ですが、プログラマーのアウトドア・アクティビティというとサイクリング、ロードバイクのイメージがあります。でも、この機会にトレッキングや山歩きも楽しいよ!という同好の士を増やしていきたいところです。
ひと昔前の山登りというと大学の登山部や社会人の山岳会に所属して修行のような鍛錬を経て山頂を目指す。1/25,000の国土地理院地形図とコンパスを使った地図読みの技能は当たり前で、GPSなどの電子機器に頼るなど以ての外でしたが、団体には属さない個人的な登山が増えて、使えるものはスマホの登山アプリも積極的に活用しましょうという流れに変わってきていると思います。ということもあり YAMAP さんの Ruby Kaigi スポンサードなのだと思います。
ですが過去には海外からきたRubyistが日本で働く知人と一緒に初冬の山梨県 三ツ峠山に登り、自力で下山できなくなる出来事もありました。うっすらと積もった雪に足を取られて無積雪期のコースタイムを大幅に超過。山頂に辿り着いたときには日没を迎えて行動不能に。このときは三ツ峠山荘のオーナーさんが小屋閉めして無人となった山小屋まで救助に向かっていただき幸い事なきを得ました。5月の長野県内の山でも同じような状況に陥るリスクはあります。
信州 山のグレーディング
長野県では「信州 山のグレーディング」というものを公開し、登山者の体力と技量に応じた登山計画を呼びかけています。
この「山のグレーディング」に掲載されている登山道に入山するときは登山届を提出することが求められます。そして、この登山届が必要な山域に入ろうと計画している方は、このページをそっと閉じてください。「趣味で週末に山に登っています!」程度の素人の私の解説を鵜呑みにして本格登山を計画してはいけません。プロのガイドさんに相談してください。ちなみに目的地の山小屋に電話したり、登山用品店で飛び込みで相談することは、ご迷惑なのでやめてください。初めて接したこの人が、どの程度の体力があり、どんな装備をこれから揃えるべきか、他のお客さんの接客の合間に無料で相談を受けるなど無理な要求です。それなりの対価を払ってプロのガイドさんが引率してくれるトレッキング・ツアーに参加しましょう。そうすれば出発の数週間前から根掘り葉掘りのアンケートが届いて適切なアドバイスも受けられます。逆に前日申込可のツアーは、さっと歩くと1時間程度の短いハイキングコースを、ガイドさんの説明を聞きながら、のんびり2〜3時間かけて楽しむイベントになります(それは、それで、とても楽しいですが…)。
山のグレーディングの読み方で1点ご注意。
山名の右に(登山口)とありますが、この登山口が重要です。
例えば、体力レベル2(日帰り可)、技術難易度Bに『木曽駒ヶ岳(千畳敷)』とありますが、これは千畳敷登山口(駒ヶ岳ロープウェイ駅)から往復したときの難易度です。しかし、同じ木曽駒ヶ岳でも『木曽駒ヶ岳(アルプス山荘<上松A>)』は体力レベル5(一泊以上)、技術難易度 Cと段違いのグレードに分類されています。長野県側から山頂を目指すか? 岐阜県側か山頂を目指すか? 方角もルートも距離も全く異なるため、この2つを混同するのは初歩の初歩の誤りなのですが、登山口を把握していなければ勘違いも起こり得ます。同じ山頂を目指しても、どこから入山して、どこを通って、どこに下山するかで全く違った難しさになります。さらには、このグレーディングには季節や天候は考慮されていません。5月の木曽駒ヶ岳(千畳敷カール)は例年、残雪が残っており、山の斜面は数百メートルの氷の滑り台になっています。ピッケルを持ってアイゼンの刃を効かせながら登るコースです。一方で登山道から残雪が消える頃には地元小中学校の学校登山で登る比較的安全なコースです。コースの難易度を判断するのは、とても難しいです。
おすすめ山域
美ヶ原
名前はのんびりしていますが北八ヶ岳の北端、標高2000mの山頂台地です。
松本駅から車で1時間強。山頂付近には宿泊施設が3軒あり頂上(王ヶ頭)まで歩いて十数分の駐車場まで車で上がれます。難点は公共交通機関(直通バス)が運行されるのが6月以降という点です。王ヶ頭ホテルに宿泊すれば松本駅からホテルまでの送迎がありますが、さもなければ自家用車かレンタカーを借りて上がることになります。ちなみにこの美ヶ原、6月には麓の松本市 浅間温泉から山頂付近までロードバイクで駆け上がる『ツール・ド・美ヶ原』が開催されます。足に覚えがあるならば自転車で挑戦してください。ただそうなるとトレッキングではなく自転車激坂上りと趣旨が変わってきますが…
上高地
日本を代表する山岳リゾートです。5月だと登山道の脇に少し残雪があるかもしれませんが、遊歩道には雪は残っていません。大正池から河童橋まで梓川沿いの1時間ほどの林間散策コース。さらに時間と体力に余裕があれば明神池まで往復して2時間。休憩なしで3時間のコースです。登山道ではなく自然遊歩道として整備されているためスニーカーでも大丈夫です。松本駅から松本電鉄上高地線、バスを乗り継いで上高地バスターミナルまで片道1時間半。混雑する週末はバスの乗車に30分〜1時間と待つこともある(上高地発は予約制)ため、松本から往復すると1日がかりになります。ちなみに上高地は北アルプスの3000m級の山々の登山の起点にもなっています。5月の北アルプスの稜線は残雪期の白銀の世界です。ピッケル、アイゼン標準装備で、雪目防止のためにサングラスを忘れずに!と言った世界です。
乗鞍高原
グリーンシーズンの上高地はいわゆる観光地です。早朝に新宿から大型バスに詰め込まれてやってきて、河童橋周辺で1〜2時間散策して東京へとんぼ返りする弾丸ツアーも成立するため、自然をのんびりと楽しむ人ばかりではありません。5月はまだそうでもありませんが、夏休みの混雑時の河童橋周辺は京都嵐山の渡月橋レベルの激混みで橋の反対側へ渡ることも一苦労となります。ということで、ちょっと混雑から外れて自然の中を散策したいのであれば乗鞍高原がお勧めです。木道などスニーカーでも歩きやすい道が整えられています。松本電鉄上高地線の新島々駅までは上高地への経路と同じです。新島々駅から乗鞍高原観光センターまで1時間ほどです。善五郎の滝や牛留池などを上手に回ると楽しいトレッキングになると思います。コース設定に迷うところですが、体力に応じて、天候に応じて、短く歩くことも長く歩くこともできます。
ちなみに乗鞍高原の上、乗鞍岳(畳平)はまだ雪の中です。道路(乗鞍エコーライン)が全線開通するのは例年7月初旬です。
城山公園
いわゆる都市公園です。松本駅から車で10分程度。歩いても1時間はかからないと思います(知らんけど)。住宅地の中を歩きますが、映画『神様のカルテ』ほか松本市を舞台にした映画のロケ地に使われてきた閑静な住宅地なので街並みも素敵です。尾道を思い浮かべると少しだけ似ているかもしれません。ただし、それなりの激坂が続きます。「松本城の近くまで、こんな山が迫っているの?」と驚く人は過去のブラタモリで予習しておいてください。トレーニングで駆け上がる人も時々見かけるため不審者扱いされることはないと思います。城山の頂上から見下ろす松本城、安曇野の風景は絶景です。
登山アプリ
登山届が必要な山域に入山するときは紙の地図が必須ですが、スマホに入れる登山アプリの活用も選択肢に含めるべきです。ただし、事前にアプリをインストールしておくこと、そしてアプリに地図データをダウンロードしておくことが必要です。Google Map は携帯電話の圏外では使えませんし、もし地図が見えたとしても山の中ではほぼ役に立ちません。YAMAP や YamaReco などの登山アプリが参照する地形図はサイズが大きいため下界の高速回線網であらかじめダウンロードしておく必要があります。事前にダウンロードしておくことで圏外でも地図上で自分の位置を確認することができる可能性が高まります。私は早朝、自宅を出発する前に慌てて地図をダウンロードすることがありますが、自宅の高速Wi-Fi回線でももたつきます。それくらいに地図データサイズは大きいためお気をつけください。また、モバイルバッテリーの準備も忘れずに。せっかく携帯電話の電波が届いても、電池切れが心配で十分に活用できないのでは宝の持ち腐れてです。荷物になっても、イマドキのトレッキングではモバイルバッテリーは必須です。
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