パワポを変えれば日本が変わる
自己紹介
はじめまして。しらきです。パワポを作るのが好きすぎて「しらき@パワポ図解」というTwitterアカウント名で発信しはじめ、現在は24000人の方にフォローして頂くことができました。
私のアカウントではパワポをお洒落にするフリー素材の紹介や図解が人気なので、自分の事や考えについて語る機会があまりなかったのですが、フォロワーさんが増えてきたこともあり、ご挨拶も兼ねてお話してみようと思います。
私は、高知県高知市で生まれました。小学校時代は学校に行かずに家でずっと絵を描いているのが好きでした。大きくなってからも、ルールを守り、決められた時間に決められた場所に行くのが苦手で、中学・高校時代も遅刻や早退してばかりでした。
勉強するのは嫌いではなく特に美術と数学が得意だったので、美大と私立文系の大学で迷った結果、私立文系に決めて勉強し、東京の大学に合格することができました。憧れの東京で一人暮らしをはじめ、卒業後は公認会計士として監査法人で勤務するようになり、パワポを制作したのも監査法人での業務が最初でした。
パワポづくりにときめいた、監査法人時代
公認会計士の仕事は、大量の証拠書類から必要な情報を抜き出して、勘定科目ごとに監査調書にまとめることで、財務諸表が適正かどうかの判断をしていく「監査証明」が主な業務です。以前は勤務中にゴルフをしながら、ゆるやかに仕事している会計士もいたそうですが、私が会計士になってすぐリーマンショックがおこって金融庁の調査なども厳しくなり、日本経済の衰退とともに、真綿で首を絞めるように少しづつ激務になっていきました。
年次が上がるごとに、大量の仕事を短時間でこなすことが求められていき、この時代に私の情報処理能力は飛躍的にアップしたと思います。法律や監査基準に従っているかどうかのチェックにはあまり興味ありませんでしたが、監査調書を作成する作業自体が楽しくて順調にスキルアップした結果、法人で最大規模のチームに在籍することになりました。
私の担当は、このメガクライアントのグローバル監査の取りまとめでした。四半期ごとに監査を行う必要があるので、国内・国外の監査チームに向けたインストラクションを作成し、全てのチームから監査結果をもらってグローバルの意見を形成していきます。
毎日忙しく働くなかで特に楽しかったのが、世界中のチームから集めた情報をもとに表やグラフを作成し、最終的な意見を記載して、クライアントのトップに提出するパワポの監査報告書を作成することでした。
年間40億円の報酬をもらって実施する大規模な監査の結果をまとめた重要なパワポなので、外部のコンサルが決めた美しいデザインシステムに従って、一言一句間違いのないよう丁寧に作り込んでいく必要があるのですが、この作業を永遠にやっていたいと思うくらいハマりました。小さいころからクリエイターに憧れていながら、身近なロールモデルがおらず、美大への進学を断念したことを思い出したりもしました。
監査法人で勤務していた当時は、毎日朝9時から夜11時まで働くのがあたりまえで、食事とお風呂以外の時間は全て睡眠にあてていました。繁忙期は土日も出勤することも多かったのですが、たまの休日に美術館でモダンアートを見たり、雑誌を読んだりするのが一番の楽しみでした。
そんなある日、アメリカ駐在のための試験をうけないかという話をもらいます。そのころ出産適齢期を迎えており、妊活を考えていたのですが、なかなか病院に通う時間が取れず悩んでいました。海外転勤は学生時代からの夢のひとつでしたが、それよりも母親になりたいという気持ちが勝り、会社を退職して、実家の家業を継ぐことにしました。
経営者として気づいたプレゼン力の大切さ
私の父は食品製造業を経営しており、私が高知に帰る数年前からお正月に帰省するたびに「社長をやらんか」といわれるようになっていました。監査法人で働きながら家業の財務諸表をチェックし、土地や商品の資産性の有無や、部門ごとの損益などの数字を把握していたので勝算はありましたが、自分ひとりで会社経営することに不安もありました。
実際に高知で経営に携わり始めてからも、会社の細かい商流などについてよく分からないまま、東京から帰ってきた30代の娘が財務諸表だけを見て経営改善をしていく姿に不安を覚えたのか、気づいたら半数近くの従業員が会社を去っていました。
その際に気づいたのが、経営者として成功するためには独りで頑張るのではなく、信頼できる仲間を沢山作っていく必要があるということです。親の力だけで社長の座に座った私が、まわりの信頼を獲得していくために、プレゼン能力を磨いていく必要があると思うようになりました。
そのころは夜もなかなか眠れず、毎朝5時に起きて沢山のビジネス書を読み漁り、自分の会社に取り入れられるものは全て取り入れようと必死でした。沢山の失敗を繰り返しながら、従業員、クライアント、銀行の支店長の前で「どうか協力してほしい」とプレゼンを繰返し、最初に結果がでたのが従業員教育でした。
約100人いる従業員を本社に毎月集めて研修を行い、これから目指すべき理想の会社像や、あるべき従業員の姿について半日の講義を1年間続け、最初はほとんど居眠りしていた従業員が、少しづつ話を聞いてくれるようになりました。今では幹部が成長して、毎朝早朝勉強会を行い、私の代わりに研修をしてくれています。
次にうまくいったのが、資金調達です。当時は金融庁からのお達しで、事業承継がうまくいくようにと、後継者から不要な担保をとらない等の施策が進められていたタイミングでした。さらに、マイナス金利時代に突入していたこともあり、元公認会計士の肩書も手伝って、全ての借入金につけられていた抵当をひとつづつ外していき、最終的には無担保無保証、金利もかなり低く抑えることができました。
さらに、パワポでのプレゼンや動画を多用することで、新卒採用の合同説明会でも立ち見が出るほどの人数を集めて、優秀な人材を採用することができるようになりました。若くて新しい従業員が増え、活発にコミュニケーションをとりながら、みんなで利益をあげることで、社内の雰囲気も明るく前向きになっていきました。
経営者としての仕事もどんどん楽になり、新しい店舗のオープンや、海外展示会への出店など、新たなビジネスの展開をしていく余裕も生まれました。しかし、高知蔦屋書店に飲食の新店舗をオープンして2年目にコロナ禍に見舞われます。
最初は中国や都市部で起こった対岸の火事として、人口の少ない地方にはそれほど影響ないだろうと気にしていませんでしたが、発生から数か月たってもコロナの状況は収まらず、次第に本業への影響が大きくなり、半年後には売上・利益が激減していました。
会社の従業員も動揺しはじめ、不安になった従業員が「会社に出社できません」と言い始め、「そういえば自分には他にやりたいことがありました」と退職する人も出てきました。
それまで一緒に働く従業員の生活が少しでも良くなるように考えて、よい会社を創ることができていると自信を持ち始めていたのに、環境が大きく変わることで、これまでの努力が無駄になったような気がしてショックでした。
パワポ図解に救われる
コロナ禍のある日、たまたま入ったラーメン屋さんで、ある有名人を見かけました。私が高知に帰る前に高知に移住して「まだ東京で消耗してるの?」と、監査法人で泥のように働いていた我々をあざ笑うかのようなブログを書いて話題になっていた、イケハヤさんです。
そのあとから何となく、YouTubeでのまとめを見て、気になったビジネス書を買ってみたり、本を読んで気づいたことをTwitterで呟くようになりました。最初は「1いいね」つくだけで嬉しかったのですが、ビジネス書を読んで学んだことをパワポ図解にまとめて発信することで、「いいね」や「フォロワー」の数が増えていきました。
2000フォロワーまで増えた頃、パワポ図解のクオリティの高さに驚くコメントがもらえるようになりました。実はネット検索で見つけた海外のテンプレサイトを使用していたので、恥ずかしくて秘密にしたかったのですが、良心の呵責に耐え切れずパワポ制作で使用した素材を公開すると、かなりの反響がありました。
素材を公開するたびに「いいね」が沢山つき、最高で「13.7万いいね」「1000万インプレッション」のバズが生まれ、発信をはじめてから半年後にはフォロワーが1万人を超えていました。Twitterでずっと追いかけていたパワポインフルエンサーの方々と「Space」でお話したり、「プレゼン製作所」からの委託で一緒にお仕事する機会も頂き、気づいたら小さい頃に憧れていたクリエイターのお仕事ができる環境になっていました。
コロナ禍で多読したビジネス書の中に「ビジョナリーカンパニー2」という本があったのですが、スタートアップ企業の作り方を参考に、「楽しんで続けられるもの」「世の中のニーズがあるもの」「他の人より得意なもの」の3つを軸に情報発信を続けることで、自分が夢見ていた世界が現実のものになっているのを感じています。
デザイン思考で日本経済を復興する
パワポの発信やパワポ制作の仕事をしていて感じることは、プレゼンの良しあしをつくるのは情報処理能力が大きいということです。私のTwitterアカウントでは「おすすめのフリー素材」が人気ですが、実はそれを使いこなす前に「伝えたい事を整理整頓する」という情報の環境整備が必要です。
現在の日本社会では「加点主義」よりも「減点主義」がとられることが多いせいもあり、プレゼンを作る際も「情報をそぎ落とす」ことを恐れ、上司の顔色をうかがって「できるかぎりの情報を盛り込む」ために、かえって伝わりづらいプレゼンや資料が出来上がるという光景によく出会います。
私は、デザイン思考を持った会社員や教育者が増える事で、日本の経済や社会が良くなっていくと真面目に考えています。これからもパワポデザインの情報を発信することで、メタボになったパワポから不要な装飾を取り去り、伝えたいメッセージをわかりやすく伝えられる、プレゼン能力の高い日本人が増えていけばよいなと思っています。
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