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議会を追い出された「さいとう前知事」が勝った、兵庫県知事選挙

掲示板には過去最高7名の候補者のポスターが

衆議院総選挙の最中でも、兵庫県知事選挙については気になっていた。辞めろだとか、嘘つきとか、命を懸けた訴えだとか。ボンヤリ記事を読んでいただけでは全く分からなかった。理解できないことは、気持ちの上で意識がどんどん遠のいていく。ひとつの県の首長選挙が一体どうしたというのか。私の頭の中は?だらけでした。

その選挙の最終日、土曜日の朝、目が覚めたらSNSは知事選のコメントであふれていました。読み進むうちに兵庫県の有権者の盛り上がりが、ビシビシと伝わってきて気になって仕方がありません。

なんだろう、この盛り上がり

もやもやを解消すべく「何だか分からないけど、とりあえず、行ってみよう。」
PCとスマホを持って、私は来た新幹線に飛び乗って兵庫へ向かいました。

お弁当

新大阪止まりの新幹線だったので、先ずは、三ノ宮へ向かう途中に見つけられた「NHKから国民を守る党」の立花党首が演説するという会場へ向かいました。

立候補しているのに「私には投票しないで!」・・・え?

駅に着いた途端、聞き覚えのある演説の声が聞こえてきました。立花さん!
今年の都知事選挙で、掲示板をジャックしたやり方には舌を巻きました。選挙を学びつくし、選挙の在り方を逆手にも取り、表現の自由と思想良心の自由を謳歌しているとでも言いましょうか、あの立花さん。直接お会いすると、腰の低い丁寧な方なんですよね。

今回の選挙でも「自分はさいとうさんを応援するために立候補した」と。
え?どゆこと?

演説を聞いても分かるような分からないような。でも聴衆は盛り上がっています。すでにSNSで予習してきているのかな。答え合わせに来ているよう。

そうだ!そうだ!と言ったかと思うと、ドッと笑い声が起きます。何が起きているのか、やはりわかりません。でももう次へ移動しないと、見たかった候補者の演説が聞けません。兵庫県は広いー!急いで次の場所へ。

あ!立花さんも急いでる!@西宮市ガーデン

あ!ポスターのことももうひとつ。

これも法律上はOK

N国党のポスターは、上にもう一枚貼り付けていました。これはさいとう候補を応援するためのポスターでした。まるで、週刊誌の記事のよう。自分の姿の元のポスターの上に貼り付けているので、本当に捨て身の戦略?これを読んでさいとうさんに投票した方もいたでしょう。

候補者が見つけられる三ノ宮アーケード街へ

私は、どの候補者も最終日にはここに来るであろうという三ノ宮センター街へ向かいました。土曜の午後、それでなくても混みあっている繁華街。私は相当な方向音痴なのですが、選挙カーとSPを見つけるのは自信があります。さて、選挙カー、どこかなーと思って耳を澄ますと、見つけた!街宣車の音が聞こえる方向に向かって信号を渡り、角を曲がると、あ!いた!

あ!@三ノ宮センター街

演説は終わっていましたが、写真だけでもと、撮らせて頂きました。共産党の候補、おおさわ氏の街宣車でした。
さて、次はと見渡すと、選挙の時はここでというお決まりの場所に人がひしめいていました。私は、車道側から人垣の前に回り込んでスマホを構え、次の候補者の車を待ちました。与野党相乗りの、いなむら和美候補です。

ほどなくして、オレンジの看板の街宣車が向かってきました。車が見えた瞬間、歓声があがりました。「いなむらー!がんばれー!」
え?でもなんか変です。「いなむらさーーん!」の声に交じって
「帰れー!」「うそつき!」「帰れー!」
私のすぐ隣、最前列を陣取っていた女性の方々が罵声を浴びせています。2~30人はいたでしょうか。首長選挙で相手の演説会場の最前列で、反対側の支持者が敵である候補者に向かって怒鳴り続けるって、すごいエネルギー。動画を撮りながら、まじまじと見てしまいました。

いなむら和美候補の演説

まじめ、まっすぐという印象

いなむら候補の演説はというと、立派でした。話すスピード、声のトーン、パフォーマンス、どれを取っても落ち着いていて、聞きやすかったです。目の前の罵声にも、びくともしませんでした。普通、こんなにヤジが飛ばされていたら、ひるんで声も弱くなりがちなのですが、時折その罵声の方々に「なんのことですか?」などと聞き返し、考えを示しながらも演説を続けていました。かつて市長をされていただけあると思いました。

ただ、内容が良くわかりません。何を言いたいのか、どんな県政にしたいのか、「対話が大切」は繰り返し訴えているのですが、具体的な政策が全く見えてこないのです。そして、なぜ立候補したのかも、聞いていて納得はできませんでした。

安定感は抜群

候補者を見定める、演説のチェックポイント!

こんなとき、候補者が自分が求める政治家としてふさわしいかどうか、演説を聞いてサクッと見分ける方法をお伝えします。

先ず、演説を聞きにいきます。その時「お願い!私を説得して」と思いながら演説を聞きます。それで「なるほどねー!」「さすが!」と思わず手を打つことができたら、先ずはOK。その候補者は政治家として志のある方には違いないでしょう。

でも、いつまで聞いても説得させてもらえない、スッキリしない、何が言いたいのか分からない演説をするのは、ダメな政治家です。しっかり聞いているのに相手の話が分からないときは、大抵、相手が嘘を言っている時なのですが、政治家の場合、聞いても聞いても良くわからない演説は、中身がない政治家ということ。聞く側の理解力が足りないのではないのです。

いなむら候補の場合、演説自体はとても聞きやすくてプロの印象があるのですが、内容が伝わってきませんでした。なにかスッキリしないのです。ということは、言い難い事実やご自身の心情で伝えたくないことがあるのではないか、と、私は思いました。22人もの首長が揃って応援しているのだからよほど伝えたい政策があるのだと期待していたので、残念でした。

マイク納めのいなむら陣営

さいとう元知事の演説

4方向へむけて深々とお辞儀する斎藤候補


「キャーーーっ!」「さいとうさーーん!」「さいとうさーーーん!!」
もの凄い歓声の中、さいとう候補の車が入ってきました。ゆっくり車から降り、車上へあがると、4方向に丁寧にゆっくりとお辞儀。周囲の雰囲気と異なる、独特の空気感を持つ方だというのが私の第一印象になりました。なぜって、本当にゆーっくりとお辞儀をするのですよ。率直に言うと、周りの空気を読めない、もしくは読めてもそこに合わせることができないタイプの方なのだと思いました。
聞きたかった斎藤候補。演説はどうだったかというと、話は丁寧です。

「ちょうど1カ月前、私はここの横の場所で、たった一人で演説を始めました。誰もいませんでした。今こんなにたくさんの人がいて、本当にありがとうございます」お辞儀。お辞儀。お辞儀。お辞儀。

演説の内容は、このことを言葉を変えて言い続けているだけで、議会について、百条委員会について、県議会議員とのやりとりについて、など、私が聞きたかったことは何も話されませんでした。そして、「改革を進めたい」とは仰るのですが、何をどう進めるのかが聞けませんでした。ただ、感謝していることを伝えるのみ。こちらもちょっと残念。でも「さいとうさん」を応援している方々に不満はなさそうでした。もう十分聞いていらしたのかもしれないですね。同じ感覚は都知事選の際の石丸候補のときも感じたことがあります。話している内容を聞きに来ているのではなく、SNS等で何度も見ているその姿を直接見に来た、だから、大衆の多さや、その賑わい、現場間を感じるライブ感だけで満足しているよう。そう、推し活、フェスの雰囲気

うしろのアーケードの歩道橋(?)が落ちそうな程の人だかりでした

さいとう候補とブルー色が被った清水候補

清水候補が来た!

この方の演説も聞きたかった。清水貴之候補。兵庫で参議院議員を務めた経験もあり、県政には一家言ある方でしょうし、そして元アナウンサーですから演説は上手いはず!そう思っていたのですが、タイミングを掴めず選挙カーをみただけでした。結果は残念でしたが、ポスターは清水候補の方が良かったですよね。さいとう候補の隣で際立ってました。残念ながら、色被りなのは苦しかった。

ポスターは浮動票獲得には重要なもの

さいとう元知事が当選

8:00

投票箱が閉まる8時ちょうどに「当確」がでたのが、さいとう候補でした。もっとも慎重なNHKは3時間遅れての当確でしたが。支持者の喜びようは大変なものでした。ここはテレビで見ていましたが、熱狂は手に取るように伝わってきました。

ただ、これからの県議会はどうなるのでしょう。不信任決議で全会一致だったのをうけ、辞職を選択したことからの、再選挙。
県議会議員は全てがさいとう知事にNOを突き付けたわけですから、これからどう向き合っていくのでしょう。直近の民意を県議も無視するわけにはいきませんし、それぞれの支持者からの意見も多く寄せられているでしょうし。

そして百条委員会は、どう機能して何を説明するのでしょう。ここは確実に摘めていかなければなりません。百条委員会は罰則を伴う厳しい判断をすることができるだけの権威を与えられていますから、そこに説明責任があるのは当然です。選挙戦中も、その内容について、疑問や隠された事実があるようだとか、録音音声データの流出だとか、大騒ぎだったので。

「選挙は目的ではなくて手段。終わりではなくて始まり。」

これは、いなむら和美候補の演説での言葉です。全くその通りです。はじめのころの「さいとう知事は非道な極悪人」から「さいとうさんごめんなさい」まで、SNS自体が情勢を大きく変えた選挙でした。
選挙期間中のマスメディアの選挙報道は、中立性を理由とした消極的な姿勢が裏目にでて、「知りたい」と思う有権者の心をがっちりとつかんだのが、SNS。真偽不明の大海原であるネットの世界に、有権者は答えを求めたのが今回の兵庫県知事選挙の熱狂でした。ネット対マスメディア。いつしか、「誰を選ぶか」の選挙から、「何を信じるか」の選挙に変容していきました。
しかし、各候補者の主張は、100%真実を伝えたのかどうかはまだわかりません。何が曲がって伝わり、広がったのか。責任はどこにあるのか。

今回のさいとう知事の復活は、プロレスのたとえでいえば、リングの外に放り投げられたチャンピオンが、県民の後押しでふたたびリングに戻っただけ。だれが、善人で悪人かを選挙は決めるものではありません。
藪の中は深くて見えてきませんから、ミステリーは第2章に入ります。兵庫県民ではないけれど、しつこく、見続けていきたいと思います。

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