心わしづかみな演説と、票が減る演説
選挙の時は、政治家の演説が聞き放題です。演説フェチな私は、溢れるワクワクを引っ提げて、聞きたい候補者、楽しみにしていた応援演説の弁士など、政治家の演説を聞きに走ります。飛行機と電車とレンタカー、時にはフェリーにも乗って、日本のどこへでも追いかけ、選挙という、令和の真剣勝負を見に行きます。推し活=推し勝となればいいと思いながら、向かう先で、好きな演説を見つけた時は思わず、うるっときます。でも、聞きたかった政治家の演説なのに、聞かなきゃよかったと思うこともあります。何がそうさせるのか考えてみました。
まず、演説には上手い下手があります。下手は勉強してトレーニングしたらいくらでも上手くなります。でも、どんなに上手でも、嫌いな演説もあります。あー、こんな人だったんだ。とがっかりする演説も。
聞きたくなくても聞いちゃう演説。小川淳也
さて、追いかけたわけではないのですが、二日続けて会った小川淳也立憲民主党幹事長の演説について書かずにはいられません。小川淳也氏はご自身も香川1区の候補者ですが、地元を離れ、「いろいろ考えるところもあるけれど、幹事長としての職責を」と言い切り、応援演説に東奔西走しています。過去に「なぜ君は総理大臣になれないのか」というドキュメント映画をご覧になった方も多いかと思います。
正しいことを正しいと言い切る演説の秀才
小川淳也幹事長の、演説にこめる熱とそれを伝えるパフォーマンスについて、連続して聞いたからこそ気がついたポイントがありました。その点についてと、選挙区の候補者について、辛口チェックも入れました。
千葉県はかつて民主王国といわれた野党の牙城でした。野田総理からの自公政権へ交代後、市川市長のスキャンダル、衆議院議員の逮捕劇などで、有権者はがっかりさせられる出来事が続いていました。その千葉県第5区で立候補した銀行マン16年の後、県議会議員を4期15年務めた矢崎けんたろう候補。そしてその応援に来ていたのが小川淳也幹事長でした。
浦安駅前での演説。矢崎候補は、県議を辞して国政に転じ、今回が3度目の挑戦。第一印象は地味、だけど信用できるかも、という心証を与える人物でした。写真からも見てとれるところがあると思います。
おまちかね!小川淳也幹事長が登壇
小川淳也氏が登壇すると、一瞬で周りがにぎやかな雰囲気になります。単に「華があるから」ではなく、私は、トレーニングの賜物なのだと、今回改めて確信しました。
まず、スタイルが良いのは「体質かな」と思う方もいらっしゃると思いますが、ここを見てください。立ち方。下の写真も含め観察してみると、
演説内容の聞きやすさ理解しやすさも当然ですが、声の出し方、パフォーマンス、どれをとっても、演説を研究して体得されたものとお見受けしました。ポイントは、体幹です。何をしても、足元は微塵もふらつきません。
彼の演説に凄みが表現できる理由は、この体幹がしっかりしていることに尽きます。ぶれない芯の通った身体が表現する「信頼感」「安定感」という無言のメッセージが、信用を生むのです。今回、小川氏の熱弁の立ち姿を見て思い出したことがあります。
1年ほど前のことです。私が、ランチを終えて赤坂を歩いている時に、小走りの小川淳也氏とすれ違ったことがありました。「あ!小川さん!」と思わず声をかけましたら、真っ赤な顔のまま「あー!ごめんなさい!今トレーニングで走っていて!こんな汗だらけでごめんなさい!」と。見ると、確かにTシャツにトレーニングパンツ姿でした。
そうです。小川淳也氏はトレーニングを日常としているのです。あのスリムなスタイルは努力で獲得しているのです。ですから、体幹も意図的に鍛えていらっしゃるのでしょう。演説には、パフォーマンスが不可欠です。腕を大きく振りかぶったり、遠くに見える支持者に手を振ったり、体幹が弱い人はそれだけで足元がグラついてしまいます。演説の内容もさることながら、パフォーマンスも、相当なトレーニングで積み上げているのだと確信しました。
だから、勢いだけでがなり立て、準備もトレーニングもしていない候補者が彼に適うわけがありません。この人に勝ちたいなら、この人以上のことをしなければならないのは、当たり前です。
きたるべき戦いへの準備を怠らない、ひたむきな向上心を体現する姿が、なぜ彼が前回悲願の香川1区で勝つことができたのかを教えてくれた気がします。
選挙区での勝利
ご存じの方には今更ながらではありますが、小川淳也氏が従来戦ってきた香川1区には、自民党のめっちゃ強い政治家がいました。現在もいます。平井卓也氏です。彼は、地元のテレビと新聞の会社を経営する一族の一員です。何があっても有利に主張できるメディア持っています。そこに挑む小川淳也氏にとって地元メディアが不利に働くのも、自然のこと。でも、小川氏はその強敵を恨むでもなく、恨めしがるでもなく、罵るでもなく、ただただ、己の努力不足を恥じ、全て自分の力の足りなさと謝りながら、小選挙区で勝てなかった現実を支援者に詫び続けてきた。その彼が前回の衆議院議員選挙で、初めて小選挙区の勝利を得たのです。選挙戦の最終日、駅前には、小川淳也をひと目見ようと全国から集まったファンが鈴なりに集まっていた光景は感動を誘うものがありました。
と言いつつ、私は特に彼のファンというわけではありません。でも、挑戦者として、恨み言も言わず、全て自責にして果敢に挑み続ける姿に、心から頭が下がる思いで見ていました。全てを自責にするからこそ得られる力なのだと思います。
辛口チェック☑
さて、今回の候補者に、頼まれてもいないコンサルティングをするとしたら、の辛口チェックをしてみましょう。下の写真を見て、候補者と小川淳也氏を見比べてみてください。どんな印象でしょう。一瞬で感じたことが大切なのですが、私はパッと見た時に、候補者の矢崎さんは疲れているように見えました。腰が落ちると必然的に顎が出てしまうので、実年齢より老けても見えます。実際お話を聞いてみると、とても元気なご様子だったので、これは見た目だけのことだったと直ぐに気がついたのですが、通行人は「疲れているように見える候補者」という心証を持って帰ってしまう危険があるのです。
それと比べて隣の小川氏は、パリッと見えます。立ち姿に芯があるのは鍛えられた強い体幹があるからです。顎は床から垂直。完璧ですね。
実際にお話ししてみた矢崎候補は、優しくて芯の強い印象の方でした。だったら、それをどうやって外側に表現するのかを考えて工夫するべきです。見た目を変える。そのために、外観を整えるのは、とてもコスパの良い選挙活動だと私は思っています。
ポスターだけで投票先を決める有権者もたくさんいる
千葉県5区の掲示板を見ると、全部で6人の候補者が立っていました。ポスターだけを見てだれに投票するかを決める有権者もたくさんいます。私もこの仕事につく前はそうでした。だから、ポスターはとても大切なのです。
この掲示板を見て、一番名前が目立っていたのは「えり」でした。空白が多いと名前が際立ちますね。色調もヨーロッパ調でオシャレです。この日はもう20時をまわっていましたので、一軒だけ事務所を探して訪問しようと思い、こちらの「えりアルフィヤ」事務所を訪ねてみることにしました。
駅の近くに見つかったので、早速訪問することに。でも、あれ?選挙事務所の看板が見当たりません。選挙事務所には、大きな看板を2枚設置することができます。それが見えず、代わりにこれだけのポスターが張り巡らされていました。どうしてなのだろうと思いながら、事務所の中へ。こんばんは!
ガラス扉を入って中の方に伺ってみましたら、選挙看板がないのは、選挙事務所ではないからとのこと。党の県連支部の事務所とのことでした。
となりには駐車場があり、選挙カーが停めてありました。候補者にも会えず、残念でしたが、また機会があったらぜひ演説を聞いてみたいと思っています。その時はまたここに書きますね。
さて、選挙はいよいよ終盤戦。言ってきたのに書いていない選挙区もたくさんあります。次はどこを書きましょう。辛口チェックもまだまだ続きます。