見出し画像

Where Are You?

2005年3月5日の日記。
米国ヴァージニア州の片隅にある日系企業の現地法人で、日本人駐在員である「ぼす」の元、秘書兼通訳兼「やっかいごと よろず引き受け業」的な何でも屋さんとしてお仕事をしていた頃のお話。
─────────

素直に信じたワタシがいけなかったのである。

ぽんこつくん4

『「ぽんこつ」君置き去り事件』もAAAの活躍でいっきに解決に向かうものだと信じていたワタシが甘かった。(くわしくは こちら から)

How could I be so naive???

(註:この「naive」という単語、カタカナ英語での「ナイーブ」だと「傷つきやすい」だとか「無垢な」って感じでいい意味にも取られがちだけれど、英語ではかなりネガティブなニュアンスを持つコトバ。逆立ちしてもけっして褒めコトバにはならないことに注意。意味としては「世間知らず」「愚直な」「認識の甘い」「だまされやすい」「経験の足りない」等々。要は「甘ちゃん」ってことですな。

とりあえずAAAから連絡が入るまでオフィスで仕事をしながら待機していた訳だが、なんとなく胸騒ぎがした。このままおとなしく待っていない方がいいような気がしたのである。

オペレータのおねぇさんと電話で話してから既に45分が経過している。しかし今すぐ会社を出れば、おねぇさんの言っていた「60ないし95分後」には「ぽんこつ」君の元に戻れるはず。普段は重たい腰がなかなか上がらないコトの多いワタシだが、こうと決めたらあとは早い。「クミってさぁ、本能のままに生きてるよなー」って呆れ顔でつぶやいていたかつての恋人の顔が一瞬思い浮かんだような気もしたが、たぶん、気のせい。「説明のつかない胸騒ぎ」は、信じた方がいい。

車を出してくれることになっていた会社のナカガワ氏を館内放送で呼び出し早速駐車場で落ち合うことに。雪の勢いは相変わらず弱まることを知らず、ワイパーなしではとても走れない状況だ。

「まさか3月を目前にしてこんな風に雪が降るなんて思ってませんでしたよーびっくりですよー」「そうっスねクミさん、今年の冬は結構あったかかったですからね」「なんかイタチの最後っ屁って感じですよねー」「......クミさん、女の人はそういうコトバ使わないほうがいいですよ」

そんな会話を交わしつつ現場に向かうワタシ達。幹線道路はだいぶ除雪が入っていて、「ぽんこつ」君のような普通乗用車も結構走っている。このくらいだったら「ぽんこつ」君もハマらずに済んだんだろうけど...。まぁ、今更そんなコトを言ってみても始まらない。後悔、先に立たず。こぼれたミルク、瓶に戻らず。日本でひっくり返すのは水の入ったお盆か......そんな風に考えていた時。突然ポケットの中の携帯がぶるぶると震えだしたのである。

緊急連絡用なので、普段かかってくるコトはめったにないワタシの携帯電話。番号を知っている人の数は、おそらく片手でじゅうぶん数えられるほど。だから、携帯がいきなり大音量とともに震え出すという現象に慣れていない。えらくびっくりした。

オタオタしながら電話に出たのだが、そんなワタシを更にあわてさせたAAAのおねぇさん。ワタシが名乗った途端、彼女が言い放ったコトバは

"Where are you?"

へ?

ど、どこって現場に向かっているところである。
面食らっているワタシに更に畳み掛けるようにおねぇさんは続ける。

"The driver is at the scene right now, but he says neither you or your vehicle can be found.  Where are you?"
(現在現場におりますわたくし共の人間からの報告によりますと、お客様もお客様のお車も見当たらないとのことですが、いったいぜんたい今どちらにいらっしゃるのですか?)

ちょちょちょちょちょっと待った──────っ!!

もう現場にいるってどういうこと?
到着前に電話してくれる筈じゃぁなかった??
っていうか車が見当たらないってどういうこと???

えぇ─────────────────っ!?

つづく
(ゴメンナサイ。まだ続きます......)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?