あなたの心象風景が見たい〜「ここから何か生まれるかも」会議 #1〜
いい小説を書く人は、どんな人か?
小説は、どのように生まれるのか?
そして、これからの作家の定義は何か?
もう一ヶ月も前になるけど、カフェマメヒコのオーナー・井川啓央さんと、テレビプロデューサーの角田陽一郎さん、コルクの佐渡島庸平さんの公開会議、「ここから何か生まれるかも」会議#1に、コルクラボの繋がりで参加してきました。
出版とは違う世界にいても、物語が好き、人の表現するものが好き、そして、今あるものの新しい仕組みを作ることが好きという私にはワクワクさせられっぱなしの会議だったので、レポートというよりは、私のアンテナに引っかかったことを書いていきたいと思います!!
①「小説をアップデートしたい」
これは、クリエイターのマネジメント会社である、コルクの代表であり、様々な作家さんと関わっている佐渡島さんの言葉です。
作家って何か?今まで、それは「先生」と呼ばれる人でした。でも今は、「先生」でも小説だけでは食べていけない。佐渡島さんは、新しい作家は、以下のような人だと言います。
・ツイッターの140文字だけで、人を感動させる人のこと
・無料で書いた文章で多くのファンを獲得する人のこと
作品を発表するという段階では、収入は発生していないんですね。その代わり、その作家が何かをしたいと思ったときに、無料の文章で付いてくれたファンの人がカンパをしてくれる。その収入で成り立つのが新たな作家である…と。例えばファンが1000人いて、その1000人が1000円ずつカンパしたら、100万円になる。これって結構な収入ですよね。
ということで、そんな作家を作りたい、その第一号を井川さんにしたいと始まったプロジェクトなんだそう。
ちなみにこのイベントは、本当に「公開会議」。井川さんが実際に書いてくれた出来立てホヤホヤの小説を読ませてもらい、編集者である佐渡島さんの感想や指摘をその場で聞ける、というのがすごく貴重な体験でした。編集者って、すごい視点で物語を読んでいるんですね。
でも、それを聞くだけではなく、その場にいた私たちのアクションからも、井川さんのリアクションを引き起こすことが(おそらく)目的。そんな風に、小説ができていく様子を間近で見ることができ、なおかつ参加できるということに、とてつもなく心踊った時間でした。
②「映像も、カフェも、表現したいことは同じ」
カフェマメヒコのオーナー、井川さんは、もともとテレビのディレクターでした。それがなぜカフェを始めたか、それについては、「テレビでもカフェでも、やっていることはそんなに変わらない」からだと言います。
カフェマメヒコは、井川さんがとことんこだわって世界観を作ったカフェ。
例えばコーヒーカップのフチの厚さ、例えばお店に置いてあるテーブルの木の種類…そんな一つ一つの井川さんのこだわりを、かつてはテレビ番組で表現しようとしていたけれど、それを今はカフェで表現しているのだそう。そして今回は、その表現が小説になる…と。
最近、伝えたいことの表現の仕方が、多様になってきたなと感じることが多くあって、例えば、北欧、暮らしの道具店を運営しているクラシコムは、今年4月、短編ドラマを発表しました。これも、ブランドが提供しようとしている世界観や価値を、これまでの「商品」ではなく、「映像」という方法を使って表現しているんですね。
ずっと映像を制作していた私は、実はこの感覚をわかりたいのに腹落ちせず、もどかしく思っています。というか、自分に伝えたいことがないからなのかなとも思うのですが、井川さんのこの感覚は、お話を聞きながら吸収したいなと思いました。
③「井川さんの心象風景が見たい」
では、どうして井川さんに小説を書いてほしいのか?
そもそも、優れた作家とはどんな人か…私は、文章表現が上手な人だと思っていました。しかし、佐渡島さんは次のように言います。
「文章の書き方は、教えればいい」
つまり、上手な文章が書けるかどうかは、そんなに問題じゃないのだと。それよりも、その人の「心象風景」が見たいと思った人に小説を書いて欲しいと思うのだと。つまり、佐渡島さんに魅力的に映るのは、技術じゃなく、人間性なんですね。
小説というのは、どうしてもその人の内面が色濃く出てしまうもの。だからこそ、作者の人間性が作品に何よりも影響する。そして、そんな佐渡島さんが小説を読みたいと思ったのが井川さんだった…と。
なんだか、私の中での「小説を書く」ということへの認識が、グルンと変化したように感じました。作家が本当に伝えたいことは何なのか、それを過不足なく伝える表現や、エピソードは何なのか?それを突き詰めていく作業が編集ということ?? でも、一体どうやって??
これは、もう少し、編集の現場を目撃して、体感していきたいなと思います。
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私は、物語が好きです。多分、そこに様々な人の心が溢れているから。今回、その思いが一層強くなりました。物語は、作者のたましいの一部かもしれないし、分身かもしれない。見えない心を形にする手段かもしれないし、それ以外かもしれない。
もっともっと物語についてわかりたい。
そう思った公開会議でした。
第2回もやるよ!!(宣伝みたいだけど…)