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搾取と投資は紙一重~支援者の役割~

外国人受け入れの背景と現実

日本が外国人を受け入れる背景には、明確な経済的および社会的な理由があります。日本は少子高齢化に直面し、労働力不足を補うために外国人を積極的に受け入れる政策を進めています。つまり、政府や企業は個人の人柄や夢に注目しているわけではなく、「数字」や「実績」を重視しているのが現状です。これは企業だけでなく、日本語学校も全く同じ構造です。

しかし、これは一見冷たく感じられるかもしれませんが、外国人にとってはキャリアを築くための大きなチャンスでもあります。日本で働き、学ぶことで新しいスキルや経験を得られるだけでなく、国際的なキャリアを広げる可能性が生まれるからです。


投資と搾取の紙一重の違い

外国人が日本での留学または就労を選択するとき、日本語学校への学費、生活費、さらには現地での活動費など、彼らが負担するコストは非常に高額です。これは本人とその家族が生活を犠牲にするくらいの大きな負担となります。しかし、この負担が「搾取」となるか、「成長の機会」となるかは、臨んだ結果が得られるかどうか次第です。

例えば、日本語学校に2年間通い、N1資格を取得し、良い大学に進学して就職できれば、それは価値ある「投資」となります。しかし、学費を支払っても日本語が十分に上達せず、希望する進学や就職が叶わなければ、それは「搾取」と感じられるでしょう。この違いを決定づけるのは、実は「個人の考え方・捉え方」です。さらに言うと、学校の制度ではなく、教師の意識や支援の姿勢なのです。

教師の役割と影響力

どんなに設備が整っていない日本語学校でも、教師が生徒一人ひとりに向き合い、的確な指導を行えば、成果を上げることができます。私自身、日本語学校で働いていた際に、様々なクラスを視察してこのことを実感しました。厳しい環境の中でも、教師の理念や指導力次第で生徒の未来が大きく変わるのです

また、キャリア支援の分野でも同様のことが言えます。技能実習生の多くは、借金を抱えて日本に来ています。もし彼らが3年間、仕送りだけに追われる日々を送れば、それは搾取と感じられるでしょう。しかし、支援者が将来を見据えた計画作りを手伝い、日本語学習やスキルアップを支援すれば、その経験は将来のキャリアにつながる価値ある投資となるのです。

自分自身留学経験が教えてくれたこと

私自身、24年前にイギリスの大学院に留学しました。当時、親や金融公庫から多額の借金をしての挑戦でした。当時、イギリスの大学は現地学生には授業料が無料だったため、留学生から学費を徴収することで運営を支えていました。正直に言えば、当時の私の英語力や社会経験では、その大学に入学できるレベルではありませんでした。しかし、その時代の社会状況が私にチャンスを与えてくれました。

留学中、授業の質やサポート体制に満足できない部分もありましたが、修士論文のスーパーバイザーとの出会いや励まし、大学の英語教師からのアドバイスに救われました。スーパーバイザーのおかげで自分が納得できる修論が書けたことは自信になりました。彼らの支援があったからこそ、私の留学経験は単なる「搾取」ではなく、有意義な「投資」へと変わったのです。そこで感じたのは、大学や職場は単なる「機会」に過ぎない。それをどう「利用」していくか考えるのは自分で、それには間違いなく、信頼できる”個人”のサポートが必要ということでした。

搾取を感じさせない支援の重要性

結論を言うと、教育者やキャリア支援者の最大の役割は、外国人学生や労働者に「搾取されている」と1ミリも感じさせないことです。良い授業を受けている時、希望の進路に進んだとき、一歩一歩前に向かって進んでいると感じる時、「自分の選んだ道は間違ってなかった」と思えるようになります。

そのためには、まず支援者自身が政府や企業の目的を正しく理解し、それに納得した上で自分の役割を全うする必要があります。学生や労働者を守るために、良質な授業や支援を提供することが求められるのです。

支援者としての使命

以前、私が日本語学校で働いていた時の主任の言葉が、私の支援者としての姿勢を決定づけました。その言葉は、「学生を搾取から守るのが私たちの仕事だ」というものでした。その時は「搾取」を”権力者がお金や労働力を弱者から奪う”という狭い意味で考えていましたが、今は違うとわかります。「搾取」は本人が希望を失ったときの、後ろ向きの心を表した言葉なのです。つまり、「搾取」という言葉が存在しない環境を作り出すことは可能なのです。この理念を基に、私は現在も外国人学生や労働者をサポートする活動を続けています。

彼らは過去の自分自身のような存在です。不安や迷いを感じる彼らに対し、希望と明るい未来を示すことが私たち支援者の使命です。これからも、彼らが前向きに歩んでいけるような支援を提供していきたいと考えています。

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