
ステレオタイプを捨てる!認知的複雑性とは
今後、外国人の移民や生活者が増える中で、日本人がどのように反応するかについて少し心配しています。私は長年、日本語学校で働いており、外国人一人一人が異なる存在であることはすでに当たり前だと感じています。しかし、私の知り合いと話していると、未だに多くの人が「外国人」と一括りにしてしまうことに気づかされます。この感覚は理解できますが、個々の外国人が持つ背景や文化の違いを見逃すことの重要性にも気づいています。
ステレオタイプ化の問題
私自身も25歳で初めて留学をした際、アジア諸国の違いについて深く理解していなかったことを恥ずかしく思っています。留学中にアジア人留学生と交流することで、ようやくその違いに興味を持ち、実際に触れることで理解が深まりました。この経験を通じて、外国人を一括りにすることの危険性を感じるようになりました。しかし、どのようにしてこの「ステレオタイプ化」を乗り越えていくか、という問題に直面しました。
認知的複雑性という考え方
この問題に関してヒントとなったのが、「認知的複雑性」という概念でした。『異文化トレーニング』という本によると、認知的複雑性とは、対象物を認識するために使用するカテゴリーの数を意味します。簡単に言えば、物事をどれだけ多くの視点から捉えるかということです。
例えば、ある外国人を見たときに、ただ「外国人」と一括りにするのではなく、その人を様々なカテゴリーで分析してみることが大切だというわけです。これは、物事を多面的に捉えるための方法です。
カテゴリーを増やす観察

例えば、町で外国人観光客を見かけたとき、「あ、外国人(欧米人)の女性だな」と思うかもしれません。この時、使われるカテゴリーは「民族カテゴリー」や「性別カテゴリー」など、限られたものです。しかし、その人の年齢、職業、服装、持ち物など、さらに詳細なカテゴリーに注目することで、その人をもっと深く理解することができます。
それでは、以下の観点から左の女性に注目して、観察してみましょう。
・年齢→20歳くらい
・職業→何だろう?アクセサリーデザイナーかな?
・性別→女性
・背の高さ→そんなに高くはなさそう
・髪の色→金髪ではないけど明るい茶色
・服装→シンプルでかわいい服を着ている。メイクも服に合っている
・持ち物→リュックを背負っている
今度は右の女性で同じように考えてみましょう。どうでしょうか。同じ結果になりましたか?もちろん共通点もあるかもしれませんが、一つ一つのカテゴリーで考えると、違いが出てくることはわかります。
このように、観察するカテゴリーを増やすことで、その人の特性をより正確に捉えることができます。
新たな視点を持つことの重要性
例えば、就職の面接や技能実習生の研修など、同じような外見や属性を持つ人々と接する場合、より深いカテゴリーを使ってその人を観察してみることが効果的です。例えば、「気遣いがあるか」「反応が良いか」「整理が上手か」「正直かどうか」など、さらに多様なカテゴリーを使うことで、その人の本質が見えてきます。このようにして、単に「外国人」「日本人」といった大きな枠にとらわれることなく、その人個人としての特徴を理解することができるのです。
訓練を通じて認知的複雑性を身につける
認知的複雑性は訓練によって身につけられると言われています。幼少期から多様な価値観や背景を持つ人々と接し、互いに違いを尊重する姿勢を育むことで、自然と多様性を理解し、身近に感じられるようになるのです。こうした訓練は、異文化理解を深めるための強力な武器となります。
結論
私たちが「外国人」と一括りにするのではなく、個々の背景や文化の違いに目を向け、認知的複雑性を活かして観察することは、異文化理解を深めるために欠かせません。多様なカテゴリーを使って他者を理解することで、ステレオタイプにとらわれず、より豊かな交流が生まれることでしょう。今後、社会がますます多文化化していく中で、この認知的複雑性を意識的に高めていくことが、私たちの理解を深め、より良い社会づくりに貢献するのだと思います。