傾聴と情報提供のバランス~「教える」のではなく「教えてもらう」~
日本人と外国籍の方のクライアントの違い
先日、キャリアコンサルタントのための英語ロールプレイ勉強会を実施したのですが、振り返りの時間に参加者から「友好的な関係を築きながら、ビザ(在留資格)のような”堅い”話をするのは難しいですね」という意見が出ました。確かに、それまでフレンドリーに話していたのが一変して急に堅い話になってしまうのは少し不自然な状況ですね。しかし、それの情報がないと前にすすめないという場合も多くあります。
このように、カウンセリングの現場において、日本人クライアントと外国人クライアントの大きな違いの一つに「情報量の違い」があります。日本人クライアントは、社会の仕組みや文化、仕事の探し方など、基本的な情報を既に持っています。一方で、外国籍の方は、こうした基本的な情報すら持っていない場合が多いです。そのため、カウンセリングの際には、単に話を傾聴するだけでなく、適度に情報を提供する必要があります。これは非常に重要であり、同時に難しい点でもあります。
外国籍クライアントへの情報提供の重要性
例えば、ビザの問題は外国籍のクライアントにとって非常に大きな課題です。日本で働くためには適切なビザが必要ですが、その取得方法や条件は非常に複雑です。このような情報は日本人にとってももちろん難しく、専門家レベルの話なのですが、外国籍の方にとっては未知の領域です。カウンセリングの場でビザに関する基本的な情報を提供することで、クライアントが自分の状況を正しく理解し、適切な行動を取ることができるようになります。
また、仕事の探し方についても同様です。日本の就職活動の方法や文化は、他の国と大きく異なります。外国籍のクライアントは、日本の履歴書の書き方や面接のマナー、求人情報の探し方などについて全く知らないことがあります。カウンセリングの中でこれらの基本的な情報を提供し、具体的なアドバイスを行うことで、クライアントが効果的に仕事を探す手助けをすることができます。
カウンセラーの役割と情報提供の際の態度
このように、外国籍のクライアントに対しては、単なる傾聴だけでは不十分です。適切なタイミングで必要な情報を提供し、クライアントが直面する課題を理解しやすくすることがカウンセラーの重要な役割です。しかし、情報提供には注意が必要です。あまりにも一方的に情報を提供しすぎると、クライアントが自分の考えを整理する時間を奪ってしまう可能性があります。情報提供と傾聴のバランスを取ることが求められます。
カウンセリングの際には、クライアントの背景や状況を理解し、適切な情報を選んで提供することが大切です。例えば、ビザに関する基本的な情報を提供する際には、クライアントがどのようなビザを持っているのか、どのような仕事を希望しているのかを把握することが必要です。また、日本の就職活動についてアドバイスをする際には、クライアントの国での就職活動の経験や文化を理解し、それに合わせたアドバイスを行うことが重要です。
つまり。カウンセラーに必要な態度は、「教える」のではなく「教えてもらう」、そして「相談者に考えてもらう」ことです。これは実は傾聴の基本と大きく外れてはいません。カウンセラーが「相手が知らないから教えてあげなくちゃ」という態度では、相談者はアドバイスを受け取ることができません。相手の話を受け取る心の準備を作るのも、カウンセラーの役割なのです。
まとめ
外国籍のクライアントに対するカウンセリングでは、日本人クライアントとの違いを理解し、適切な情報提供を行うことが重要です。情報量の違いから生じる課題に対応するためには、ビザの取得方法や日本の就活の文化、履歴書の書き方など、基本的な情報を適切なタイミングで提供しなければなりません。ただし、一方的な情報提供は避け、クライアントの背景や状況に応じたアプローチを心掛けることが求められます。カウンセリングは単なる指導ではなく、クライアントが自分で考え、適切な行動を取るための支援であることを忘れずに、バランスの取れたコミュニケーションを心がけていきたいですね。