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「強み」とはスキルだけではない
求職者を支援していると、よく耳にするのが「自分には強みがない」「語学や資格がないからアピールできない」という声です。しかし、強みとは語学力や資格といったスキルだけではありません。母語、性格、出身地、住んだことのある場所、趣味――一見当たり前に見えるものも、その仕事において求められているならば、十分な強みになりうるのです。支援者としては、この「当たり前の中にある強み」を引き出す視点を持つことが求められます。
1. 「当たり前」の価値に気づかせる
求職者自身は、自分がすでに持っているものを「当たり前」と捉え、その価値に気づいていないことがよくあります。例えば、母語がベトナム語であることや、地方出身であること、趣味で続けているボランティア活動やスポーツなども、企業の求める条件やニーズに合致すれば大きな強みになります。「地域に根ざした人材が欲しい」「異文化コミュニケーションが取れる人が欲しい」といった企業側の視点と紐づけることで、求職者にとって「強みを発見する体験」を提供することができます。
2. 募集要項を「多角的」に読み解く
企業の募集要項には、明確にスキルや経験が求められている項目もありますが、よく見てみると「コミュニケーション力」「協調性がある方」「地域社会とのつながりを大切にする方」といった、人物像や特性に関する記載も多く見られます。求職者が「これは自分には関係ない」とスルーしてしまいそうな部分こそ、支援者がコミュニケーション力を「(例)相手の話をしっかりと聞いて理解し、必要なことを適切に伝える力」など、新たに”定義”してあげて、「ここがあなたの経験や性格に当てはまる」と気づかせてあげるチャンスです。募集要項の言葉を多角的に解釈し、求職者の「すでに持っているもの」と結びつけるサポートを心がけましょう。
3. 強みを「ストーリー」として組み立てる
企業が求めるのは単なるスキルの羅列ではなく、「その人がどんな背景や経験を持ち、どう仕事に活かしていくのか」というストーリーです。
例えば、外国人求職者が当たり前に行っている「多言語での情報収集力」も強みになります。例えば、ある中国出身の求職者が「普段、日本語や英語、中国語を使いながらSNSやニュースサイトを見ている」と話していました。これを仕事に活かすストーリーに組み立てると、「必要な情報を複数の言語で素早く集め、正確に理解する力」が強みになります。特に企業のリサーチ業務や海外市場調査では、こうした情報収集力が直接的に仕事の成果に繋がります。
また、外国人が「普通」と感じている「家族を支える経験」も強力なアピールポイントです。あるフィリピン出身の求職者は、「日本に働きに来て、母国の家族に仕送りを続けている」と話していました。彼にとっては当然のことでも、「遠く離れた場所で働きながら家族を支え、目標に向かって努力している」という経験は、「責任感」や「継続力」といった強みになります。また、「限られた収入を計画的に管理し、効率よく活用している」という話があれば、「計画性」や「お金を管理する力」も伝わります。
支援者としては、求職者の経験や背景を丁寧に聞き取り、「これまでの経験がどう強みに繋がるのか」という物語を一緒に組み立てていく姿勢が大切です。
4. 「強みの発見」を楽しいプロセスに
強みの捉え方を変えるだけで、就職活動そのものが前向きで楽しいものに変わります。求職者が「自分には何もない」と感じている時こそ、支援者の力が必要です。「あなたのこの経験はこんな強みに繋がる」「この性格が求められている環境がある」と、第三者としての視点を示し、求職者が自分自身の価値に気づけるようサポートしましょう。支援の中で、求職者が自分を必要としてくれる企業に出会えるきっかけを作ることが、私たち支援者の役割です。