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留学生向け就職説明会に人が集まらない理由とその解決策


留学生を対象にした就職説明会の現状

最近、留学生を対象にした就職説明会がなかなか集まらないという問題が深刻になっています。企業や大学、自治体が多くのリソースを投入して開催するものの、参加者が少ないという現状です。なぜこのような状況が続いているのでしょうか?

集まらない理由とは?

これまで集客の方法やイベントの内容、開催時期、言語の問題など、さまざまな角度から議論されてきました。しかし、それでも解決に至らないという現実があります。多くの関係者が「もっと多くの留学生に参加してもらいたい」と願っていますが、そのためには別の視点からのアプローチが必要だと私は考えています。

盲点は「段階が進んでいない」こと

私が感じる盲点は、留学生が「就職説明会に参加する段階に達していない」ということです。就職活動や将来の計画を考える余裕が、彼らにはまだないのです。特に大学入学と同時に日本に来る多くの留学生は、生活基盤が整っていない状態で新しい環境に飛び込んでいます。この時期、彼らが抱える不安や課題に目を向けることが、集客の鍵になると私は思います。

留学生の不安定な状態

留学生が最初に抱える不安は、外側から見えにくい部分でもあります。例えば、友人がいない、経済的に安定していない、困ったときに頼れる人がいない、趣味を持っていない(もしくは、趣味があるけど日本ではそれができない)などです。これらの要素が積み重なると、精神的には非常に「不安定」な状態に陥ります。実際に、就職相談に来た留学生に生活面の話を聞くと、「寂しい」「孤独」という言葉がよく出てきます。この状態で将来のことを考える余裕はなかなかありません。

マズローの欲求段階と留学生の成長

ここで、マズローの欲求段階を思い出してみましょう。マズローは人間の欲求を段階的に説明しており、生存の基本となる「生理的欲求」を満たした後は、安全の欲求:身体的な安全、安定した生活環境、健康、財産など、危険から守られることを求める欲求、さらには社会的欲求(友情、愛、所属、家族や仲間とのつながり)を満たすことが、次の段階である承認欲求や自己実現欲求に進むための基盤になると述べています。つまり、まずは生活環境の安全が保障されることが大事で、次に留学生が社会的なつながりを感じることで、自己尊重や他者からの承認を求める段階へと進み、最終的には自己実現へと繋がります。「日本での就職」という次元の高い目標を達成するには、まずは基本的な欲求が満たされて、自己効力感を上げることから始めなければなりません。

就職の前に必要なこと

留学生が安定して就職活動に臨むためには、まず安全欲求、社会的欲求を守ることから始める必要があると思います。この時、「生活の基盤」「周囲との関係性」を整えることが重要です。

まずは「安全欲求」を満たすために必要な、身体的な安全、安定した生活環境、健康、財産などを守ることを推奨します。アルバイトの紹介、スポーツジムの紹介(または学生用の施設をつくるなど)、また、大学の学食などで母国のメニューを提供するなど、様々なサポートが可能です。学生の食生活などを聞いていると、金銭面の理由もあって、かなり不規則で栄養のバランスが偏っていると感じられます。留学生に限ったことではありませんが、こうした不規則な生活の改善を指導することも、一つの支援であると考えます。

次に「社会的欲求」を満たす段階ですが、これは「友達作り」や「日本人との交流」を促進するような働きかけが有効だと考えます。スピーチコンテストやスポーツ大会など、自分の得意なことを披露したり、目標をもって取り組んだことを周りに「みてもらう」経験をすること、その過程で相談したりアドバイスをもらったりする中で、留学生が少しずつ自分の居場所を見つけ、社会的な安定を感じることができます。これには大学の教員が果たす役割は非常に大きいと感じます。

関係ないように見えるかもしれませんが、現実的な面でも、就職活動についての情報は「日本人の友人から得ている」という留学生は多く、日本人学生との交流を持つことは、就職活動の成功に直結しているのです。

こうした過程を経て、彼らは就職活動に対して前向きに取り組む準備が整います。

様々なステークホルダーの関与が必要

このようなイベントを実施するためには、大学職員、自治体、支援団体、ボランティア団体、学校の教員、地域の人々など、さまざまな関係者の協力が不可欠です。単独の力では限界がありますが、共同で取り組むことで、留学生が安心して参加できる場を作り上げることができるでしょう。

まとめ

留学生が就職説明会に参加しない理由は、単に集客方法が悪いからではなく、彼らがその段階に到達していないからという仮説に基づいて書いてみました。彼らが社会的に安定するためのサポートを提供し、その後に就職活動に向けた支援を行うことを提唱しています。このアプローチにより、留学生が自分の未来に対して前向きに考えることができるようになり、就職活動への参加が増えるかもしれません。

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