ナレーションを極める27 ”とちり”を減らす考え方
ナレーターの熊崎友香です。テレビ東京WBSや、NHKアジアインサイトなどでナレーションをしています。4歳と6歳の子供を育てるワーキングマザーです。
とちる、噛むなどといいますが、私はあまり噛まない方だと思っています。何かを努力して、噛まないようにしている、工夫しているというわけではありません。
考え方として、「とちっても構わない」と思うようにしています。
生放送はもちろん、収録でも噛まない方がいいに決まっているのですが、NHKにいた当初、生放送でニュースを伝える毎日の中で、大好きで尊敬していた上司からこう言われました。
「とちったっていいんだ。何回噛んだ、とか言ってくるのは素人だと思え。大事なのは伝わっているかどうかなのだ」と。
過激な発言に驚きました。かっこいいなと思いました。噛んでいいわけではないのですが、噛まないことにこだわりすぎると、パフォーマンスが小さくなります。慣れてくれば、噛まないでなんとなく読むことはできるんです。でも、それよりは、伝わるように工夫して読むことの方が大事である。そうした結果、噛んでしまったのであれば、それはそっちの方がいいではないか。と。
で、不思議なことにとちってもいい。と思い始めた途端、とちりが減りました。
今、自宅で録音してお仕事をされている方も多いと思います。私も数年前に一度トライしましたが、自宅周辺の騒音が激しく、転居してからにしようと今ストップしています。自宅で録音する場合、とちれば、自分が大変です。もう一度録音しなければならないし、編集にも手間がかかる。プロのミキサーさんならさっとやれる?かもしれない作業にも何分もかかってしまう状況でした。日本語が言えていればいい。という案件もあるのかもしれません。しかし、本来の目的を考えれば、”噛まずに効率よく収録できたか”より”伝わっているか”が大事であることは明白です。
また、最近、話し方の教室というのに通っていたのですが、そこでも尊敬する講師の方がこう話していました。
「かむ、噛まない、を意識しているのは、自分の”心の矢印が、自分に向いているから”だ。心の矢印を相手に向けてスピーチをしていれば、噛んでいるか、噛んでいないかなど関係ない。伝わっているかどうかだけに焦点を当てて、話せばいい」と。
そして!ワークショップでは詳細をお伝えしているのですが、少しだけ。。。
私、WBSのオーディションで、なんと噛みました!笑!
年齢を言い間違えて読んでしまったのです。スタジオを出た時に、ああ、せっかく大好きな番組だったのに、これでご縁がなさそうだと思いました。。。でも、ご縁があったのです!噛んでも合格できました。
ちなみに、噛んだ時は、すぐに誤り、訂正して読み直しました。そして、後から「すごく悔しそうにしていたのが印象的」と言ってもらいました。ああいう時に人の素が出るのかもしれません。
昨日のnoteにも書きましたが、転ぶのは恥ではない。転んだままでいるのが恥なのだ。噛んだあと、どう立て直すか。ここが大事なのではないでしょうか。そして、噛むことが”悪いこと”と認識していると、いざ噛んだ時に、ああ、だめだ。と思い、立ち直れない。噛んだことを大したことではない。それより伝えなくては。と日頃から意識していれば、伝わる読みにすぐに戻り立て直せるのではないか。それが一番大事なのだと思います。
報道だと時間との戦いもあり、やはりとちらないに越したことはないのですが、じゃぁ、とちらずに言えていてそれが伝わっていなくてもよいのか、わたしは意味がないと考えます。
朝活5日目。どなたかのモチベーション向上につながれば幸いです。