ナレーションを極める6 養成所の過ごし方「脱ストレートナレーション」落語家さんに教わる
こんにちは。ナレーターの熊崎友香です。テレビ東京ワールドビジネスサテライトなどでナレーションをしています。
新年度。ナレーター事務所の養成所に入所が決まっている方もいらっしゃるでしょうか。コロナの影響で授業が始まるかどうかも微妙でしょうか。。。
10年ほど前、NHKのリポーターとして働きながら、いま所属しているナレーター事務所、俳協の養成所に通いました。その当時のお話です。
フリーランスのナレーターさんもいますが事務所に所属してお仕事をいただくナレーターもいます。私は後者です。養成所で学び、試験に合格すると事務所に所属できます。(事務所に所属しても、仮所属が続き、さらに審査があって本所属になります)
毎週一回、3時間。15人くらいのクラスメイトがいて一つの原稿が渡され、順番に読む。というレッスンを受けていました。
私の課題は、まっすぐ、クセなくストレートには読める。しかし、緩急、強弱、高低が使えない「表現力をもっと身につけたほうが良い」ということでした。
今もこのテキストを使っているかはわからないのですが、有名なお話「ごんぎつね」の朗読。では、先生から
「落語家のようにやってみて」
と言われたのです。
???
頭の中が?で渦巻き、全く、全くできませんでした。
ナレーターは、○○のようにやってみて。とリクエストされたら「すぐにできなければ、プロではない」と先生が話している中、情けない、どんな風にやっていいかわからず一つも出来なかったのです。課題は来週に持ち越されました。ここで変わらなければ、合格への道はない。壁にぶつかった私は落ち込み、考えました。
「そうだ、わたしには1人、落語家の友人がいる!」
FM江戸川時代、番組に出演いただいていた三遊亭楽生さんです!年も近く20代前半からの仲!
ちなみに、三遊亭円楽さんのお弟子さんです。この方に、助けを求めて電話をして落語の稽古をつけてもらえることに!!ありがたいことに、普段、弟弟子さんたちにつけているのと同じ稽古をしてくださるというのです。持つべきものは友ですね。ありがたいです。
早速「ごんぎつね」の原稿を持って、稽古部屋に向かいました。多忙な友人の時間を取らせて悪いとか、落語家になりたいわけじゃないのにとか、余計なことは一切考えませんでした。この課題をクリアしなければ俳協に入れない。それしか考えていませんでした。今思えば、大変に図々しかったです。
驚いたことに、着いた途端言われたことは「まず、原稿を裏返しにして置きなさい、見ないで、自分の言葉でやってみなさい」と。動いていいし、手も使っていい。体全体で言葉も間違っててもいいからやってみて。と。
ええー!!
綺麗な言葉を使うのが仕事でしたのでまぁ、できない。難しい。恥ずかしい。しかし、やるしかない。
「ある山のふもとに、ごん、というきつねがいました」
「聞こえない!面白くない!どんなキツネなの!」
どんどんダメ出しが飛んできて、ごんの登場シーンだけで数十回トライしました。なんとか少し形になったら、今度は、楽生さんがどんどん後ろに下がり、10メートルほど離れたところからこう言いました。
「ここに、幼稚園児が30人いると思って、その後ろにいる僕に聞こえるように、面白くやって!」と。
「そんなんじゃ、子ども飽きちゃうよ。惹きつけないと」
なるほど、それはもう必死にやってみました。
決して楽生さんの満足のいく仕上がりとは行かなかったと思いますが、こじんまり綺麗に読んでいた私の読みは、翌週、合格点をいただけるまでになりました。
舞台を経験されている方、声優さん、には当然のことだと思いますがアナウンサー系の私にとってとくにNHKの高く入って低く読むストレート読み。を10年やってきた自分にとって「型を崩して読む」と、体が拒否反応をしめし、とても難しいことでした。(アナウンサーさんでも上手な方もいます)
今もまだ、脱アナウンサー読みというテーマは追求しています。ただただ読んでいるになっていないだろうか?きちんと伝わっているだろうか?綺麗ではなく、意味が届いているだろうか?原稿を書いた人の狙いや思いを理解してもらえただろうか?飽きさせていないか?親切な友人のありがたい稽古を思い出し「体全体で届ける」感覚を忘れないように。を心がけています。
家での時間が増える日々。テレビに加え、落語家さんの動画を観てみる、聴いてみるのも、参考になるかもしれません。
わたし自身は、鈍くて才能もあるとは思えず、ただそれでも、どうしてもやりたいことがありそれに向かう時に、正直に貪欲に図々しく人に頼ったこと、そして頼ると応えてくれる味方がいたことがとても大きかったと思います。
1人では合格まで絶対に辿り着けなかったと思います。感謝!ちなみに、三遊亭楽生さんの詳細は
ホームページ
どんどん活躍の場を広げている期待の落語家さんです!
↓今現在の様子。
楽生さんも、いま、たくさん落語聴いているみたいです。
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