***2025年動物愛護管理法改正で何が変わる?***(1)2020年改正が作り出した社会の変化
こんにちは。私は動物福祉を中心に、共生社会の実現を目指して活動しています。
なぜ、私がこの話を皆さんにお伝えするのか。
それは、動物福祉を通じて命を守り、地域の絆を取り戻し、人と動物が共に安心して暮らせる社会を作りたいと強く願っているからです。そして、それを実現するには、私一人だけではなく、皆さんの理解と力が必要だと感じているからです。
動物福祉は、ただ動物を守るだけのことではありません。
動物と人間が共に生き、支え合う社会を作るための大切な考え方です。
動物虐待や適切なケアがされない状況を改善することは、地域全体の倫理観や優しさを取り戻すきっかけになります。
しかし、まだ解決しなければならない課題もたくさんあります。
多くの動物が苦しい環境で生きていたり、十分に守られないまま命を落としている現実を変えていく必要があります。
そのためには、法律や制度を整え、社会全体を動かす力が必要です。私は、この課題について皆さんと一緒に考えるために、動物愛護管理法の意義や成果についてお話ししたいと思います。
2020年に施行された動物愛護管理法の改正は、動物福祉を進める上で大きな一歩となりました。この改正によって、どのような成果が生まれたのか、そして今なお残る課題は何か。これを振り返ることで、次の未来へのヒントを探りたいと思います。
さらに、2025年には動物愛護管理法の改正が予定されており、新たな取り組みに対して多くの期待が寄せられています。今、さまざまな分野の方々が意見を交わし、政治家の皆さんも準備を進めています。
今回お話しする2020年の改正とその成果を振り返ることで、次の法改正に向けた私たちの役割や可能性についても考える機会になればと思います
2020年動物愛護管理法改正の概要
2020年、日本の動物愛護管理法が大幅に改正されました。この改正は、動物福祉の向上を目指す画期的な一歩でした。
改正のポイントを振り返ると、以下の3つが特に重要な項目となります。
1. 動物虐待への罰則強化
2020年の動物愛護管理法改正では、動物虐待に対する懲役刑が2年以下から5年以下に引き上げられ、罰金も200万円以下から500万円以下に増額されました。これは、動物虐待を抑止するための重要な施策とされています。
この罰則強化が求められた背景には、SNSやメディアで広がった動物虐待の実態がありました。たとえば、飼い主による暴力的な行為を撮影しインターネットに投稿する事件や、劣悪な飼育環境で動物が衰弱死するケースが増加し、社会問題化しました。
さらに、多くの研究が示すように、動物虐待は他者への暴力や犯罪行為と関連性があるとされています。このため、動物虐待への厳しい罰則は、人間社会の安全を守る意味でも必要とされていました。
しかし、現場ではいくつかの課題も残されています。
虐待の通報件数は増えていますが、全てに対応するための人員やリソースが不足しており、十分な対応が追いつかないケースもあります。また、虐待を早期に発見し防ぐための仕組み作りが求められています。
2. 数値規制の導入
2020年の動物愛護管理法改正では、繁殖業者に対して飼育環境や頭数などの具体的な基準を設定する「数値規制」が導入されました。これにより、狭いケージでの過密飼育や、適切なケアが行われない状況の改善が進みました。
数値規制導入の背景には、劣悪な飼育環境で繁殖が繰り返される「悪質な繁殖業者(パピーミル)」の存在があります。
狭いケージに動物を詰め込んだまま、一切の衛生管理や健康管理が行われず、骨折や病気に苦しむ動物が大量に発生していました。
こうした状況は、2018年に発覚した**「徳島の悪質ブリーダー問題」**で注目を集めました。100匹以上の犬が劣悪な環境で飼育され、ほとんどが病気にかかっているという実態が報道され、大きな社会問題となりました。この事件は、動物福祉における規制強化の必要性を浮き彫りにした出来事として知られています。
具体的な基準の例
数値規制の具体的な内容として、以下のような基準が設定されました
ケージの広さ
動物が自然な姿勢で立ち上がり、体を回転できるスペースを確保する。飼育頭数の上限
繁殖業者が適切にケアできる範囲内で、飼育可能な動物の数を制限する。運動スペースの確保
動物が日常的に体を動かせる場所を提供する。
衛生環境の維持
排泄物やゴミを適切に処理し、感染症を防ぐ。
これにより、動物の基本的な生活環境が保障されるとともに、業者による無理な繁殖が抑制されることが期待されています。
数値規制が導入されたことで、繁殖業者の不適切な飼育環境が改善されつつあります。特に、劣悪な環境下での繁殖がメディアに取り上げられることで、消費者の意識も変わりつつあります。
一方で、規制の抜け道を利用し、規模を小さくして業務を続ける悪質業者がまだ存在していることも課題です。
3.販売時の対面説明と現物確認の義務化
2020年の動物愛護管理法改正では、ペット購入時に対面説明と現物確認を義務付ける規定が導入されました。この改正は、購入者に動物の性質や健康状態を正しく理解させることで、適切な飼育が行われるよう促し、飼い主の責任感を高めることを目的としています。
この義務化が導入された背景には、動物が「命ある存在」ではなく「商品」として扱われていた実態があります。特にオンライン販売や展示販売では、購入者が動物の健康状態や性格を十分に確認しないまま購入し、飼育困難に陥るケースが多く報告されていました。その結果、飼育放棄や虐待、多頭飼育崩壊などの問題が増加しました。
また、ペットショップでは、動物が狭い展示スペースに閉じ込められ、長時間ストレスにさらされるケースも問題視されていました。対面説明と現物確認を義務付けることで、動物の健康やストレス軽減を図り、購入者に命の重みを認識させる狙いがありました。
対面説明と現物確認の義務化により、以下のような具体的な取り組みが進められています。
衝動的な購入を抑制し、動物を迎える責任を購入者にしっかりと意識させることが期待されています。
購入前の健康状態の確認
ペットショップで獣医師の診断結果を基に、動物の健康状態や予防接種歴を説明。性格や飼育環境の説明
犬や猫の性格や適した飼育環境を購入者に伝えることで、ミスマッチを防ぐ。
直接触れ合う機会の提供
購入希望者に動物と触れ合う時間を提供し、動物の性質を理解させる。
対面説明と現物確認の義務化により、ペット購入時の意識が高まり、飼育放棄や虐待の防止に一定の成果が見られました。特に、動物を迎える際にしっかりと準備を整える飼い主が増えたことは大きな進展です。
一方で、インターネット上の無登録業者による違法販売が続いており、規制をすり抜けるケースも少なくありません。また、対面販売を行う業者であっても、形だけの説明に終わる場合もあり、法の実効性を高める取り組みが課題として残されています。
改正による効果と課題
動物愛護管理法の2020年改正により、動物虐待への罰則強化や繁殖業者への数値規制導入などが実施されました。これらの施策は、譲渡会の活発化や殺処分の減少といった具体的な成果をもたらしています。
岐阜市でも、保護された動物が譲渡される機会が増え、多くの命が救われています。
しかし、この改正だけでは解決できない課題も浮かび上がっています。たとえば、多頭飼育崩壊や、飼い主の高齢化による動物の放置問題は依然として深刻です。動物福祉をさらに進めるためには、これらの課題に対する取り組みが不可欠です。
次回は、「殺処分数の推移にみる効果と、岐阜市の先駆的な取り組み」と題して、全国および岐阜市における殺処分数の減少の現状とその背景についてお話しします。
どのような成果があり、何が課題として残されているのかを詳しく解説していきます。ぜひお読みください。