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学生から突然、中国と台湾問題について質問されたお話

すこし前の出来事です。

ある学校で台湾出身の留学生に会いました。その学生は日本語に興味があり、日本語教師である、わたしに日本や日本語について質問しました。次の授業まで時間がありましたので、わたしもできる限りのことをしてあげたいと思い、質問に答えてました。

すると、その学生が突然話題を変えて、中国と台湾の関係における自説を熱く語りだしました。そして、わたしにも中国と台湾、そして中国と日本の関係について意見を求めます。

どのように答えるべきだろうかと考えていると、わたしが答える前に、学生は中国に対して消極的な意見を述べ、わたしに同意を求めました。

わたしは「わたしは日本文化という授業を担当する教員です。その教員が、政治的なことや他国の方針について、学生と議論すると思いますか?わたし個人がどのような思想を持っていたとしても、学内で学生にそのことについて話すことはありません。」と答えました。

すると、その学生は、自分は日本人であるあなたの客観的な意見を聞きたい。中国と台湾問題についてどう思うかと質問します。

それで「わたし個人がどんな意見を持っていたとしても、それが中国と台湾の関係に何の影響も与えない。しかし、自分が学生に大きな影響を与えることがあるのを知っている。あなたはどうやらわたしの話しを聞いていないようだ。わたしは議論しないし自説を学生に話さないと言いました。もし、あなたが自分の意見を強化するために、私を利用しようとしているのであれば、今後、あなたとは他のコトについても意見を交換することはない。」と答えました。

このように、普段ニコニコしている私が真剣な顔で、この話題について話すつもりがないと伝えると、その学生は「对不起(ごめんなさい)」と言うので、「謝る必要はありません。わたしはこの話題を含めて、政治的・思想的なことに関して、学生に自分の意見を言うつもりがないだけだから」と言うと、わかりましたと、その学生は言いました。

わたしはずっと学生たちは、中国という国の抱えている、様々な矛盾や問題点を知っていて、その上で知らないふりをしていると思っていました。つまり、彼らは賢く、狡猾にとも言えるかもしれませんが、振る舞っていると思っていたのです。

しかし、台湾問題について語るその学生の語調は強く、いくらか攻撃的でした。その学生のように、高学歴で、恐らく富裕層に属するような人でも、敏感な話題に対して激しさを隠さないってことがあるのだと驚きました。

その学生の口調や態度、表情を見て、ふと、領土問題とか、第二次世界大戦時に大陸で起きた事件について、厳しく質問してくる人のことを思い出しました。

突然「あの島はどこの国のものだとお前は思っているのか」とか「第二次世界大戦で日本人が行った犯罪について、お前はどう思っているのか」と、コンビニの店員やタクシーの運転手に聞かれることがあります。

まさに答えようのない質問です。それで、いつも中国語はあまりわからない風な態度を取りつつも、学生に言ったのと同じく「わたしがどんな意見をもっていたとしても、問題解決には何の影響もありません。わたしに力がなくすいません」と言うようにしています。すると「まぁ、その通りだな」とたいていの人は答えます。

これ以上突っ込んでくる人や、つっかかってくる場合には、タクシーを降りるなり、買い物をやめるなりして距離を取る方が賢明です。

個人的には、こういった問題に関して、誰が正しくて誰が間違っているのか、何が起きて、何が起きなかったのかを検証することは、ほぼ不可能ですし、意味もあまりないと思ってます。

それはひどく悪化した皮膚病のようなものです。皮膚に生じた炎症を掻いてしまい、次の傷ができ、そこが化膿してさらに別の皮膚病を呼び込む。その不快感からストレスを感じ、別の皮膚病が発生し、大きな問題になってしまう。

それを、強力や治療薬でいっきに治そうとしても、そう簡単にはいきませんし。もう誰も何が原因でここまで症状が悪化したのかもわからないのです。さらに、こういった病気は回復したように見えても再発してしまうこともあるでしょう。

ですから、この学生が提起した問題などは、単純化したり、簡単にお金やその他の方法で片をつけようとしても、上手くいかないのです。

◇◇◇

さて、日本語の授業で「あなたは何が好きですか」という言い方を練習しました。ある学生が「わたしは本が好きです。歴史を勉強することが好きです」と言いました。それで、どの国のいつの時代の歴史に関心がありますかと聞くと、中国の近代史を学んでいると言います。

そして、今の中国を理解するために、中華民国以降の歴史を正しく理解したいと、微笑みながら、でも真剣な表情でわたしに言いました。それで、わたしもその学生に、その志は立派ですねというと、学生はありがとうございますと答えました。

ぜひ、自分で調べ、学び、自分なりの「今の中国とは」という疑問の答えを出してほしいなと思いました。わたしもまた、自分の目で見、そして話しを直接聞くことで、自分なりの答えを持たないといけないなと考えさせられました。

今日も最後まで読んでくれてありがとう。また明日。

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くまてつさん@中国|日本語教師
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