草野球チームを作ろうと決めた経緯と理由 ~組織運営論・リーダー論を添えて~
まえがき
私は2023年7月現在、札幌市内で2つの草野球チームに所属していますが、先日、2024年活動開始予定の新チームを自ら立ち上げることにしました。
チームを引っ張るような経験もろくに無く、縁の下から支えるタイプな人生を歩んできた人間が、一体なぜこの決断に至ったのか?
それを明らかにしましょう。
バックグラウンド
私という人物がどれだけのダメ人間で人生の落伍者であるかは、以前に回顧録を記したのでいいとして。
そもそもの話、その昔「自分は組織において中心人物になるような存在ではない」と気づいて以来、ひたすらサポート役に徹してきました。
それが影響したのかしていないのかはわかりませんが、仕事をするようになっても、小企業あるあるな「社長直々の業務」を頻繁に与えられたり、言い方は悪いですが、社内スパイのようなことをやらされたり……と、立場のある人間の補佐のような役回りをすることが多くありました。
まあ、雑に表現してしまえば、言えばだいたいなんでもやってくれる使い勝手の良い存在だったんでしょうね。
それ以上でもそれ以下でもなく。
で、草野球を始めても、わりとそういう立場を積極的に引き受けるような動きをしていまして、現在はありがたくも、所属しているチーム両方で運営幹部をさせていただいております。
自分でいいのか? 本当にチームに貢献できているのか? という疑問はよく生まれてきますが。
そういう参謀のようなポジションを与えられがちなのは、ひとえに私が「基本的にネガティブ思考な慎重派」かつ「細かいところによく気付くタイプ」だからだと思うんです。
(後者については自分で言うのもおこがましいって感じではありますが……)
なので、上の人間が暴走気味な時のブレーキ役を期待されているところもあったようです。実際にそっくりそのままその言葉をかけられたこともありました。
こう書いてみると、読めば読むほど「こいつ本当にチーム作って代表になって大丈夫か?」って感じになってきますね。ぶっちゃけ私もそう思います。
では、何故それでもやりたい、って気になったのかを、以下に記します。
現所属チームでの役割
正直に言うと、草野球チームに所属した当初は、「自分でチームを作るなんて気には未来永劫ならないだろうな……」と思っていました。
それから約1年、見事に掌を返し、チーム作りの計画を綿密に練り、満を持して7月1日に設立を発表した私がいます。
はて、この間に一体何があったのでしょうか。
私が所属チームの運営に関わり始めたのは、2022年の6月頃。
最初はグラウンド確保のお手伝いからでした。
(それより前に、できたてほやほやのチームを支えるために、あれが必要だよね、これもあると便利だよね、ってのを自分で用意するとか、そういうことはしていたのですが)
で、シーズン終了後に2023年のキャプテンに任命され、代表が諸事情で活動に参加できなかった冬季は、室内練習のセッティングと当日のとりまとめを代理で実施。
シーズンが始まっても、4月下旬まではこれまた代理で試合のセッティング、当日の対戦相手とのやりとりをしていました。
そんなことやったこともありませんでしたが、見様見真似でやったらなんとかなりました。なんとかなるもんですね。
一方、もうひとつのチームは2023年シーズンから本格活動を開始したのですが、こちらも代表が仕事などで冬季になかなか動くことができず、ユニフォーム発注、メンバー募集、大会参加申し込みなど、裏で色々と動いていました。
ちなみに、このチームでは最年長ということもあり、若い選手たちが元気よく野球するのを、一歩引いた位置から眺めるようなスタイルでやらせてもらっています。
ますますチーム代表の器っぽくはなくなってきましたね。
これは明らかにサポーターの役回りです。
ですが、その「サポーター」としての立場を活かし、チームを作ろうと思い立った、というのが実態なんです。
それはなんやねん、となると思うので、続きをどうぞ。
サポート役は組織のトップになれるのか?
前述した通り、私はリーダー気質はからっきしな、生粋のサポータータイプの人間です。
今まで何らかの組織を引っ張る立場になったことはありませんし、仕事も自営業(プログラマー兼ライター)ではありますが人は雇っていないので、自分以外の他人の責任を負う、という経験も当然ありません。
ただ、私もそこそこいい歳になってしまったので、今後の人生を色々と考えているうちに、ある考えが湧いてきました。
「サポート役が組織のトップに就くとどうなるのか」
という考えが。
大学時代、組織論みたいなものには少し触れましたが、そもそも組織と言うのは、大きくなればなるほど、トップのカリスマ性だったり、決断力だったりが非常に重要になります。
なので、いわゆるリーダー気質の人というのは、一般的に「ポジティブ思考」「リスクテイカー(リスク許容型)」「切り替えが速い」「決断力がある」という特徴を持っていることが多いですし、よく言われるリーダー論みたいなものでも、成功したければそういう思考や行動を実践せよ、といった論説が展開されているのを頻繁に目にします。
一方、私はどうでしょう。
「ネガティブ思考」「リスク回避型」「いつまでも過去の出来事を引きずる」「決断に多くの情報と時間を要する」
と、まるで正反対です。
こういった気質について、最近では「組織に一人でもいれば運営が安定する」とかなんとか言われることも増えてきましたが、成功のためには足手まといと扱われることもまだまだ多いのが現状。
そんな人がリーダーになっちゃったら、一体どうなんねん、という不安、ありますよね。正直なところ、私も不安です。
では、先程の相対する気質の特徴を、逆説的に見てみましょう。
例えば、ポジティブ思考で切り替えが速いことは、裏を返せば「失敗から学ばないタイプ」ともいえますし、リスクを冒すことを恐れないことは、大成功か大失敗の両極的な結果が出る傾向が強いとも表現できます。
そして、決断力があることは、十分な判断材料が揃っていないのに、その場の雰囲気や成功バイアス、あるいは勘に頼って決断を下してしまう恐れがある、と取ることもできてしまいます。
一方、ネガティブ思考で過去の出来事にとらわれがちなことは、成功・失敗に限らず過去の経験から多くのフィードバックを得て、今後に活かすことが得意と取ることができます。
リスク回避型で優柔不断なことは、周到な準備により、起こり得る展開パターンを多く仮定し、それに対する行動オプションを細かく設定しておくことで、「想定外の事態」に対して強くなる、大成功はしにくいが大失敗も起こりにくい、という結果に行き付く可能性が高いともいえます。
こう考えると、いわゆる「リーダーに不向きな性格」であっても、意外とメリットっていっぱいあるんですよね。
というか、そもそも「リーダー向きな性格」ってなんやねん、というのが私の考えです。
それじゃあ、リーダーに不向きと言われている性格であっても、リーダーとしてうまくやっていくにはどうすればいいのか?
これをちょっと考えてみました。
サポーターがリーダーになるために
いくら「リーダー向きの気質」があるからといって、ないものねだりをしたところで簡単に得ることはできませんし、元来そのようなタイプでは無い人が無理矢理リーダー気質を演じていると、最悪人格の破綻を招きかねません。
「あの人、昔はこんな性格じゃなかったんだけどな……」って話を聞くことがあるかと思いますが、リーダーに限らず、「ポジションに求められるテンプレ気質」を演じているうちに、変な方向に人格が変わってしまうケース、結構あるんじゃないかと個人的には思っています。
なので、私が目指すのは、「サポーター気質のままリーダーになる」パターンです。
馬鹿も休み休み言え、という意見もあるかと思いますが、それはさておき。
組織のタイプというのは、リーダーのタイプに大きく左右されるものです。
それをベースにして、組織運営の方針であったり、行動計画を決めていけばいいのかなと思います。
サポーター型がリーダーの場合、特性から見ても、必然的に大成功はしにくい組織になるでしょう。
そのかわり、大失敗するリスクも低下すると考えています。
話を草野球チームに戻しましょう。
草野球チームの運営における重要ポイントは、そのチームがどういう方針かによって変わってくるでしょう。
たとえば「とにかく大会で勝つチーム」「勝ち負け度外視で楽しむチーム」「両者の中間くらいでほどほどにやるチーム」などなど。
ですが、全てに共通する最大の課題として、「どうやってメンバーを確保するか」というのがあります。
野球は最低でも9人いないと、そもそも試合ができませんから。
既に人数がある程度安定して集まっており、試合で勝つこと、大会で勝ち進むことを最優先とするのであれば(加えて優秀な参謀役を確保できているのであれば)、トップはいわゆるテンプレ型リーダー気質であるほうが良いでしょう。
リーダー向き気質として、「闘争心や攻撃性がある」ことも往々にして求められるので、相手に打ち勝つ必要があるなら尚更ですね。
一方で、試合での勝利よりも、安定したチーム運営のほうに重きをおくのであれば、サポーター型気質のメリットが生きてくるのではないか、と考えます。
例えば、周到な下準備を行うことで、毎回の活動を安定して行うことができるとか、危険を敏感に察知することにより、チーム内での問題発生を未然に防ぐとか。
こと、チームを潰さないという目的を達成するためであれば、こちらのほうに軍配が上がると私は考えます。
とは言いつつも、試合の采配が消極的になり、ここぞという場面で勝負に出られないみたいな、サポーター型のデメリットが大きく影響してしまうケースももちろん想定されますけどね……。
まあ、一番いいのは、リーダー型とサポーター型のいいとこを併せ持ったタイプだと思うんですが、そうそううまくはいかないと思うので。
リーダー型気質のうち、真似できそうな部分をちょっとつまみ食いする程度ですかね。
私の理想のチーム作り
以上、長々と野球に関係なさそうなことを書き連ねましたが、これが私が草野球チームを作りたいと思った理由、理想のチームを作るための計画のベースです。
結局何が言いたいかというと、「サポーター型がリーダーの組織はうまく回るのか」を、自分で草野球チームを作り運営することで試してみたいってのが、チーム設立の最大の理由なんです。
そのために2ヶ月くらいかけて、大丈夫かどうかを判断した論拠のひとつが、上述のリーダー論でした。
私のチームはほんとうにゼロからはじまります。
札幌で草野球を始めてまだ1年ちょっと、まだまだ交友関係も広くはありませんし、立ち上げ時に一緒にチーム運営をやってくれるようなメンバーもいません。
どこかのチームの残骸を引き継ぐわけでもないので、メンバーも用具も、何から何まで自分で集め、形にしていく必要があります。
そういった非常に不安定な時期を乗り切り、チームとしての最低限の体裁を整えるためにも、自分のサポーター気質が強みになる、と考えたため、設立に踏み切りました。
目標は「10年続くチーム」です。
そして、主役は選手たちであり、私自身はどちらかといえば、それこそ采配役、チームのサポート役に重きを置きたいと考えています。
まあ、たまには出たがりモードになるかもしれませんが……。
こんなのがリーダーになるチームですから、仮にそのうちメンバーの勝利志向が強くなってきたら、「この監督じゃ勝てない」ってなって、降ろされるかもしれませんが、そのときはそのときです。
会社の社長だって、社員の反発に遭って椅子を追われることはあるじゃないですか。
会社の場合、設立から3年で5割、5年で7~8割が潰れ、10年もつのは1割前後、みたいによく言われますが、草野球チームも似たようなものだと思っています。
設立初期の厳しい時期を乗り切り、なんとかチーム運営を軌道に乗せるためにも、自分に与えられたカードをフル活用し、楽しく野球ができる環境を早めに作りたいですね。