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毎日連載する小説「青のかなた」 第8回

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 光は思わず明人の顔を凝視した。何言ってんだこのあんちゃんは、と思う。

「引きこもりにそんな高度なコミュニケーション要求しないでよ」
「だから、自分で引きこもりとか言うなって。在宅勤務なんだから、家に籠もりがちになるのは当然だろ。……まあ、まずは無事についたんだ。一人で海外に行けたっていうのだけでもすごいことだよ。だから、今日は無理すんな。知らない人とごはんを食べたくないなら、丁寧に断って部屋で寝とけよ」
「……うん」

 光の返事を聞くと、明人は「じゃあ、気をつけて暮らせよ」と、光が今朝家を出たときの祖母とまったく同じことを言って、電話を切った。


 明人の言う通り、夕食は辞退しよう。そう決めたはいいけれど、それを言葉で伝えないといけないと思うと、それもまた憂鬱だった。こわごわとリビングに戻ると、そこに思南と風花の姿はなかった。おまけに、テーブルの上にあった料理の皿も、二人と一緒にきれいになくなっている。あれ、と思った。あんなにたくさんあったのに、一体どういうことだろう。よくよく見てみると、皿の代わりに一枚のメモ用紙が置いてある。

 ――Come up to the rooftop!!

 屋上に来てね、という意味だ。外に出て、家の裏手に回ってみると階段があった。屋上に繋がっているようだ。ビーチサンダルをペタペタ鳴らしながら、階段を昇ってみる。

「ようこそ、光ー!」

 思南が歌うようなうきうきした声で言った。広い屋上にはビーチで使うようなデッキチェアがいくつか置いてあり、思南と風花はそこでくつろいでいた。二人のそばにはキャンプで使うようなランプが置いてあり、同じくキャンプ用のテーブルには、表面が見えなくなるくらいぎっしりと料理の皿が並んでいる。

「風花のアイデアだよ。外で食べたらもっと楽しいって」思南が言う。

 風花はもう席に着いて何か焼酎のようなものを飲んでいた。光を待ちきれなくなって先に飲んだのかと思っていたが、思南いわく、「料理してるあいだからもう飲んでたよ」とのことだった。

「さあ、座って座って」

 思南が光の背中を押して、デッキチェアに座らせる。「いやあの、私、今日はごはんは」と光が言っても、彼はあんまり聞いていない。

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