キッチンを整えて幸福度を上げる【東京サーキュラー生活 #3】
北欧で学んだ「快適さの追求」
2ヶ月半の北欧暮らしで最も影響を受けたのは、QOLを追求するようになったことだ。QOL(Quality Of Life)とは、生活(人生)の質のことで、私の解釈では「常に快適であること」だ。
これは全く単純な話だ。一日24時間のうち、1分でも多く快適な時間が過ごせれば、それだけ幸福度が上がるし、逆に不快な状態が続けば幸福度はだだ下がりする。60年生きてきて思うのは、何でもない毎日の生活が最も大事で、幸福度を決めてしまうということ。特に自宅は多くの時間を過ごす場所だし、他の場所と違って自分でコントロールできる。快適な自宅は幸福の源泉なのだ。
ということを、フィンランドで学んだ。ほんと、フィンランドでの生活は快適すぎて、アウェイであるはずなのにほとんどストレスを感じることがなかった。かの国が幸福度連続6年第一位というのも、日本との比較しかできないが、頷ける。
その理由は、「デザイン」にあると思う。仕組みづくりやデザインの得意なフィンランドでは、個人宅はもちろん、街、駅、公共施設など人が活動するあらゆる場所で、導線よく、居心地よく、美しくデザインされていた。世界に名だたる「北欧デザイン」は、家具や照明などのモノだけでなく、コト、つまり目に見えないサービスや構造も含む。合理的に無駄なく生活するためにはどうしたらいいか、考え抜かれているのだ。
そんな国から日本に帰ると案の定、QOLがだだ下がった。それは自分の家も含めてだが、全般的に「快適さ」の優先順位が低く、何かと経済が優先して、美意識も低く、合理的な導線を考えられていないからだ。
賃貸マンションをなんとかしてほしい
その典型が日本の賃貸住宅である。今回、東京の部屋探しでそれを確信した。
高額物件なら別だろうけど、一般的家賃の賃貸マンションは住人の住みやすさをまず考えていない。投資物件になることも多い20平米程度のワンルームは、エントランスこそ立派だが、部屋に入れば入り口にいきなりキッチン、それも鍋も洗えないような小さなシンクと電熱器のようなコンロが一つ、悪魔の3点ユニットがお決まりだ。経済効率性が最優先で、体裁だけ整えて、そこに住む人のことなど二の次三の次というのが丸わかり。だから最近はそういうタイプのワンルームは人気がないらしい。
そして古いマンションになると、システムキッチンが一般的になってだいぶたつにもかかわらず、いまだに昭和の団地のような使いづらいキッチンが横行しているから驚く。
なにしろ上部キャビネットが頭上にあって一般的な女性の身長には高すぎる。さらにシンク下のキャビネットは下水道が邪魔して使いにくいし、引き出しではないのでいちいち屈まないといけない。余分な動きが要求されるのだ。これは慣れでは済まされない。というか、こんなことに慣れたくない。
賭けてもいいが、これは料理をしない男性が設計したものだ。目線に収納があったら便利だろう、コンロ下に大きな引き出しがあったら鍋を入れられるだろう、なんて考えもしないのだ。
使いにくいとどうなるかというと、ついついモノが出しっぱなしになり、どんどん雑然となり美観を損ねていく。そしてそれをカバーするためにニトリとかアマゾンとかの収納グッズが売れまくる。
私が今まさにこの問題に直面していて、団地型のキッチンであるがゆえに収納場所に困り、ニトリとアマゾンに依存中なのである。
それにしても、ここ最近の収納グッズの多様性は驚異的で、どんな状況でも対応する商品があるのだ。これはあったら便利!というアイデアグッズのオンパレードだし、「幅20センチ 奥行き35センチ 収納」と検索するとどーんと出てくるのである。この数日は、毎日何かしらの荷物が届く。一つ一つは数千円の少額でもまとめるとかなりの出費だ。そして、それだけのニーズがあるということは、多くの人が「使いにくいキッチン」に悩んでいることを意味する。
合理的だったフィンランドのキッチン
フィンランドのキッチンが懐かしい。まずいいのは、洗いものはシンクの頭上にカゴが設置してあり乾燥と収納も兼ねていて、しかもドアで隠れるようになっている。上部キャビネットは目の下の高さで、私の身長(153センチ)でも余裕で使えて調味料などを入れていた。ごみ箱はシンク下に3種類設置してあり、生ごみ、普通ごみ、資源ごみが分別できるようになっている。オーブンと食器洗い機は当然ある。
そのおかげで家事の効率がよく、基本自炊だったが、ほとんど時間を使わずに済んだ。
引越してちょうど1週間。いま私は料理をしない人が考えた、使いにくいキッチンをどうやって使いやすくするかのために、無駄な時間とお金を使いまくっている。昨日もこんな収納グッズが届いた。
こういうものはここだけのその場しのぎで、次の引越先にはまず使えない。それはわかっていても、今の効率性を優先した。サーキュラー生活を旨とする私にとっては大いなる妥協、挫折である。
ちなみにフィンランドにはニトリのような収納グッズや隙間家具を出している店は、私が知る限りではなかった。だって必要ないのだ。
オーブンレンジはサブスク、でも問題発生
さて、キッチンに必須の冷蔵庫とオーブンレンジ。これはどちらもサブスクを利用しようと思ったが、場所の都合上、オーブンレンジを置く場所がなく、冷蔵庫を低めのものにしてその上に載せることを思いついた。
サブスクでは低めの冷蔵庫がなかったので、中古品を「激安学生リサイクルショップ」で5万円で購入。こちらは中古家電の専門店で、配送と設置料で3500円かかるが、2人がかりで来てくれて、対応もよくおすすめできる。
オーブンレンジだけサブスクにした。福島の家で愛用しているヘルシオを指定。家電サブスクのレンティオで月額2500円。全くの新品がメーカーから直接届き、縛りは半年間。でも使ってみたら同じヘルシオでもこのタイプは操作性がよくないので、半年後には変えようと思っている。
しかしここで問題が。冷蔵庫の上にヘルシオを載せたら、思った以上に高くて、私の身長ではレンジに届かないという事案が発生したのだ。
そこでまたしてもアマゾンだ。踏み台を買ってなんとか使えるようになった。やれやれ。最初からあるべきところにあるようにキッチンがデザインされていれば、こんなもの買う必要がないのに。
QOLの基本は自炊
それにしても東京はお金がかかる。スーパーで買う食材も福島と比べるとだいぶ高い。でもそれよりお金がかかる北欧で、なんとか自炊で乗り切った。自炊は節約だけでなく健康維持にも大事だし、テイクアウトのプラごみ削減にもなって精神衛生上もよく、一石三鳥、四鳥になる。だから私にとってQOLの鍵は料理なのである。
そして料理の生産性のためには、何をどこに置くかなど、キッチンの導線を考え抜かなければならない。今ある状況で最大限のパフォーマンスを出すにはどうしたらいいのかを考え抜く。ここは妥協したくない。
ということで、少しづつ整えているけど、理想の状態になるまでにはまだちょっとかかりそうだ。
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