チリワイン、そして「コノスル」のピノ・ノワールのこと
熊坂仁美です。今日はチリワインの魅力について語りたいと思います。
今やワイン界?の中で絶大なる存在感をみせるチリワイン。その一番の魅力は「どこでも買えること」。どんなに美味しくても簡単に買えないのでは意味がないですものね。
その点チリワインは居酒屋でもレストランでもよく置いてあるし、酒屋さんやコンビニでも必ず棚にある。
さらに買いやすい値段。これは税金面のお話で、チリと日本間の関税の取り決めで安いため、ほかの輸入ワインと比べると割安なのです。
アイテムも豊富ですね。白も赤も主要ブドウ品種のほとんどを網羅しているのがすごい。
そして何より重要なのは、十分に美味しいこと。
つまり、チリワインは優秀なデイリーワインの要素をすべて兼ね備えているのです。
かつてワインは「スノッブな飲み物」と思われていましたが、今ではすっかり身近な飲み物なりました。これにはチリワインの功績が大きいと思います。
さらにチリワインのすごいのは、大量生産型ワインを安定供給しながらも、高級ラインにも力を入れているメーカーが多いこと。
いわゆる「プレミアムチリワイン」ですね。
関税が安いのでほかの国の同レベルのプレミアムワインと比べてもぐんとお買い得、2,000円ちょっとぐらいでかなりいいワインが買えます。
■プレミアムチリワインの代表格「コノスル」
自転車のロゴマークでおなじみの「コノスル」のデイリーワインは、そのクオリティの高さでファンが多く、Twitterでもかなり高評価。
コノスル社は1993年の創業以来すっとプレミアムワインにも力を注いでいて、とりわけピノ・ノワールに関しては名実ともにチリの先駆者。20年前 の1999年、ブルゴーニュの醸造家マルタン・プリウール氏を招き入れて「ピノノワールプロジェクト」を立ち上げ、以来チリスタイルのプレミアムピノへのチャレンジを続けてきました。
コノスル社、とにかく設備投資がすごい。最高ランクの「Ocio オシオ」を仕込む手作業ベースの専用セラー(マルタン・セラー)をまず作り、2009年にはそのノウハウを活かして53万リットルのワイン生産が可能な「ピノノワール専用セラー」を建設。2016年には世界最大のピノ・ノワール生産者となりました。
■チリからやってきた醸造家 のお話を聞く
11月末、ご縁をいただき、コノスルの販売輸入元のスマイル社が主催するメーカーズランチに参加してきました。場所は「ロテスリーレカン 銀座」。最高級のピノ・ノワール「Osio」を中心に、シャルドネをつかった瓶内二次発酵スパークリングワイン「センティネラ」、特徴的なソーヴィニヨンブラン「20バレル・ソーヴィニヨンブラン」、最後はリースリングの貴腐ワインまで、レカンのフレンチとのペアリングを堪能しました。
チーフワインメーカーのマティアス・リオス氏は1年ぶりの来日とのこと。チリー日本のフライトは26時間かかるということですが、長旅の疲れは全く感じず終始笑顔。
挨拶の冒頭で同社のコンセプト”no family trees, no dusty bottles, just quality wine” (家系図を持つような伝統もない、埃を被ったヴィンテージボトルもない、あるのは品質の高いワインのみ)というメッセージ。「たしかに私たちには歴史はないけど品質ではどこにも負けない」というきっぱりした覚悟を感じました。
「オシオ」がどうやって作られるかをマティアスさんが説明してくれました。手摘み、コールドマセレーション、足踏みによる粉砕、タンクの状態を見ながらのピチャージュ(棒による攪拌)など、最も丁寧で手間のかかる作り方をしているとのこと。大量生産のチリワインのイメージが完全に覆されます。
つまり彼らは最高級品質のものを作るために「やれることは全てやっている」ということ。これがまさに「just quality wine」ということなんだと理解しました。
そしてチリの気候の解説。チリは南半球なので暑いイメージがありますが、実は穏やかな地中海性気候で、なおかつ寒流であるフンボルト海流のおかげで日照がありながらも冷涼な気候。暑さに弱いピノ・ノワールに適した気候なのです。
さて、そのオシオのお味はいかに。
ランチでは最初にいきなりオシオとブルゴーニュのグランクリュのブラインド。それぞれのテイスティングコメントを求められ、「好きなのはどっち」という投票が行われました。参加していたのは錚々たるワイン専門家の皆様。その投票結果、オシオはブルゴーニュのグランクリュに圧勝したのです。
ちなみに私もオシオのほうが好き、という票を入れさせていただきました。同じ2016年のビンテージでしたが、ブルゴーニュよりエイジングが早いのか瓶内熟成をしていて複雑なアロマが出ていました。味わいも果実味に加えてミネラル感もありそれがいいなと思ったからです。
スタートはシャルドネ100%の瓶内二次発酵ブランドブラン「センティネラ」とアミューズ。
真鯛の白子とあんこう。「20バレル」シリーズのソーヴィニヨンブランとともに。このソーヴィニヨンブラン、ほんのりイチジクのアロマがあり、独特でとても美味しかった。
牡蠣のフランと牛肉はもちろんオシオで。
メインの仔牛バラ肉オルロフ風。オシオとのペアリングはとろけるようでした。軽めの料理にもしっかりソースの重めの料理もどちらも受け止めてくれる懐の深いピノ・ノワールです。
デザートのイチジクのコンポートとハチミツをかけたヨーグルトにはリースリングの貴腐ワイン。リースリングがあることも知りませんでしたが、さらに貴腐まであるとは驚きです。
作り手のお話を聞きながら食事をするメーカーズディナー(ランチ)は大好き。なぜなら目の前にあるお酒のその奥にある想いやストーリーをダイレクトに知ることができるからです。コノスルの醸造家マティアスさんからは、シンプルで、でもとても強い、ものづくりへの情熱と覚悟を感じました。
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