30歳過ぎて、NY留学した話 #1 -海外行き決断
あれは2015年だっただろうか。
とにかくもう仕事に疲れていた。上司からのハードルの高い注文。それによる残業。そして、なかなか満足のいかない結果しか生み出せない自分。もうくたびれていた。それまで何度もくたびれることはあったけれど、もう限界が来ていた。
今思えば、懐かしい記憶だけれど、あの時は自分自身が崩壊していたように思う。きっと今までの努力が報われて、キラキラした30代が来るだろうと
思っていた20代が馬鹿馬鹿しくなっていた。
もう精神的に壊れていた。もう休もうと思った。そして、会社を辞める決意をし始めた。入社依頼お世話になった、大好きだったこの会社を。
それと同時にこうも思った。
「... 海外に行きたいな。」
子供の頃から海外に憧れていた。学生の頃には、アジアやヨーロッパをバックパックして、いずれ海外でも通用するような人になりたいなと思っていた。だから、海外に行きたいと思うのは、当然のことだったと感じる。むしろ、その判断をするのは遅い年齢に差し掛かっていたとも思う。
でも、すごく怖かった。本当に海外になんか住めるのか。一人で今、海外に行って、どうなるのか。
それと同時に会社を辞める不安との葛藤もあった。
20代は仕事ばかりしていた。ずっと会社にいた。昼も夜も夜中も。会社を辞めようかなと思った瞬間から、そこを離れるのが不安になったのかもしれない。30歳を過ぎて、給料も安定してきた。
でも、このまま安定に慣れてしまったら、もう新しい冒険はできないんじゃないか、昔から海外に住んでみたいという夢はもう一生叶わないんじゃないか、とも思っていた。
そんなモヤモヤを抱えていた時に、学生時代にアメリカ留学経験のある友人と会った。やや塩対応気味の彼は、私にこう言い放った。
「別に君には、捨てるものが何もないじゃないか。結婚している訳でもないし、子供がいる訳でも、彼氏がいる訳でもないじゃない。そりゃあ、親はいるけど、親は親だし、何とかなるでしょ。捨てるものがないんだから、行きたければ行けばいいじゃん。」
と、真顔で言った。
実に投げやりな言い方だなとも思ったが、
「うーん。確かに。」
と、純粋に感じてしまった自分がいた。何を私は悩んでいたんだと。何をイジイジ考えていたんだと。
「そうだ。私には、何もないんだ!私の人生には捨てるものなど何もないのだ!身軽なのだ!VIVA独身!!」
正直、ここまで絶賛したかは覚えてないが、彼が言ったあの言葉が、私を一歩も二歩も、イヤ、百歩くらい前に背中を押してくれた。むしろ、後ろから突如何か大きなもので突かれたくらい、私を前進させた。
今は、あの率直な彼に感謝しかない。
サンキュー、我が友よ。