「気を詰めすぎないことが大切だと思います」母が統合失調症に。支えてくれた周囲のサポートとは
お母さまが統合失調病だと診断された、神奈川県にお住まいの井川さん。ご結婚している井川さんは、現在第二子の妊娠中だそうです。お体が大変なときに、インタビューを受けていただきました。
井川さんのお母さまは、井川さんのご自宅から車で1時間程の駅で一人暮らしをしています。離婚してパートナーがいないお母さまに寂しい思いもさせたくない反面、ご自身の家族との時間も大切にしたいと、悩んだこともあったそうです。
そんな悩みにどう向き合っていったのか、井川さんのお話を伺いました。
診断されるまでは、心の病気だとは思わなかった
― 統合失調症だと診断されるまでに、お母さまが病気かもしれないと感じたことはありますか?
なんかおかしいな?と思ったことはありましたけど、病気だとは思わなかったです。統合失調症だと診断されてから、「あれは病気の症状だったんだな」とわかった感じです。
― 病気だと診断される前に、どんな症状があったか教えていただいてもいいですか?
幻聴が聞こえたり、幻覚を見ていたり…。ある日、私にはなにも見えないのに、顔の周りを「虫が飛んでる!」と言いながら手を振り回していたことがあったんです。
そのときはなに言ってるんだろう?と不思議だったんですが、今思うとあれも病気の症状だったんですね。敵だと判断した人に対しての、被害妄想もひどかったと思います。
― お母さまが統合失調症だとわかったとき、どう思いましたか?
とてもショックでした。自分の母親が精神を病んだことが、単純にかわいそうで。
― 今も、そのお気持ちに変わりはないですか?
今は、そう簡単に治らないものだとわかっているから、うまく病気と付き合っていければいいなと思っています。母に対しても、穏やかに生活してほしい気持ちが強いです。
母の病気を一人で抱え込まなくて、本当によかった
― お母さまが病気になって、大変だったことはなんですか?
母が騒いで、警察に呼び出されたことがあったんです。母とは違う駅に暮らしているので、電車で母がいる警察署まで行って…。
実は、そのとき上の子の妊娠中だったんです。体も重かったので、正直とても大変でした。自分のお母さんが警察沙汰になるというのも、やっぱり悲しかったですね。
あとは、お薬をもらっても自分の判断で飲んでくれないことが多くて。無理矢理飲ませるわけにもいかないので、どうしようかと悩んだこともありました。
今は注射型になったので、そういったこともなくなりましたね。病院の先生が、最初からお薬のタイプを選べることを教えてくれなかったのは、なんでだろうとは思いました。
― お母さまの病気が発覚してから、井川さんの支えになったことはありますか?
救護施設の方には、本当に助けてもらっています。母の病院に連れ添ってくれたり、私が様子を見に行けないときでも、母の症状が悪化していないか確認をしてくれることもあります。
あとは、姉妹がいたことですね。一緒に悩んだり相談しあったりできたことは、気持ち的にとても楽でした。私の夫も、母の病気のことを理解してくれています。母の病気を一人で抱え込まなくて、本当によかったなと思っています。
― 周囲の方に、お母さまが精神疾患だということを伝えていますか?
仲のいい友達は知っています。知り合い程度には言わないですね。心配されるのも面倒だなと思って。自分が信頼できる人に言えれば、それでいいと思います。
私は母と暮らしているわけではないので、もし一緒に暮らしていたら、近所の人や職場の人には言っていたかもしれないです。突然病院から呼び出されることもあったので、迷惑をかけてしまうかもしれないから。
周りの人に頼って、気を詰めすぎないことが大切だと思う
― ご家族が精神疾患だと診断された方に、なにか伝えたいことはありますか?
精神疾患は簡単に治るものじゃないから、周りの人に頼って、気を詰めすぎないことが大切だと思います。楽に捉えたほうがいい。
頼れるものに頼って、離れて暮らすのも手だと思います。もし、安心して任せられるところがあるなら。
― お母さまの最近の調子はいかがですか?
私の娘が生まれてからは、とても調子がよくなったと思います。そういえば、娘が生まれてから警察沙汰もないですね。子どもを交えて、みんなで遊ぶ回数が増えたからかな?孫の存在が、少しは母の癒しになっていればいいなと思います。
― お母さまに、どのように過ごしてほしいと思いますか?
たまに「お友達と遊びに行ったよ」と話してくれるんですけど、遊べるくらいのお友達がいることを聞くと安心します。
病気になったからって、ずっと大人しく過ごしてほしいとは思わないです。病気になっても、母には楽しく過ごしてほしいから。
「周りのサポートが本当に大切」と語ってくれた井川さん。周囲の人に上手に頼ることで、気持ちに余裕を持ってお母さまとも向き合えるそうです。周りに頼るということは、井川さんのためだけではなく、結果的にお母さまの症状の安定にも繋がっているように思えました。
心の病気は、周囲の人に理解されないと思われがちです。ですが、精神疾患と診断されたご本人やご家族をサポートしてくれる公共機関や、理解を示してくれる人は必ず存在します。悩みや辛さを自分の中だけで消化しようとせずに、他に頼れることは自分の手から離してほしい。井川さんのお話を伺って、そう強く思いました。